働く子どものために「ゲル学校」
<モンゴル>
ここはモンゴルの首都ウランバートルから300キロほど東に離れたオムンデルゲル村。見渡す限り続く草原と、大きな空と、美しい山並みに囲まれたこの村には4千人ほどの人々とたくさんの動物たちが暮らしています。
家畜のえさとなる草を求めて年に数回家を移動する遊牧民一家のゲル(フェルト製のテント)におじゃましました。この中にお父さん、お母さん、15歳のバヤンモンク、12歳のモンクトラガ、11歳のモンクデルゲル、7歳のモンクドラムの6人家族全員が暮らします。4人の子どもたちは燃料となる牛のふんを拾ったり、まき割りをしたり、牛や羊の世話をしたり、と大忙し。
末っ子の女の子、モンクドラムはまだ就学年齢に達していませんが、就学年齢の3人の兄弟のうち、学校へ通っているのはモンクデルゲルだけです。「子どもたちにも家畜の世話を手伝ってもらわなければならないし、全員にノートやえんぴつを買ってやる余裕がないのです」とお父さんが話してくれました。
遊牧民にとって家畜は現金に代わる貴重な財産です。一般的に家畜が100頭以下の家族は貧困ライン以下で生活していると考えられていますが、この家には30頭ほどの家畜しかいませんでした。
1990年に社会主義から民主主義へ移行して以来、モンゴルの社会には急激な変化が起こり、失業者の増加など人々の生活にさまざまな影響を与えています。学校をやめてしまう子どもの増加もそのひとつですが、そのほとんどは地方で暮らす子どもたちです。
かつての協同制度の崩壊と家畜の私有化の結果、子どもの労働力の必要性が高まり、子ども、特に男の子が学校をやめて家の手伝いをせざるを得ない状況が増えているからです。
このような子どもたちも基礎教育を受けられるように、ユニセフは政府やNGOと協力して学校外教育を支援しています。オムンデゲル村には「ゲル学校」があり、家庭の事情などで正規の学校をやめてしまった7人の子どもたちがゲルの中で勉強していました。
モンクデルゲルが通っているのもこの学校です。ここでは子どもたちが働きながら勉強を続けられるように時間割が柔軟に組んであり、読み書きや算数以外に生活に必要な知識も教えているそうです。
モンクドラムは来年から学校へ行くのを楽しみにしていました。21世紀に向けて変遷を続けるモンゴルを担っていくのはこの子どもたちです。そして未来への扉を開ける力を彼らに与えるのは教育なのです。
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