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パキスタン:3年連続の大洪水に疲弊するコミュニティ【2012年10月22日 パキスタン発】
レシュマちゃん(10歳)は、将来への希望と大きな夢を抱いた元気な1年生。時間ができると、綺麗な人形を作っています。 レシュマちゃんが暮らしているシンド州ジャコババードのシャンドラム村は、先月、モンスーンがもたらした洪水に見舞われました。今、レシャマさんの目下の望みは、壊れた家を修復することです。 レシュマちゃんの父親は、9人の子どもたちに食事や衣服を与え、教育を受けさせるために建設現場などで収入を得ています。しかし、仕事があることはまれ。一家は、2010年と2011年に相次いでこの地域を襲ったモンスーンによる洪水被害から、まだ立ち直っていませんでした。 高い危険にさらされる子どもたち9月初旬、数日間降り続いた豪雨により、パンジャブ州南部、シンド州北部、バロチスタン州北部の多くの地域が浸水。国家災害管理局によると、この影響を受けた人は506万人。人工衛星写真は、15の地域にわたる広い範囲の土地が浸水していることを示しています。 東京都の2倍以上に相当する120万エーカーを超える耕作地に育っていた作物が被害を受け、46万棟の家屋が流されたり、全半壊しました。 現場からの報告によると、今年、洪水の被害を受けた人々は、2010年と2011年の洪水で被災した人々よりも、さらに深刻な状況に陥っています。また、未だに多くの場所に淀んだ水が溜っていて、水位は、一部の地域ではまだ高く壊滅的な状況です。避難場所や食料、飲料水、衛生設備、医療・保健、マラリア予防、教育とあらゆる分野での支援が緊急に求められています。 今回のような洪水が発生すると、子どもたちは、おとなに比べ、病気や栄養不良に感染する高いリスクにさらされやすくなります。また、多くの子どもたちが、学校に通うことができない状態です。 崩壊された生活
レシュマちゃんも、何週間も学校に通っていません。学校に二つしかない教室は、洪水から逃れるために、とにかく持てるものを持てるだけ持って殺到した村人たちの家財道具で一杯になってしまいました。 ちょうど収穫前の美しい稲が立ち並んでいた田んぼも、土砂降りの雨水で水浸しになってしまい、数週間経った今も、洪水の水で浸水したままです。茎の部分は、家畜のえさとして利用することができるかも知れませんが、お米そのものは、もう使いものになりません。
そしてもしこの水がまだ暫く留まるようなら、冬の小麦の植え付けもままならなくなります。 水と教育、子どもたちが安心できる場所の確保この洪水被害への対応として、ユニセフは、パートナー団体と協力し、バロチスタン州、プンジャブ州、シンド州の被災者計26万7,900人に、安全な飲料水の提供を続けています。 今後、資金が確保できれば、パキスタン政府やパートナー団体と共に、教育分野での緊急支援を実施。子どもたちを、様々な負の環境から護り、安全で安心して学習に取り組める環境を提供するため、計2万1,000人あまりを収容できる仮設の学習センターを、1,147箇所に設置する予定です。このうち、15箇所のセンターは既にオープン。2,100人以上の子どもたちが、この恩恵を受けています。こうしたセンターで学ぶ子どもたちは、後日、元々通っていたか、これまでとは異なった別の正規の学校に戻り、学業を続ける予定です。 ユニセフをはじめとする子どもの保護分野で活動する支援団体は、また、シンド州に、“子どもに優しい空間”を16箇所設置。1,658人以上の子ども(その46パーセントは女の子)が利用しています。また、379人の子ども(49パーセントが女の子)と73人の女性が、心理社会的な支援や、レクリエーション活動の機会を得ています。 将来への備え「過去3年間にわたってパキスタンを襲った破壊的な洪水は、特に、何百万人もの子どもに深刻な影響を与えました」「度重なる自然災害は、パキスタンのミレニアム開発目標の達成に影響を与えています。ですから、ユニセフは、洪水被害を受けた最も厳しい状況の地域の子どもとその家族に、緊急に必要な支援を行うだけでなく、こうした災害が子どもたちにもたらす影響を緩和するために、また、ユニセフがこの国で実施する全ての活動の中で、災害リスクの削減につながる取り組みも盛り込むことによって、コミュニティ自体が持つ防災・減災力の強化も図っています」ユニセフ・パキスタン事務所のオスカー・ブトラグエニョ緊急支援コーディネーターはこう語ります。 2012年のモンスーンがもたらした洪水の被害を受けた人々への支援活動を継続するため、ユニセフは、今後3ヵ月間に必要な資金として、国際社会に対し、1,540万米ドルの提供を求めています。 |