|
|
高い乳児死亡率とたたかうインドにおける新生児特別治療室の貢献【2013年2月4日 インド発】
「マディヤ・プラデーシュ州で見られる子どもの高い栄養不良率は、母親の栄養不良、生後2年間の貧しい食事習慣、子どもの生活環境内で蔓延する感染症といった、子どもたちに関連する諸状況がもたらした「最悪の事態」の結果です。そして、多くの子どもと母親は、食料不足、貧しい家庭状況、基本的なサービスへのアクセスの制限によって、さらに窮地に追い込まれているのです」(ユニセフ・インド事務所のビクター・アグアヨ栄養と発達担当官) シブプリ地域病院の新生児特別治療室では、赤ちゃんが鋭く早い呼吸をしています。超低体重で生まれたこの赤ちゃんの体重はわずか705グラム。標準体重の半分にも届いていません。 緊張した様子で娘の容態を見守る両親は、病室のドアの前で、娘が何とか命を取り留めてくれることを祈っています。 この両親は、まだ娘に名前もつけていませんでした。数時間後、その機会はもう二度と訪れることがないことを我々は知りました。 乳児死亡率
マディヤ・プラデーシュ州は、インドで2番目に大きな州。豊かな鉱物資源とインドで最も大きなダイヤモンドの埋蔵地帯を有し、国の小麦輸出の主要な部分も担っています。しかし、いまだに全く‘開発’されていない広大な土地が広がり、多くの場合、食料は地元の人々に十分に行き渡っていない状況です。多くの農村部のコミュニティは、いまだに安全な飲料水や衛生設備(トイレ)が不足し、交通機関も整備されていないのです。 貧困や食料危機に苦しむ州においては、低体重の赤ちゃんを守るための取り組みなど、しばしばどこかに取り残されてしまいます。マディヤ・プラデーシュ州は、インドで最も乳児死亡率が高い州となっています。 保健ケアを受けられるようにマディヤ・プラデーシュ州農村部の保健センターの不足と農村部への厳しいアクセス状況は、機能している病院への負担を増加させ、保健ケアに係る危機を引き起こしていました。ユニセフは、州政府と共に、地元コミュニティと地域の病院を結び、保健センターが設置されていない地域に保健センターを開設するなど、一連の保健ケア施設の設置によって、状況を好転させるべく取り組んでいます。 シブプリ地区は、マディヤ・プラデーシュ州の中でも最も大きな地域で、保健ケアへのアクセスに関連した課題が引き起こされています。前シブプリ地区財務管理官のジョン・キングスレーさんによると、「ユニセフの技術的な支援を受けて、妊婦が出産可能な保健センター補助施設を開設しました。チハルチをはじめ、地域の中でとてもよく機能しています」 地域病院の改革シブプリ地域病院は、スタッフの不足と、旧式の技術に悩まされていましたが、最近、大改造されました。現在、新たに設置された新生児特別治療室では、重度の合併症に陥っている新生児に集中的な治療を提供。産科病棟に80床を用意し、私立の病院から技術力の高い看護師と医師を配置しました。 この病院には、毎日24時間体制のコールセンターも備えられ、GPS機能を供えた救急車は、農村の村でも無料で利用可能となっています。 4年前に病院が刷新されてから、著しい進展がありました。新生児特別治療室だけで、6,000人以上の子どもたちの命が守られました。そして、この治療室には、‘経過観察’システムも備えられています。 ユニセフのガガン・グプタ保健専門官は、この技術革新には、システムも含まれていると話します。「現在、農村部の村でも携帯電話を使用できるなど、最新技術が利用可能となっています。そのため、携帯電話のショートメール機能と、経過観察のためのソフトを開発しました。政府は、私たちの治療室を含めた全ての新生児特別治療室に、全ての患者の記録をデータ入力する情報処理者を派遣しました。定期的に携帯電話のメッセージを配信し、親や保護者に赤ちゃんの定期健診を促しています。地域の保健員は、自宅で赤ちゃんの状態を観察しています。医師の診察が必要な場合は、いつでも無料で交通機関を利用して患者をこの病院に搬送することができます。 生きる機会現在、マディヤ・プラデーシュ州全域に39箇所ある新生児特別治療室では、24時間体制で赤ちゃんのケアが提供されています。 シブプリ地域病院の新生児特別治療室では、無数のチューブに繋がれた赤ちゃんがなんとか筋肉を動かしています。未熟児で生まれる赤ちゃんもいますが、多くは、低体重で生まれています。 こうした生存の見込みが少ない厳しい状況の中で、名前を持てるまで生き延びられない赤ちゃんもいます。 しかし、保健ケアへの投資は、こうした状況を変えるものです。医師たちは、集中治療室が提供している質の高い支援は非常に重要だと話します。適切な時期に、適切に支援することが、子どもの命をつなぐ機会を与えているのです。 |