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アフガニスタン緊急・復興支援 第9報
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© UNICEF Afghanistan/2009/Walther |
アフガニスタンで実施されたポリオ予防接種キャンペーンで、経口ポリオワクチンを投与される子ども。 |
ユニセフと世界保健機関(WHO)は、今月、アフガニスタン全土の子どもたちを対象に、3日間にわたるポリオ根絶予防接種キャンペーンを実施しました。アフガニスタンは、世界で、いまだにポリオが流行している4ヵ国のうちのひとつです。
ポリオの根絶は、国際社会の最優先課題の一つです。そして、その達成には、「3つのP」のアプローチ、すなわち「説得」(persuasion)、「参加」(participation)、「平和」(peace)が欠かせません。
9月21日の「国際平和デー」を盛り上げるためのイベントとしても位置づけられた今回のキャンペーンは、5歳未満の子ども120万人を対象に実施され、総勢1万5,000人の保健スタッフが、国内8州(ゴール、ファラー、ウルズガン、ヘルマンド、カンダハール、ホースト、クナル、ナンガハル)で、全ての家庭を一軒一軒訪問しました。
「私には6人子どもがいますが、今日、6人全員が予防接種を受けることができました。」保健スタッフの訪問ではじめて今回のキャンペーンを知ったファティマ・ファルザドさんは、こう話しました。
ファルザドさん一家のように、多くのアフガニスタンの家族は、保健施設を利用することができません。経済的な問題、保健施設まで距離の問題、治安上の問題など、様々な困難に直面しているのです。
「私の州に住む人々の多くは、治療不可能な病気に罹っているわけではありません。人々は、失業、貧困、暴力の恐怖に苦しんでいるのです。各国政府や世界中の人々が、私たちの状況に目を向けてくだされば、アフガニスタンの人々は救われます。ユニセフとWHOが、私たちの地域で実施している活動に非常に感謝しています。しかしながら、もうひとつのメッセージを伝えなければなりません。こうした成果が生まれている一方、まだまだやらなければならないことが山積しているのです。」サイド・モハメド・エクバル・ムニブ ゴール州知事はこのように話しました。
ゴール州の15万6,000人の5歳未満の子どもたちが、このキャンペーンを通じて予防接種を受けました。
© UNICEF Afghanistan/2009/Walther |
子どもに経口ポリオワクチンを投与するユニセフ・アフガニスタン事務所のキャサリン・ムゲンベ代表とWHO・アフガニスタン事務所のピーター・グラフ代表。 |
アフガニスタンでは、いくつかの州に限られていますが、いまだに、ポリオウイルス(野生株)の蔓延が報告され続けています。しかし、ポリオの症例は、1999年は63件、2006年は31件、2007年は17件と、着実に減少し、成果は既に表れています。
こうした成果は、アフガニスタンの公衆保健省とユニセフ、WHO、国際ロータリークラブ、米国疾患対策予防センターをはじめとする「国際ポリオ根絶イニシアティブ」の協力の賜物にほかなりません。こうした協力によって、ウィルスの封じ込めや流行を食い止めることができました。
しかしながら、2008年からアフガニスタンでの武力衝突が再び激化し、治安が悪化。紛争地域への予防接種チームのアクセスが制限されています。こうしたことから、ポリオの症例数は上昇。今年に入ってから、既に、20の症例が報告されています。
こうした傾向を食い止めるには、親やコミュニティの人々への啓発活動と人々の参加が必要不可欠です。
「ポリオの根絶は、世界中全ての人にとって必要なことです。」WHO・アフガニスタン事務所のピーター・グラフ代表はこう話します。「私は、ゴール州の地域のリーダーに、この地域の全ての親に、子どもたちに予防接種を受けさせるよう求めました。(根絶を実現するためには、)コミュニティの全ての人々が、この活動に参加しなければなりません。ゴール州の子どもたちだけでなく、アフガニスタン全土の子どもたち、そして世界中の子どもたちに対して、私たちはポリオを根絶する責任があります。」
今年8月には、4回にわたり、全国一斉の戸別訪問予防接種キャンペーンが実施され、750万人の子どもたちに予防接種が実施されました。ポリオの流行を防ぐため、こうしたキャンペーンに並行して、国中の保健施設で、定期予防接種活動が行われています。
一方、政情不安のため、約10万人の子どもたちが、いまだに予防接種を受けていません。
「全ての子どもたちに予防接種を行うために、平和は必要不可欠です。」ユニセフ・アフガニスタン事務所のキャサリン・ムゲンベ代表はこう話しました。「ほんの数秒あれば、子ども一人に予防接種を行うことができます。でも、その効果は、一生続くのです。」