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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ソマリア 内戦で分断された街と人をつなぐ学校創り

【2007年7月23日 ソマリア・ガルカイヨ発】

© UNICEF Somalia/07-07-1/NEZ office
ソマリア北東部の街、ガルカイヨで、学校の建設予定地に記念の植樹をするクリスチャン・バスレフーオレセン ユニセフ・ソマリア事務所代表(写真左)

長年にわたる内戦で、「敵味方」に二分されたソマリア北東部の街、ガルカイヨで、小学校教育のみならず様々な社会サービスを提供する小学校の建設が、ユニセフの支援でスタートしました。

現在「プントランド」と呼ばれるソマリア北東部。ムドゥグ州の中心的な街、ガルカイヨは、1991年にシアド・バレ政権が倒されて以来、氏族の間で繰り広げられている内戦によって、17年間、街が北部と南部に分断されてきました。

しかし、この状況に変化の兆しが見え始めました。今年9月から、ガルカイヨ北部と南部の子どもたちが、一つの学校で共に学び始めるのです。

校名に「平和」を冠する現在建設中の小学校では、所謂「平和教育」を子どもたちに提供する場所にはとどまりません。子どもたちのみならず、先生も、学校管理運営委員会のメンバーも、全ての人々を、北部から50%、南部から50%と対等な数で構成することにより、2つの勢力の「対立」の構図を打破してゆくための「例」を示す存在になります。

この学校を建設するというアイディアは、ユニセフが率先して進めてきた、ともに貧困にあえぎ、限られた水源を共有する二つの対立するコミュニティーの間の和平に向けた話し合いの中から生まれてきました。話し合いを進める中、人々は、「足りないもの」が水以外にも沢山あることに気が付いたのです。二つのコミュニティーを分断する「グリーンライン」と呼ばれる地域には、学校が一校もありませんでした。また、レイプや麻薬の取引、麻薬に絡む犯罪が多発するなど、子どもたちの安全が脅かされる場所でもあったのです。

©UNICEF Somalia/07-07-2
/NEZoffice
子どもの人身売買を根絶するためにはどうしたらよいか? 意見を求められる子どもたち。

ヒボ・ジャマちゃん(11歳)は、新設されるガルカイヨ「平和」学校の敷地のすぐ隣に住んでいます。「南」ガルカイヨの子どもたちと遊んだことが一度もなく、今は、家から徒歩で30分ほどの学校に通うヒボちゃん。家のすぐとなりに新しい学校がオープンすることが嬉しくてたまりません。「すぐ隣に学校ができるなんて!私、絶対この学校に通うんだ!そうしたら、もう、遠くまで歩かなくて済むでしょ。今はね、時々、その道すがら、上級生にいじめられるの。『南』ガルカイヨの子どもたちについて、私が知っているのは『バラクセリーの子ども』っていう名前と、彼らは、すぐに他の子どもに暴力を振るうって言われていることだけよ。みんな彼らをそう呼んで、そういうたちの悪い子たちなんだって言っているの。『南』ガルカイヨの子どもとは今まで一度も話したことはないわ。でもね、早く本当の彼らを知りたい。一緒の学校に通って、沢山お友達もつくりたいわ。」 ビボちゃんは、こう語ってくれました。

これまで「一緒に何かをした」ことが全く無かった「北」と「南」ガルカイヨの人々は、ユニセフと地元自治体の協力を得、土地を提供し合い、来る新学期(2007年9月)に向けて開校を目指しています。6歳から14歳までの600人あまりの子どもたちが、国語、算数、理科、社会、そして(ソマリアの宗教である)イスラム学を学ぶ予定です。

子どもたちは、300人ずつ午前(午前7時から午後1時)と午後(午後1時から午後5時30分)のクラスに別けられます。 それぞれのクラスを、各8人、合計16人の教員が受け持つ予定です。「ガルカイヨ『平和』学校の開校は、分断された二つの町の人々のみならず、ソマリアの全ての人々にとって、非常に特別で重要な出来事です。これまで交流の無かった南北ガルカイヨの人々が、南北の隔てなく、全ての子どもたちが、きちんとした教育を受けられるよう力を合わせている姿は、私たちの心を打ちます。ガルカイヨの人々の取り組みは、また、ソマリアの他の地域の人々のお手本となるだけでなく、政府が、ソマリアの全ての子どもたちを学校に通えるようにしてゆくための、重要なお手本を示してくれています。さらに、この学校を創る過程で人々の心の中に起こった変化が、この学校のカリキュラムにも反映されるという意味でも、画期的で重要な取り組みなのです。学校で教えられること、学校の中で起きることの中身は、かなりの部分が親御さんや地域の人々がどこまで関わるかによって左右されてしまいます。地域の人々の姿勢や心の持ちよう次第では、子どもたちの心の中に平和を求める芽を生やすことができるのです。ガルカイヨの人々のこうした力強い支えがあれば、この学校が『平和の架け橋』となること、そして、そこに通う子どもたち一人ひとりが、地域を平和に発展させるために必要な知識や姿勢を身につけることができるのは間違いないでしょう。」(ユニセフ・ソマリア事務所教育事業担当官モーリス・ロブソン)

学校が建設される3000平方メートル程の敷地は、南北それぞれのガルカイヨの人々が無償で提供しました。また、建築のための労力や資材も、双方の住民が提供しています。そして学校が開校した後は、先生方の「給料」も双方の住民が負担する予定です。こうした住民のイニシアティブを応援するために、ユニセフは、14万ドル相当の教科書、教材、そして教員のトレーニングなどの支援を提供しました。

新しい校舎には、4つの教室や水場、トイレの他、保健・健康教育も提供される保健所や、栄養不良児のための給食センター、地域住民のための集会場も併設されます。この学校建設予定地から僅か数メートルのところに住んでいる5人の子を持つファドゥモ・アブディさんは、次のように語ってくれました。「この学校ができれば、この地域の子どもがもっと沢山学校に行けるようになるわね。今、ここから一番近いのはウマダ小学校よ。でもあそこは、教室の数に比べて子どもの数が多すぎて。ここの住民はね、治安が悪いから、子どもたちをあまり遠くの学校に通わせたくないのよ。だから、学校に行っていない子どもも沢山いるわ。『平和』学校をこの『グリーンライン』に創るっていうのは、素晴らしいアイディアね。正直、子どもたちが(新しい学校を)どう思うか、私にはわからないわ。でもね、私の子が、『南』ガルカイヨの子どもたちと友達になって、そのことで、私自身も彼らのお父さんやお母さん方と仲良くなれたらって。楽しみにしているわ。私たちの知らない地域の人々と仲良くなって、お互いの見方を変えることって、とても大切よね。この学校が北と南のガルカイヨの人々の間に、固い絆を創ってくれることを、心から信じているわ。」

かつて敵対していた人々は、ガルカイヨ「平和」学校を創る過程で、良き友人になりました。このプロジェクトを支援したユニセフと地元自治体は、彼らの子どもたちが、これから共に学び育つに従い、より多くそして深くお互いのことを知り、長年にわたり紛争に見舞われたこの地域に、安定をもたらしてくれることを願っています。

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