4月23日、ユニセフ・レソト事務所の青少年育成担当官・菊川 穣さんの一時帰国に伴い、ユニセフハウスにて「南部アフリカ危機報告会」が開かれ、レソトにおける食糧危機とHIV/エイズの脅威、ユニセフの支援活動についてご報告いただきました。
概略 レソトは南アフリカ共和国の真中に位置し、人口約220万人でほぼ九州と同じ大きさの国です。1990年代に南アフリカ共和国が民主化されていく中、レソトの政情も不安定なものとなり、10代における妊娠率や失業率が高くなりました。現在、6割もの人が貧困ライン以下で生活を送っており、ユニセフは引き続き人道援助を行っています。
レソトにおける食糧危機 現在レソトでは、過去2年間における不安定な天候、小作農地の減少、南アフリカ鉱山業不況による出稼ぎの収入の減少等が原因で食糧危機に陥っており、全人口の3分の1以上もの人が影響を受けています。今回起こっている食糧危機は、80年代にエチオピアで起きたどこにも食糧がないという食糧危機とは異なります。レソトでは食糧が無いわけではなく都市部や地方都市の商店に行けば食べ物を買うことができますが、人々は現金収入がないため購入することが出来ません。さらに、今まで食糧危機で最初に犠牲になるのは子どもや老人でしたが、今回はHIV/エイズに感染している生産年齢にある成人男性や女性が犠牲になっている点においても性質を異にします。
レソトにおけるHIV/エイズ レソトでのHIV/エイズ感染者数は、ボツワナ、スワジランド、ジンバブエに続き第4位であり、成人感染率は31%にのぼり、15歳から24歳の女性においては51%もの人が感染しています。エイズの影響を考慮した場合、レソトにおける2010年の平均寿命は45歳になると予想されています。生産年齢人口のHIV/エイズの拡大により農業技術を身に付けた人が農作業をすることが出来ないため、農業生産高は減少の一途を辿っています。現在では15歳以下の約3分の1が孤児であり、小学校中退者の数も急増しています。又、孤児に対する暴力、虐待、差別は後を絶ちません。ユニセフは、中期戦略計画に基づき以下に掲げた5項目を中心に活動を行っています。
ユニセフの活動 ●女子教育 他の開発途上国と異なり、レソトでは女子の識字率及び就学率は男子より高いです。これは男子は小学校を卒業すると南アフリカ共和国に出稼ぎに行き、残された女子が学校へ残るためだと考えられます。しかしながら、現在も女性はマイナーであるという考えが一般的であり、女性に対する強い偏見や差別はまだ残っています。そこでユニセフは、女子に対する偏見をなくすために教員を再教育したり、偏見がどういう形で残っているか調べるためにジェンダー分析を採り入れています。
●総合的な幼児教育 ユニセフは国連世界食糧計画(WFP)と協力し、幼稚園約500校でUNIMEX(栄養補助食)を供給しました。幼稚園を通して菜園キットを配布し、同時に農業のやり方についても教えました。防虫錠剤を子ども達約52万人に配り、幼稚園の先生方にはライフスキル教育の再訓練を行いました。
●予防接種「プラス」 約23万4千人の幼児を対象にはしかの予防接種、及び、ビタミンA錠剤供与キャンペーンを実施し、予防接種拡大担当者26人に対しても訓練をしました。又、日本政府と協力して新たな機材の供給もしています。
●HIV/エイズと闘う 小学校や識字教室において、教育に対するライフスキル教育の再訓練を行いました。又、娯楽を増やすことを目的に、多くの子ども達にスポーツの楽しさを知ってもらおうと、スポーツコーチに対してもライフスキル教育を実施しました。複合目的ユースセンターの建設を支援し、そこでレクリエーション、職業訓練、カウンセリングサービスなどを行っています。又、現地のNGOと協力して、母子感染予防プロジェクトを実施し、孤児家庭に菜園キットを配布しました。HIV感染者に対して食事栄養ガイドラインを作成し、感染者に対する差別や偏見を無くすことにも努めています。
●暴力、搾取、虐待、差別からの子どもの保護 人道ワーカーによる受給者に対しての性的搾取を防止するための啓蒙キャンペーンを実施しています。レソトでは法律が整備されていないため、出生登録と法改正を支援しています。さらに、最も支援を必要とするエイズ孤児を見つけ出し登録した上で、優先的に支援しています。
|