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日本ユニセフ協会

報告会レポート

オンラインフォーラム開催報告
「コロナ禍長期化において 
子どもの健全な育成環境と子どもにやさしいまちづくり」
(2022年6月30日開催)

2022年7月19日東京

2022年6月30日、オンラインフォーラム「コロナ禍長期化において 子どもの健全な育成環境と子どもにやさしいまちづくり」が開催されました。

はじめに
ユニセフ日本型「子どもにやさしいまちづくり事業(CFCI)」は2021年6月に正式に開始されました。5つの自治体(ニセコ町、安平町、富谷市、町田市、奈良市)がユニセフ日本型CFCI実践自治体として承認され、CFCIに熱心に取り組んでいます。その一方、2年以上におよぶ新型コロナウイルス感染症の拡大は、子どもたちの生活や心身の成長に大きな影響を与えており、自治体は新たな課題に直面しています。

そこで、今回のフォーラムでは、小児医学の専門家や子どもの権利の専門家、CFCI実践自治体から町長・市長を招き、長期化するコロナ禍や変化の大きい社会の中で過ごす子どもたちの、健全な成長を育む環境をどう守っていったらよいかを以下のプログラムに沿って報告・討議しました。

第1部:基調講演

第1部では、二名の専門家による基調講演を行いました。

基調講演①「新型コロナウイルス感染症流行下における子どもの健康」
 こども環境学会 五十嵐 隆 会長
 (国立成育医療研究センター理事長)

五十嵐会長からは、医学的な視点から新型コロナウイルスと子どもの健康についての講演がありました。

新型コロナウイルス感染症とはどういう感染症なのか、子どもたちに与える影響はどのようなものがあるのかが解説され、コロナ禍で明らかになった子どもの健康に関する課題や、子どもの健康を守るために考慮すべき点について説明されました。

特に、「健康」を考えるときには、身体的な面だけでなく、心理的な面、社会的な面から見ていくことの重要性が強調され、子どもの時の健康は成人になっても長期的に影響することにも言及されました。

五十嵐隆 氏(こども環境学会会長/国立成育医療研究センター理事長)

五十嵐会長の基調講演は、こちらから動画でご覧いただけます

基調講演②「変化する社会において子どもの権利をどう守るのか」
文京学院大学 甲斐田 万智子 教授(国際子ども権利センター代表理事)

続いて甲斐田教授からは、子どもの権利の視点から新型コロナウイルスをはじめとする緊急時と子どもについての、講演がありました。

社会が変化に直面するときや緊急事態に侵害されがちな権利について解説され、実際にコロナ禍で起きた権利侵害について、様々な調査結果を基に言及されました。

その上で、子どもがひとりで悩んで取り残されることのないような「子どもにやさしいまち」を実現することや、子どもの声が聴かれ、その声が受け入れられる社会になることの重要性が話されました。

甲斐田万智子 氏(国際子ども権利センター代表理事/文京学院大学教授)

甲斐田教授の基調講演は、こちらから動画でご覧いただけます

 

第2部 自治体からの報告/パネルディスカッション

「コロナ禍長期化におけるこどもにやさしいまちづくり」

第2部では、木下勇教授(日本ユニセフ協会CFCI委員会委員長/大妻女子大学教授)の進行により、基調講演者の二名と、片山健也ニセコ町長、若生裕俊富谷市長、仲川げん奈良市長のご参加により、パネルディスカッションを行いました。

町長、市長からは、コロナ禍で苦労されている点や工夫したこと、CFCI実践自治体としての各自治体の強みなどが語られ、ディスカッションの形で、コロナ対応により顕著化した課題、子どもの声を聴くことの重要性やそのことによる子どもやおとなの変化、クライシスが長期化する中でも子ども期でなければ得られないことを維持確保することの重要性や、そのためにできることなどが、専門家および行政の視点から、具体的な事例を交えて丁寧に語られました。

最後に木下教授が、パネルディスカッションの内容を以下の3つにまとめました。

・コロナ禍のような非常時には、平常時からある脆弱性が拡大されることから、おとなも子どもも本来持っているレジリエンスを高めるために、平常時から人と人との関係性を作っていくことが重要である。すなわち平常時にどのような社会、まちを作っていくかが問われていること。

・持続可能なまちを作っていくためには、子どもたちの声を聴くことが重要であること。そういう取り組みを先進的に進めてきているCFCI実践自治体から、今日はその有効性が示されたということ。

・社会が不安になっている中でのおとなの役割は、エビデンスベースの正しい情報をつかんで、それを子どもにも伝え、不安を解消していくこと。専門家もそれを自戒しながら役割を果たし、専門家も自治体も連携していくことの重要性を認識したということ。

(上段左から)ニセコ町片山健也町長、富谷市若生裕俊市長、五十嵐隆会長(下段左から)奈良市仲川げん市長、大妻女子大学の木下勇教授、甲斐田万智子教授

パネルディスカッションの様子は、こちらから動画でご覧いただけます

 

本フォーラムは、公益社団法人こども環境学会との共催で、子ども環境学会2022東京大会“クライシスとこどもの環境”のプレイベントとして開催されました。以下よりフォーラムの全動画をご覧いただけます。

 

<2022年9月30日追記>

寄せられたご質問への一部回答

Q:こども家庭庁の発足とこども基本法の制定が、CFCI関連施策に対してどのように影響するか、今から予想されることはありますか?

・これらの動きは、社会的にこども施策の重要性が高まってきていることだと思うので、引き続きCFCI委員会に参加させていただきながら、ブラッシュアップを図っていきたいと思います。

・こども家庭庁の基本方針として、子どもの最善の利益を第一に考えることが掲げられており、今後のこども政策の基本理念にも子どもの意見を聴き政策に反映させていくということが記されています。子どもの意見を聴くという方向性が同じであるため、CFCIの関連施策に対しても追い風になるのではないでしょうか。あくまでも予想ですが、CFCIに関心を持つ自治体が増えるということにも繋がるかもしれないと感じます。

 

Q:こども基本法で、こども施策を進めるにあたりこどもの意見を聴くための措置を講ずることが、国や自治体に対して、義務付けられました。国や、全ての自治体で、こどもの意見を反映させることが当たり前になるためには、どんなことが必要だと思いますか。

・本町でも子ども議会など、子どもがまちづくりに参加する取組を実施していますが、子どもの意見を施策に反映することに加え、子どもたち自身に子どもの意見が大切、子どもの意見が役に立っているということを伝えていくことが重要ではないかと思っています。また、直接子どもにかかわる部署だけではなく、組織全体で子どもの意見を大切にするというような職員全体の意識改革も重要だと思います。

・「当たり前になる」というのは「誰もが共通して理解している事柄になる」ということでしょうから、まずは一人ひとりがなぜ子どもの意見を聴くことが必要なのかということについて理解することが必要と考えます。そのため、こども基本法にすべての子どもの意見表明の機会の確保に関することや、子どもの状況に応じて施策や策定を図ることが地方公共団体の責務と明記されたことは大きな意味を持つと考えます。子どもの意見を聴き反映させることについての理解が部署を問わず広く浸透することで、自治体において「子どもの意見を反映させることが当たり前」になっていくことを望んでおります。

 

Q:行政と、専門家(医療・発達心理・教育等)や民間団体とが連携し、網目の小さなサポート体制をとっていくことはとても大切だと感じていますが、苦労している自治体は多いと思います(例えば個人情報の取り扱いなど)難しい点もあると思います。各自治体ではどのような施策をとられていますか?

・個人情報など難しい点はありますが、行政だけではすべてに対応することは難しいと思いますので専門家やNPOとの連携を深めていく必要があると感じています。何か対応しなければならない事件事故があってから連携するのではなく、平時から定期的に情報交換をするといった体制を取っておくことが大切ではないでしょうか。

・関係者相互の有機的な連携の確保等についてのご質問と推察いたします。それぞれの自治体における地域の課題による違いはあると思いますが、子どもについての施策が円滑に行われるためには行政と関係機関の連携体制は重要であると捉え、本市では子どもに関する施策や支援に関する会議等で連携を図っております。行政の力だけではやはり限界があるため、連携のあり方としては民間団体等への委託等も含めて様々な方法を検討しております。

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