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財団法人日本ユニセフ協会
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世界の子どもたち

ジンバブエ:“かつての姿”を取り戻すために

【2012年7月11日 ジンバブエ発】

© UNICEF Zimbabwe/2012
5年生のクラスで授業を受ける16歳のオーウェン・シオン君。

チェグドゥ地区にあるビリャン小学校の5年生の教室では、オーウェン・シモン君は、他の子どもたちに比べてひときわ目立つ存在です。オーウェン君は、16歳。通常ならば中等教育の2学年に進級しているはずですが、自分ではどうすることもできない状況にあったために、現在5年生のクラスで勉強しているのです。

「私の両親は、学校に通うよう厳しく言いませんでしたし、ひとつの学校に通い続けることもできませんでした」 オーウェン君はこう説明します。

オーウェン君の両親は、作付けの季節、(他の農家が持つ)農地から農地を転々としながら、農作業の手助けをして収入を得ていました。こうした生活スタイルのために、オーウェン君の教育は犠牲となってしまったのです。そして2004年、オーウェン君が8歳の時、ジンバブエの経済危機が深刻になり、オーウェン君は、学校に通ったり、通えなかったりするようになりました。家計を助けるために、彼自身も農地で働き始めるようになったのです。

「物心ついたときから、これが生活のスタイルでした」 オーウェン君はあきらめているように話します。「僕の家族は、労働力を求めている農家のところを転々としています。親や兄弟、僕には、生きていくためにそうすることが必要だったのです。学校に行っても、何の腹の足しにもなりません。夜にはお腹がすいてきます」

オーウェン君は学業に秀でているからと、何人もの先生に強く勧められ、今また、学校に戻って勉強を続けています。オーウェン君は、しかし、ジンバブエの元々質が高かった基礎教育に深刻な影響を与えた、10年以上にわたる経済危機と政情不安の影響を受けた多くの子どものうちのひとりに過ぎません。

様々な人々の協力で

2009年、ジンバブエが包括的政府を発足した後、ユニセフは、教育スポーツ文化省のリーダーシップの下、数多くの国内外のパートナー団体と力を合わせ協同で活動してきました。こうした努力により、ジンバブエの教育は、今、回復の歩みを進めています。オーウェンさんをはじめとする何年も学校に通っていなかった子どもたちは、再び得た教育の機会を通じて、将来を確かなものにする好機に改めて恵まれているのです。

© UNICEF Zimbabwe/2012
“子どもに優しい学校”イニシアティブプログラムの支援によって、チェグドゥ地区に建てられた新しい学校。

ユニセフは、この国で、過去何年にもわたり、教育分野において短期的な支援のみならず、長期的な発展のための確固とした基礎を築くために、重要な役割を果たしてきました。教育移行基金(ETF)や“子どもに優しい学校”イニシアティブ(CFSI)、基礎教育支援モジュールといったプログラムが、ジンバブエの教育システムを立て直すために非常に重要な役割を果たしています。

2010年にスタートしたETFプログラムの第1段階として実施された施策を通じて、前年度まで約10人に1冊しか行き渡っていなかった教科書を、小学校の主な4つの教科書と中等学校の主な6つの教科書については、1人1冊の配布ができるようになりました。また、目が不自由な初等教育学習者のために、3,200の点字本を提供しました。ETFの第二段階は、教育政策や計画の策定、学校施設の改善、カリキュラムの開発を含む活動を通じて、公平性という観点から、全ての子どもたちに質の高い教育を提供することに焦点が合わせた支援が展開される予定となっています。

また、“子どもに優しい学校”イニシアティブも、教育の復興を支援しています。このプログラムを通じて、非常に厳しい社会環境にある地域の学校270校が、教室の建設や井戸、トイレ、手洗い場の設置などのほか、非物質的な学習環境も整えるための支援を受けています。

「ジンバブエが直面した政治的、経済的な困難が、教育やその他の基礎サービスを提供するための基本システムや構造を立ち行かなくさせていたのです。この影響は、国内全体に及んでいるように思います」 ユニセフ・ジンバブエ事務所のピーター・サラマ代表はこう話しました。

「しかし、教育分野の立て直しは、急ピッチで進んでいます。教育分野で活動する全ての団体が、全国規模のプログラムを支援するために手を取り合っているのですから。特に、ETFは、この“移行時期”に必要な新しい開発モデルを提供しています」

教育スポーツ文化大臣のデーヴィッド・コルタルト上院議員は、教育分野で前向きな変化が起きていると言います。

「多くの学校は、厳しい時期を乗り越えつつあります。ジンバブエ政府は、地域の人々や世界中のドナーの皆さん、国連機関、そして特にユニセフのみなさまと手を携え、国内の公平で質の高い教育を提供するために共に取り組んでいます」

こうした全ての取り組みによって、オーウェン君をはじめとするジンバブエの多くの子どもたちが学校に戻る素晴らしい機会が創り出されています。

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