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公益財団法人日本ユニセフ協会

国際協力人材養成プログラム

海外インターン体験記

氏名 川畑 東陽
派遣先 ミャンマー モーラミャインフィールドオフィス
派遣期間 2015年9月〜12月
民族武装組織管理下の村の子ども達と

私はミャンマー南東部・モーラミャインのフィールドオフィスにインターンとして派遣されました。モーラミャインフィールドオフィスはカレン州・モン州・タニンダリー管区の大きく3つのエリアを担当し、教育・健康・水と衛生に関する支援を実施しています。この地域では民族武装組織と政府の紛争が長く続いてきたため、人々は安全な生活を送ることが難しく、各コミュニティは孤立しており、教育・健康・衛生面でも整備が遅れている地域が多くありました。とはいえ、2010年以降のミャンマーの民主化に伴う民族武装組織との2度に渡る停戦協定(2012年・2015年)により紛争が落ち着きを見せ始め、現在はこれら地域への支援を可能とする下地が徐々に整ってきつつあります。

私が担当したWASH (Water, Sanitation and Hygiene)分野のインターンシップでは、2013年〜2015年前半に国連平和構築基金による資金のもとでユニセフ・ミャンマーがカレン州にて実施したプロジェクトのフォローアップ調査を担当しました。支援を受けた60強のコミュニティが、支援後半年程経った後にどのような状況になっているのか、3ヶ月半のインターンシップの期間にフィールドリサーチを実施していました。そして、フィールドリサーチを通して得た知見を、ケーススタディ・ヒューマンインタレストストーリー・プロポーサルの3つのアウトプットに反映させました。

上記プロジェクトでは、ユニセフ・ミャンマーはローカルのNGOと協働の下、コミュニティ主導で屋外排泄(Open Defecation)の根絶を目指すべく体験的なワークショップ・学びの機会をコミュニティに与えるというCLTS(Community Led Total Sanitation)を中心とした支援を行うことで、トイレ等のハードウェア供与を支援のみに注力するのではなく、知識の習得による村人の具体的な行動変容を目標とするソフトウェアの支援を行っていました。訪問したコミュニティの中でも成果が芳しいところでは、コミュニティリーダーの強いリーダーシップが村人達の自発的な行動変容を促していました。その上、村人同士でも水と衛生に関するコミュニケーションがプロジェクト後も活性化されており、持続可能な成果が見えていました。一方で、コミュニティの孤立がより大きく、外界からの情報が手に入ることが難しい地域ではトイレの使用という行為を未だ奇異に感じているため、屋外排泄の根絶には至らないケースがいくつか見られました。

ミャンマー南東部では、これらの特に孤立した地域に対する支援の強化の必要性が叫ばれています。特に2015年10月15日のミャンマー政府と南東部民族武装組織との停戦合意及び2015年11月8日の総選挙での国民民主連盟(NLD)の勝利により、これらの地域に対する政府の介入及び外部組織による援助の増加が大きく見込める環境へと変化しました。WASH関連活動においても、民族武装組織・政府・コミュニティが一堂に会する世界手洗いの日やその他会合の機会を設けてこれら3つのアクターの結束強化を図ることで、コミュニティの孤立脱却・水と衛生状況改善及び支援の増加に繋げようとしています。

実際に、ユニセフのフィールドでのプロジェクト実施、中央・地方政府に対するアドボカシー、そしてそれらを繋げるべく異なるアクターを交えての各種会合・活動が、ばらばらになっていた南東部の状況を秩序あるものへとまとめることに貢献していることをインターンシップ中に見ることができました。これまで政府に強く反発してきた民族武装組織からは、「これまでの紛争の結果としてのコミュニティの荒廃を反省して今後は関係者・組織とともに地域の発展を目指していきたい」というようなお話をうかがうことができました。孤立していたコミュニティの村人は、「ユニセフの支援により外の世界の衛生状況や知識を得ることによってコミュニティの衛生状況を改善できた。これからは、自分たちでも積極的に衛生改善の知識・情報を取得すべく外部とのコミュニケーションを図りたい」と話してくれました。

このようにWASH支援によりひとつひとつのコミュニティの発展が積み重なり、地域全体の平和構築に繋がっている、ということをリアルに実感できたことが、WASHによる具体的な支援に対する基本的な知見の取得に加えた、今回のインターンシップを通しての私にとっての大きな学びでありました。単に"WASH支援"というモジュールのみを与えるのではなく、地域・コミュニティ全体の発展を見通してプロジェクトをデザインすることで、水と衛生分野を超えたところにまで波及効果を及ぼすことができるということを実感しました。また、業務外においても、民族武装組織との停戦協定成立及び民主的総選挙のタイミングにミャンマーに滞在し、現地の人々からミャンマーという国それ自体に関しても様々なお話をうかがったことも、国家というものをより広い視点で考えるきっかけとなる大きな学びとなりました。最後になりましたが、このような学びの機会を与えて頂けた日本ユニセフ協会、ユニセフ東京事務所、ユニセフミャンマー・ヤンゴン事務所(カントリーオフィス)、そして慣れない環境での生活を公私に渡って支えて頂いたモーラミャイン事務所の方々に心より感謝申し上げます。

プロジェクトで導入された集団手洗い設備で手洗いをする母と子
プロジェクトで学校の側に導入されたトイレ

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