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<<2003年7月15日 信濃毎日新聞掲載>> 気軽に立ち寄り エイズを学ぶ
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ユニセフが運営する青少年情報センターの前に立つ若者たち |
「僕の友達はエイズなんて存在しないんだって言っているよ。皆もエイズは俺達がセックスをしないようにする陰謀で、それでアフリカの人口を減らすのが目的だってさ。」18歳の少年マイケルが言う。「でも、ここへ来るようになって初めてエイズが確かに存在するのが分かったんだ。」
『ここ』というのはアフリカ西海岸の一国、シエラレオネの首都フリータウンにある青少年情報センター。シエラレオネは西アフリカに位置する、面積は北海道ほどの小国です。 ユニセフの統計によると、シエラレオネは5歳未満の子どもの死亡率が1000人中316人と、世界で最も高い国です。エイズ問題も深刻で、14歳未満の子どものエイズ感染者数は推定1万6,000人にのぼります。
この青少年情報センターは、ユニセフとシエラレオネ家族計画協会が運営しています。行き交う人や車で混雑した街路にセンターの出入り口があり、青少年が気軽に立ち寄れるようになっています。室内では卓球や卓上ゲームを楽しむ青少年もいます。壁にはHIV/エイズを防止するためのイロハを教えるポスターが貼ってあります。「禁欲しましょう」「最初の性体験を遅らせましょう」「パートナーは一人に」「必ずコンドームを使用しましょう」などなど。
親の同伴なしで立ち寄れて、ゲームも楽しめるのが、このセンターのメリットです。1日に2回、マイケルと同年代の少年がボランティアのカウンセラーとして、また仲間として、HIV/エイズに関する知識を教え、話し合いをします。カウンセリングの終わりには、パンフレットを配ります。
実は、このセンターには裏通りに人目につかないもう一つの出入り口があります。HIV/エイズや他の性感染症に関する相談、無料の妊娠判定テスト、HIV感染テストを受ける若者が利用する、青少年ヘルスセンターが併設されています。
シエラレオネは世界で最も開発の遅れた最貧国。10年余にわたる内戦で若者の間でも暴力や麻薬がはびこっているといいます。それでも、その中にあって若者が助け合いながらエイズ対策に取り組んでいる姿は、非常に頼もしく映ります。