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財団法人日本ユニセフ協会




ニュー・シャムシャット アフガン難民キャンプからの声

イスラマバード、2001年10月15日(ユニセフ)

アーマッド・マスード 広報担当補佐官、ユニセフ・イスラマバード

ユニセフは、干ばつと紛争激化に苦しむ750万人のアフガンの女性と子どもたちに、3,600万米ドルの緊急支援が必要と訴えています。この中には、アフガニスタンで国内避難民となったり深刻な影響を受けている女性や子どもたち、そして、パキスタンなど周辺諸国のアフガン難民が含まれています。

現在の危機的状況が始まるずっと以前から、国境を越えてパキスタンに逃れたアフガン難民は推定で200万人と言われています。そのほとんどは、パキスタン国内のホストファミリーとともに暮らしているか、パキスタンとアフガニスタンの国境近くに昔からある難民キャンプで生活しています。今後アフガニスタン情勢がますます悪化し、難民の大量流入が予想されるため、パキスタン政府はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の直接支援を受け、新しいキャンプ作りに取りかかっています。これには、ユニセフをはじめ、他の国際的機関や国内の支援組織も協力しています。

イスラマバードでユニセフの広報担当補佐官を務めるアーマッド・マスードは、最近新しくできた難民キャンプのひとつニュー・シャムシャットを訪れ、そこで働く人びとや難民と話をしてきました。次に紹介するのは、彼のレポートです。

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家族を養うために金がいる
12歳のカン・モハメドが住んでいるのは、泥とれんがでできたひと部屋だけの家です。アフガニスタンとの国境に近い、荒涼とした山腹に広がるニュー・シャムシャット アフガン難民キャンプには、これと似たような家がいくつも並んでいます。このキャンプは、パキスタンの北西辺境州の州都であるペシャワールから、南西に45km離れたところにあります。

ニュー・シャムシャット難民キャンプは、アフガニスタンの干ばつと紛争から逃れてきた難民のために、去年パキスタン政府が開設しました。キャンプの人口は、すぐに5万5,000人にふくれあがりました。パキスタン、イラン、タジキスタンなど周辺諸国に越境したアフガン難民は、全部で350〜400万人とも言われます。

カンはカブールの北、カラバグで暮らしていました。しかし去年タリバンの攻撃を受けたため、母親と15歳の兄、それに2人の妹とともに逃げ出したのです。はだしで、擦り切れた灰色のシャルワール・カミーズ(長いチュニック状のアフガンの伝統的な衣装)を身にまとったカンは、ここ数日ずっと高熱が続き、身体のあちこちが痛むと言います。

「夜になって熱が上がると、怖くなる」そう話すカンの唇は、ひび割れて水疱ができています。「診療所に行ったら薬をくれた。これで良くなるといいんだけど」

ニュー・シャムシャットをはじめ他の難民キャンプには、パキスタン政府からの支援に加えて、国際的な援助機関や、国内外のNGOが保健、水の供給、衛生、教育といった分野で支援を行っています。

ユニセフ・パキスタン事務所は2年前から、パキスタンの5歳未満の子ども2,000万人以上に、ポリオの予防接種を行なってきました。その中には、難民キャンプやホストファミリーのもとで暮らしているアフガン難民の子どもも多く含まれています。さらにユニセフは、はしか、ジフテリア、百日咳、破傷風など子どもがかかりやすい病気に対する予防接種用のワクチンを提供しています。

現在ユニセフ・パキスタン事務所では、新しい難民のために国境付近に作られる予定のキャンプに備えるため、薬品やその他の医療品、水供給のための装置、毛布、シェルター用品、栄養不良児のための補助食を予備配置しているところです。

ニュー・シャムシャット難民キャンプの子どもたちは、男の子も女の子もほとんどが学校に通っています。しかしカンは学校に行っていません。 カンはお兄さんとともに、古紙やポリエチレンの袋など売れそうなものをあさっています。1日10〜12時間も働いて、稼ぎは20〜30パキスタンルピー、米ドルにしてわずか0.4〜0.5ドルです。 「学校は大好きだし、授業も大好きだよ」カンはいま1年生のクラスにいます。「でも家族を養うのにお金が必要なんだ」

弱っていく体力
色とりどりのぼろ布にくるまれて、1歳のクドゥラトラが泣いています。母親が彼を腕に抱いてあやしています。ここはニュー・シャムシャット難民キャンプにある診療所の近くです。 「せきがひどくて、胸がとても痛そうなんです」と母親のシャエスタは言います。彼女は青いブルカを頭からつま先まですっぽりかぶっています。「何も食べないし、身体が弱っていくばかりです。とても心配なんです」

シャエスタと夫、それに2人の子どもは、紛争と干ばつのため1年前に東部のラグマン州から逃げてきました。そして国境を越え、この難民キャンプで暮らすようになったのです。

クドゥラトラには母乳を飲ませていますが、「このところお乳の出も悪いんです。お茶とビスケットを与えてみますが、食べたがらないし、すぐに戻してしまいます。」 クドゥラトラと兄は、診療所でポリオワクチンの接種をすでに受けています。だから、クドゥラトラが「手遅れになる前に」医者が何とかしてくれると期待しています。

キャンプの医療を担当しているナビード・アクバル医師は、キャンプには病気にかかっている子どもたちが大勢いると語ります。 「このキャンプの衛生状態がもう少しよくなれば、と思います。ほこりっぽい環境は、キャンプの住民、とくに子どもたちの健康に直接影響を与えています。急性の呼吸器感染症、下痢、赤痢、目の感染症、皮膚病などが子どもたちを苦しめているのです」

抗生物質が足りない
スハイラは生後11か月のアフガン難民の女の子です。いま、彼女の呼吸は浅く速く、まるで過換気症候群のようです。呼吸器感染症と高熱、下痢に苦められているのです。 「もう数週間も前からこの状態です」と、ニュー・シャムシャット・キャンプにあるテント張りの診療所で診察を待ちながら、スハイラの祖母は話します。「何人かのお医者さんに見せて、薬も出してもらいましたが、全然良くなりません」

難民キャンプで医療に従事している ロマナ・シャイダ・ドゥランティ医師によると、キャンプでは多くの子どもたちが、スハイラと同じ症状を見せています。 「子どもが病気にかかって体力が落ちると、免疫系が弱くなります」ロマナ医師はスハイラを診察しながら説明します。「そのため免疫力が弱まった時に発症する類の感染症にかかりやすくなるのです。この子もきっとそうでしょう。」

ロマナ医師は1日150〜160人を診察していますが、そのうち半数は子どもです。それでもキャンプの状況は、2か月前に比べると格段に改善されました。 「でもまだ充分ではありません。抗生物質が足りないし、基本的な医療品も不足しています。」

母親に栄養を
難民キャンプでは、毎日数人の赤ん坊が誕生しています。マザー・アンド・チャイルド(MCH)のスタッフを務めるルビーナは、難民キャンプ内のテント張りの診療所のひとつで、赤ん坊がこの世に生まれ出る手助けをします。

「妊娠中の女性、とくに若い人は、毎日のように診療所に相談にやってきます。はっきりと口に出さないまでも、キャンプで子どもを産むことに不安を感じているのです」 診療所は夜には閉まってしまいますが、夜に産気づいた場合は、キャンプに住む助産婦の誰かを呼ぶことができます。
「キャンプのこの近辺にいる家族は、みんな私の住んでいるところを知っています」と助産婦のひとりゴーンディグルは語ります。「診療所が閉まっていれば、みんな私のところにやってきます。週に1〜2回はお産に立ち会っていますよ」

難産の場合は、診療所経由でペシャワールの病院に運ばれます。そのため今年早くに、ユニセフ・パキスタン事務所は患者を運ぶための救急車をキャンプに用意しました。ルビーナによると、この救急車のおかげで何人もの生命が救われたそうです。

ここでは、生まれた赤ん坊はみな母乳で育てられますが、乳の出が悪くてうまくいかない場合もあります。 「ミルクや高たんぱくのビスケットなど、栄養のある食べ物が欲しいと言われますが、いつも十分にあるわけではないのです。でも母親は、自分自身と子どものために、栄養価の高い食べ物が必要なのです」

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すでに大量の難民を引き受けているパキスタンですが、政府は新たに20か所にキャンプを設置し、20万人の難民を収容することを決めています。これらのキャンプで、女性や子どもたちの最低限のニーズを満たすために、ユニセフはパキスタン政府や国連人道支援プログラムのための諸機関と密接に協力しています。保健、栄養、水の供給、衛生、教育、保護といった面で支援を行なうためのさまざまな計画が、UNHCRを中心に最終調整段階に入っています。こうした準備作業の一環として、ユニセフは保健、栄養、水と衛生関連の物資をクエッタとペシャワールに配備しました。

写真は、いずれもニュー・シャムシャットアフガン難民キャンプの写真です。

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