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公益財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

<2003年5月28日掲載>

人身売買から少女を守る 〜教育が果たす大きな役割〜
<ネパール>

カトマンズ、2002年2月20日(ユニセフ)


  ネパールでは、女性は経済的に父親や夫に依存しており、自立がとても難しいために、「仕事がある」などの依存の悪循環を断ち切れるという話にすぐ飛びついてしまいがちです。またネパールの女性や少女たちは、国の法律や自分たちの権利についての知識がなく、一見魅力的な誘惑に、どんな害や危険性があるかということを理解していません。こうしてネパールの村々では、女性や少女たちが人身売買の標的になってしまいます。しかも性産業に取り込まれた女性たちの多くは、自分たちが搾取されているにもかかわらず、悲惨な状況に疑問を持っていません。

 ユニセフは、人身売買の問題を解消するために、「子どもの権利条約」「女性差別撤廃条約」といった国際条約で保障されている法的権利について、女性や少女たちの意識を高める活動をおこなっています。また仕事があるという話につられて、インドやネパール国内の都市に連れていかれた場合の危険についても、女性たちの知識を深める努力を続けています。

 ダヌワール民族出身の2人の少女、9歳のサビトリと8歳のラム・マヤは、ネパールでも開発の遅れたシンドパルチョック地区メラムチの山あいの村に住んでいます。ダヌワール民族は昔から漁業で生計を立ててきましたが、最近はそれだけでは大家族を養うことができません。サビトリとラム・マヤの家は土地を持たないので、家族みんなで村の外まで働きに出なければなりません。運が良ければ、男たちにはポーターや建設作業の仕事が見つかりますが、賃金は1日に100ルピー(2米ドル足らず)程度です。農作業に雇われる女性や子どもの賃金はそれよりもっと少なくなります。両親や兄、姉たちが外に働きに出ているあいだ、弟妹は家で赤ん坊の面倒を見ます。ラム・マヤのすぐ下の7歳の妹も、赤ん坊の弟の世話を引き受けています。

 しかし、ラム・マヤもサビトリも、学校に行けるだけ恵まれています。2人が学校に通えるのは、ユニセフが家族に支援を行なっているからです。これは、少女たちの教育を受ける権利を守ることが目的です。貧困のどん底にいる家庭に支援を行ない、その家の女の子を学校に行かせるのです。サビトリとラム・マヤは、子どもにはだれにも奪うことのできない権利があることを学校で教わりました。また人身売買の危険についても話をしています。こうした意識を植え付けることで、自宅で弟妹の面倒を見ている幼い少女を狙った、人身売買業者の危険な罠を避けることができるのです。

 何年か前に、一家の年長の姉2人は、経済的に自立できるよい仕事があると誘われ、インドに行きました。しかし2人とも売春婦になってしまいました。姉の1人、ジータは数年前に村に帰ってきました。売春宿の生活から逃げのびた女性たちの多くはHIVウイルスに感染しており、ジータも例外ではありませんでした。しかし、ジータは他の女性たちと違って、自分の恐ろしい経験を声に出して語る勇気を持っていました。ジータは、人身売買の危険に対する村人の意識を高めることに貢献したのです。メラムチの小学校教師で、性産業との戦いを積極的に進めているミラ・シュレスタ先生は、「人身売買に巻き込まれる女の子の数が減ったのは、ジータと彼女の勇気のおかげです」と話しています。しかしジータは、村に戻って数年後にエイズで亡くなりました。

 ラム・マヤとサビトリには、ジータよりも輝かしい人生が待っているでしょう。人身売買にあい、ネパールからインドに送られて性的に搾取される少女をなくすためには、人身売買の業者が接触してきたとき、女性と子どもが自分たちの身を守ることができるように知識を持つことが必要です。そのためには女性と子どもの権利を促進し、人身売買の現実について地域社会がもっと敏感になるよう、すべての人が関わることが重要です。子どもを学校に通わせることの重要性について地域の人びとの意識を高め、女性や子どもを弱い立場に追いやっている抑圧的な慣習を捨てるだけでも、性的搾取や人身売買の排除に効果があります。
 「私が子どものころは、学校に行かせてもらえなかった。だからいま、こんなみじめな状況にある」と語るのはサビトリの父親です。「わが子は同じ目にあわせたくない。だから娘たちを学校に行かせるために、できる限りのことをするよ。」

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