美しい自然や珍しい動物で知られるマダガスカルですが、子どもたちを取り巻く環境は厳しいものです。人口の9割以上が1日2米ドル以下の生活を送る貧困層と言われており、その人口の多くが18歳未満の子どもです。マダガスカルの子どもの半数近くが栄養不良状態にあると言われ、水や衛生の環境も深刻であると言わざるを得ません。気候変動の影響で南部における干ばつの被害が大きくなる一方、サイクロンや虫害に対する脆弱性なども指摘されています。
子どもたちの保健状況に関して言えば、5歳未満児死亡は改善の傾向があるものの、妊産婦死亡率は依然として高く、その原因の一つに質の高い保健サービスへのアクセスが限られているということが挙げられます。また、5歳未満児死亡のうち新生児死亡がその多くを占めており、妊娠から出産、そして生後までの一貫したケアが大変重要になっています。

私が配属となった母子保健ユニットでは、「母子（新生児）が必要な保健サービスを受けられること」「子どもたちが病気（特に下痢、肺炎、マラリア）から守られ、必要な診療を受けられること」を目標に、包括的な活動を行っていました。

マダガスカルでは今なお下痢、肺炎、マラリアの3つの疾病で命を失う子どもが多い一方で、診療所へのアクセスが限られており、必要な時に診断や治療を受けることができないという課題があります。このプロジェクトではこうした問題を解決するため、Integrated Community Case Management; iCCM（包括的地域症例管理）の戦略を通じ、主にコミュニティ・ヘルス・ワーカーに対して必要な訓練や資材の支援を行い、その効果を測っていました。私はこのプロジェクトの実行を補佐する一方で、iCCMのボトルネック分析を行い、当該地域でiCCMを行う上で何が課題となるかを調査しました。

この業務では、実際にプロジェクト実施地域に行く機会が何度かあり、コミュニティ・ヘルス・ワーカーをはじめとした現場の方々や診療所スタッフ、また、それらを統括する郡の保健局のみなさんとの対話を行うことができ、現場の方々の声を数多く聞くことができたことはとても貴重な経験でした。この際、過去に同地で青年海外協力隊として活動したため、現地語でコミュニケーションを取れたことが、現地の人がより心を開いて話をしてくれたのではと感じました。また、こうした現場の声や、現地で集めたデータを分析し、全体の戦略に対する提言ができるというダイナミクスは、ユニセフという機関でインターンシップをしたからこそ経験できたことだと思います。

これだけでなく、インターンシップ期間中には、年次報告書や活動報告書の作成、会議への参加、プロポーザル作成などを通じ、様々な業務経験を積むことができました。WASHプロジェクトの視察にも同行させていただき、学校や地域でのWASHプロジェクトの成果を見せていただきましたが、子どもたち、そしてそれを取り巻く各所に見られるその活動に、ユニセフを通じた支援の効果を強く感じました。

今回のインターンシップでは、ユニセフという機関で働くことによって、課題に取り組むうえでの広い視点、現場で知識を活用する方法、(語学力だけでない)コミュニケーション能力の重要性、プライオリティを見極める判断力など、数多くのことを学ばせていただきました。このインターンシップを支えてくださったスーパーバイザーを始め、ユニセフ・マダガスカル事務所のスタッフの皆様、プロジェクト関係者の皆様、日本ユニセフ協会の皆様、そしてご支援をくださった皆様に、この場を借りてお礼を申し上げます。

【参考文献】

1. ・National Statistics Institute (INSTAT). MADAGASCAR MILLENNIUM　DEVELOPMENT GOALS NATIONAL MONITORING SURVEY (ENSOMD) 2012-2013
2. ・UNICEF Madagascar (2014) L’enfance a Madagascar: Une promisse d’avenir: Analyse de la situation de la mere et de l’enfant
3. ・UNICEF Madagascar (2015) Madagascar Country Programme Document March 2015-2019
4. ・UNICEF Madagascar (2015) Madagascar Country Office Annual Report 2015
5. ・UNICEF Madagascar (2016) Challenges & Opportunities for Children in Madagascar

地域での聞き取り調査の様子

WASHプロジェクトの視察で訪問した小学校で手洗いの指導