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パキスタン:大地震被災地の子どもたちが普及を進めるトイレと衛生習慣「国際衛生年」記念連続シンポジウム&セミナー
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© UNICEF Pakistan/2007/Simeon |
「家にトイレが欲しい」と訴えたサイーラ・サイード・アラームちゃん(12歳)とお爺さん。 |
サイード・アラームさんは、満面の笑みで学校から戻ってきた孫娘サイーラちゃん(12歳)が発した一言が、家族全員の考え方や習慣を変えてしまった日のことを憶えています。
「孫娘は私を見るなり言うんです、みんなのためにトイレを建ててよって。貧乏だし、2005年10月の大地震で5人も家族を亡くしているんです。それに、これまでずっと、私は野原で用を足してきてまして、慣れているんです。だから、彼女にどうして必要なんだって尋ねたんですが、彼女は、野外で用を足すのは病気のもとだって言うんですよ。」と、彼は話します。
アラームさんは続けます。「彼女はこうも言うんです。学校にはトイレがあるし、いろいろ良いことがあるんだって。サイーラは最愛の孫娘です。一番いいことをしてあげたい。だから、4ヶ月前に頼みを聞いてあげて、トイレを建てたんです。1000パキスタン・ルピー(1650円)掛かりました。今は、家族みんなトイレを使っていますよ。」
コット・セリアン村で、屋外で用を足す習慣をやめたのは、サイーラちゃん一家だけではありません。今では、この村で53世帯にトイレが備わっています。こうした取り組みは、全て、村の子どもと女性のおかげです。
© UNICEF Pakistan/2007/Simeon |
パキスタン・カシミール州では、子どもたちが公衆衛生教室に参加しています。今では11の村が野外で用を足す習慣を廃止しました。 |
ユニセフは、2007年半ば、パキスタン・カシミール州で学校を「軸」にした公衆衛生事業を試験的に開始しました。それまでの様々な取り組みの中で得た経験を元に、子どもたちに適切な習慣を身につけさせるために、学校の授業を通じて健康と衛生の知識と技術を身につけさせようとするものです。
「先生と子どもたちは、コミュニティへの『入り口』としての役割を果たしてくれます。子どもたちは、学校で勉強した公衆衛生の知識や技術を家庭に持ち帰り、家族にトイレを使うよう勧めます。先生がたは、知識人として尊敬されていますので、コミュニティの人たちは彼らの話はよく聞きます。」ユニセフ・パキスタン事務所のビクター・キニャニュイ水と衛生事業担当官は説明します。
この2年間で、約4,500人の小学校教員が研修を受け、31万6000人以上の子どもたちが学校で公衆衛生教育を受けました。
どの村でも、特に女性は、トイレの建設に非常に積極的に関りました。
「各家庭にトイレ普及したことで、村全体の生活が変わりました。」と、ユニセフの協力団体で働くシャミン・アザムさんは語ります。
「ほとんどのトイレ用の穴は、女性が掘りました。トイレがなくて最も苦しんでいるのは女性ですから、当初から女性はトイレ建設に賛成でした。以前は、女性にプライバシーはありませんでした。用を足すために、女性は夜になるまで待たなくてはならなかったんです。特に冬場は、この習慣は彼女たちの健康に極めて悪い影響を与えていました。」と、アザムさんは言います。
パキスタンでは、農村の59%に現在も適切な衛生施設(トイレ)がありません。しかし、ユニセフなどの活動によって、パキスタン・カシミール州の11の村は、今日までに屋外で用を足す習慣を廃止しました。下痢性疾患などの予防可能な病気で、毎日5歳未満の子どもが約1100人も亡くなっているパキスタンでは、より健康な環境を創ってゆくための重要な一歩が踏み出されています。
「国際衛生年」記念
連続シンポジウム&セミナー 第2弾(3月6日)・第3弾(4月4日)開催
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トイレ・衛生改善は、下痢症等の予防、乳幼児死亡率低下、健康増進、水汲み労働 からの解放につながるにも関わらず、これまでないがしろにされてきました。そこ で、本ワークショップでは、トイレ改善の緊急性を改めて確認し、関連団体と連携・協力しながらトイレ支援活動を推進する必要性をアピールしたいと考えており ます。また、トイレ改善は、設備的な支援だけでなく、トイレを適切に維持管理す るための人材育成やトイレを正しく使える人づくりも大切です。今回は、地域保健 の起点になりうる学校を中心に、トイレ支援のあり方や行動指針について討議します。
■内容
小林光氏(環境省官房長)から環境と衛生の改善に向けた国際貢献について応援 メッセージを頂きます。バネッサ・トビン氏(国連児童基金プログラム担当副部 長)による「トイレ支援が子どもの命を守る!」というビデオメッセージが放映さ れます。講演は、神馬征峰氏(東京大学大学院国際地域保健学教授)より、「包括的な学校保健活動でのトイレ導入シナリオ」について、また山本敬子氏(国際協力 機構専門員)からは、「給水支援で見えてくるトイレ改善の必要性」を予定しております。講演のあとには、日本トイレ協会から「ベトナムでのトイレ・衛生事業の 実施報告」を行い、最後のパネル・ディスカッションでは、「学校トイレ・衛生改善のあり方を考える」〜トイレから、『水・教育・保健』をつなぐ効果的支援プロ グラムの作成を目指す〜と題して、関連団体と討議を予定しています。
※プログラムの詳細は本ホームページなどで改めてお知らせする予定です。
※本セミナーは、日本トイレ協会主催「第3回国際トイレワークショップ」として位置づけられています。
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昨年、ユニセフと1L for 10Lプログラムを成功させたダノンウォーターズオブジャパン株式会社と、日本トイレ協会とともに「トイレ出前教室」で、日本の子どもたちへの衛生教育を支援する王子ネピア株式会社の代表を迎え、水と衛生分野における、公益団体と企業の実践的パートナーシップを紹介し、日本の企業の皆様に、今後の取り組みに向けた検討材料を提供します。
※プログラムの詳細は本ホームページなどで改めてお知らせいたします。
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一人でも多くの子どもたちに適切な衛生施設(トイレ)を提供し、適切な衛生知識を普及するためには、皆様からの息の長い支援が必要です。暖かいご支援とご協力をお願い申し上げます。