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極寒のモンゴルで続く、教育環境改善の取り組み【2013年2月13日 モンゴル発】 モンゴル北部の山岳地帯に暮らす子どもたちに支援を届けることは、容易なことではありません。ユニセフは、全ての子どもが教育の恩恵を享受できるよう、この国でも、学校の活動をサポートしています。 モンゴル北部のフブスグルは、遊牧民がゲル(テント)で家畜と共に生活を送る山間の集落です。 この地域に暮らす子どもたちに支援を届けることは、容易なことではありません。人や動物が踏み固めたような小さな道が、この村へ続く唯一の道。時期によって変化しますが、1年を通し、でこぼこした状態が改善することはありません。この場所に住む人々は地理的に孤立し、貧しい生活を強いられています。多くの人々は、生活のために家畜を飼っていますが、その世話は、子どもたちの役割です。 フブスグルには、様々な民族が暮らしています。9歳のムルンちゃんは、トゥバ族という少数民族に属しています。ムルンちゃんの家族は、ヤギや牛、トナカイを飼育して生計を立てています。ムルンちゃんのゲルを訪ねた時、お父さんはいませんでした。トナカイを連れ、森の奥深くに入っていました。トナカイには、厳しい冬の間、木の幹などに生息する特別な地衣類を食べさせる必要があるのです。 家族と離ればなれの生活この地域に住む他の多くの子どもたちと同様に、ムルンちゃんの通う学校も自宅から遠く離れた場所にあります。このため、ムルンちゃんは、学校の寮で生活しなければなりません。入学して寮での生活を始めた時、ムルンちゃんはわずか6歳でした。家族と離れた生活は、厳しいものです。 ムルンちゃんは、両親から離れて暮らすのはとても大変だったと話します。「ママに会えなくてとても寂しかった」。母語がモンゴル語ではない少数民族の子どもたちにとって、寮での生活は、他の子どもたちよりも厳しいものになってしまいがちです。 一方、学校の近くに住む子どもたちには、別の厳しさがあります。家族と一緒に住む家から徒歩で通うことができるものの、この時期は日がすぐに暮れてしまうので、暗闇の中を長い時間歩かなければなりません。マイナス45度まで気温が低下することもあり、学校から比較的遠い場所に暮らす子どもたちの中には、顔や手の凍傷に苦しむ子もいます。 適切な飲料水と衛生環境
ツァガーンノール村には、水道がありません。この地域の人々は、近くの湖の水を利用しています。学校にあるのも、湖の水をためた容器だけ。子どもたちは、この水を飲んでいます。 学校のトイレは、屋外にしかありません。特に女の子にとっては利用し難いトイレです。また冬や日が暮れた後は、殆ど使えない代物になってしまいます。ムルンちゃんは、トイレを指差しながら、次のように説明してくれました。「私たちのトイレは、寄宿舎から離れた場所にあるの。夜にトイレに行きたくなると、とても怖くて・・・」 ユニセフが活動している多くの国々で、清潔で安全な水と適切な衛生設備(トイレ)の支援は、重要な課題の一つです。その状況はモンゴルでも変りませんが、さらに、この国特有の問題もあります。それは、氷点下にまで達する冬の寒さです。国中ほぼ全ての学校が、水源の確保や、劣悪な衛生環境、手洗い場や寄宿舎のシャワー室の不足といった課題に一様に直面していますが、中でも山間部の学校の状況は深刻です。 全ての子どもに優しいトイレツァガーンノール村の小学校では、ユニセフの支援で、2年以内にトイレが設置される予定です。障がいのある子どもたちも使えるトイレや男児用の小便器もある男女別のトイレが、学校の建物の中に設置されます。また、屋外にも、換気口付きのトイレが別途設置される予定です。この学校で学ぶ子どもの人数に見合った、十分な数のトイレとシャワー室を確保することを目指しています。 ツァガーンノール学校でのユニセフの支援は、教員研修や教材などの提供、退学してしまった子どもや障がいのある子どものための特別なプログラムの提供といった分野にも及んでいます。 また、パートナー団体と共に、ツァガーンノール学校を「子どもに優しい学校」として運営していくための指導や助言、研修も実施。質の高い教育や子どもの参加、子どもの保護、統合教育の推進をサポートしています。 ムルンちゃんはじめ、この学校に通う子どもたちは学ぶ意欲に溢れ、勉強できることをとても喜んでいます。「大きくなったら小学校の先生になりたい」 こう話すムルンちゃんの夢を実現させるためにも、そして、この国をさらに経済的に成長させるためにも、子どもたちの能力を最大限に引き出すための子どもの教育への投資が必要なのです。 ユニセフは、こうした取り組みを進め、子どもたちが人生の最善のスタートが切れるように、「スクールズ・フォー・アジア(アジアの子どもたちに教育を)」キャンペーンを展開しています。 |