|
|
<信濃毎日新聞掲載分2006年1月24日> エイズの薬 手にするのはわずか
|
HIV/エイズの被害者を支援するNGOの事務所の一室で、12歳の少女ヌー(仮名)は、自分のことを語ってくれました。ヌーのお父さんとお母さんはエイズが原因で相次いで亡くなりました。独りぼっちになってしまったヌーは、今おじいさんと二人暮らしをしています。
ヌーもHIVに感染しています。「一年くらいずっと具合が悪かったの。せきが止まらなくて息が苦しくなったりして。それでお母さんと病院に行ったらいろいろ検査されて・・・私もHIVに感染しているってわかったの。お母さんは、その年に亡くなったわ。お母さんが死んだ後、おじいちゃんは一日中お酒を飲んで、怒鳴ったり私を叩いたりするようになった。それで、一時はNGOの施設に身を寄せていたの。でもね、おじいちゃんは今ではお酒も減ったし、働けるようになった。毎日ご飯を食べさせてくれて、ここに来るためにバス停まで送ってくれるの」
ヌーは月に一度70キロ離れた病院まで、薬をもらいに行かなければなりません
「薬はね、毎日、朝7時と夜7時に飲んでいるの。必ず時間通りに飲みなさいって先生が言っていたわ。薬を飲み始めて4カ月になるけれど、ずいぶん具合が良くなったと思うの。ご飯が食べられるようになって、力がついてきたのを感じる。保健師さんが、時計をくれたのよ。薬の時間がわかるようにって。7時になるとアラームが鳴るの」
抗レトロウイルス薬。この薬を必要としている15歳未満の子どもは66万人にのぼる。 |
そう言って、うれしそうに腕にはめた時計を見せてくれました。薬によって元気を取り戻しつつあるヌーは、将来への夢をもっています。「エイズだからって、友だちが遊んでくれなくなったこともあったわ。学校に来るなっていう人もいた。でも、この病気は一緒に遊んだくらいじゃうつらないということをわかってくれる友だちも増えてきて、私の家にも遊びに来てくれるようになったの。今はまだ体調が良くないから学校を休んでいるけれど、先生はもう少し良くなったら戻っていらっしゃいって言ってくれている。早く学校に戻りたい。勉強して、ビジネスウーマンになりたいの」
「エイズが私の体から去ることはないわ。でも薬を飲んでいれば元気でいられる。薬を飲めば、もっと強くなれるって信じてる」
HIV/エイズとともに生きる子どもたちにとって、生き延びるために薬は不可欠です。しかし薬を手に入れられる子ども、そしてそれを継続して飲み続けられる子どもは、成人の感染者に比べて極めて少ないのが現状です。例えば抗レトロウイルス薬を必要とするHIVに感染した子どもたちのうち、この治療を受けられるのは5パーセント以下にとどまっているのです。
ユニセフは、世界中でHIV/エイズが子どもたちにとって大きな脅威になっていることを危惧(きぐ)しています。そして子どもたちへの感染予防、感染した子どもの治療、保護者をエイズで亡くした子どもたちの保護などを進める世界キャンペーンを展開しています。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * *
◇ 募金のお願い ◇
日本ユニセフ協会では、ユニセフの「子どもとエイズ」世界キャンペーンを支援するための募金を、下記の方法で受け付けています。皆様のご理解とご協力をお願い致します。
|
お問い合わせ先: 財団法人日本ユニセフ協会 協力事業部 TEL:03-5789-2012 FAX:03-5789-2032 |