HOME > 世界の子どもたち > 緊急支援情報 > アフリカ 2005/8/19
財団法人日本ユニセフ協会




ニジェール食糧危機

16万人の子どもが中度の栄養不良
3万2千人の子どもが深刻な栄養不良

1. ニジェールについて

西アフリカに位置するニジェールは、世界でも最も貧しい後発開発途上国のひとつです。ニジェールの乳児死亡率は154(赤ちゃん1,000人中154人が1歳未満で死亡)、5歳未満時死亡率は262(子ども1,000人中262人が5歳未満で死亡)とどちらも世界で最も高い数値を示しています。子どもの主な死亡原因は、下痢、肺炎、マラリアなどで、それらはすべて栄養不良が隠れた要因となっています。

image11. 干ばつとバッタの来襲による食糧不安

2004年の耕作期に砂漠バッタの大群がニジェールの一部を襲い、ほとんど全ての作物を食べ尽くしました。またいくつかの地域では、雨量が足りなかったため作物はとれず、放牧地は干上がり、農民も畜産業者も大きな影響を受けました。ニジェール政府は、こうした事態による穀物不足は223,448トン、飼料不足は4,642,219トンにのぼると見積もっています。

2005年3月に国連、政府、NGOが合同で行った調査の結果、5歳未満児80万人を含む360万人(2,988村)がこの食糧危機によって厳しい状況におかれていることがわかりました。支援を待つ80万人の5歳未満児のうち、20%(16万人)が中度の栄養不良、4%(32,000人)が深刻な栄養不良だと見られています。

ニジェールの大統領と首相も、この状況は極めて危機的であると表明しています。もともと食糧難に陥りやすいとされる106地区のうち、比較的安定した状況なのはわずか10地区にすぎません。この深刻な食糧危機の中、ニジェールの人々の栄養を確保することは困難です。

栄養治療センターにやってくる人は飛躍的に増えています。7月中旬の時点で昨年同時期に比べると少なくとも2倍の人が登録されており、栄養不良の増加は、4月から10月までの収穫の少ない時期を通じてさらに増え続けると予測されています。ニアメイでNGOが運営しているサガ栄養治療センターでは、今年の4月から6月までの間に、昨年1年間の総数よりも多い650人の深刻な栄養不良の子どもたちを治療しました。

3. これまでのユニセフの活動

image1ユニセフ・ニジェール事務所は、すでにUS$1,235,400(約1億3,590万円)をこの食糧危機に対して充当しています。ユニセフはニジェール政府や国際NGO、他国連機関と協力して、中度・重度の栄養不良の子どもたちの治療と食糧不足の影響を軽減するために活動しています。

ユニセフがこれまでに政府とNGOに配布したのは41トンの治療用ミルクと1.5トンのプランピーナッツ(高栄養治療食)。ユニセフが調達する栄養治療食は、10カ所の常設の栄養治療センターと21カ所の追加治療センターに届けられています。また190トンのユニミックス(栄養治療食)がまもなく政府とNGOへ送られます。

さらにWFP(世界食糧計画)との共同事業では、614トンの穀物を食糧不足に襲われた62の村に配り、4万人の5歳未満児を含む20万人の住民に対応しました。
また追加の900トンがさらに90村落に配布される予定です。およそ6トンの種子類(とうもろこし、小麦、ジャガイモ)も提供されました。

4. 複合的な被害

穀物の価格と貯蔵
2005年3月、穀物の価格は昨年同時期に比べ急騰し、収穫が少ない時期に通常見られる価格と同じくらいまで上がりました。また飼料がないために家畜の死亡も増加していると報告されています。一方で人々は自分の家畜を売り払い、それらが市場に氾濫するため牛肉の価格が暴落しています。そのため家畜を売っても、そのお金で家族に必要なだけの穀物を買うことはできないのです。

保健と予防接種
中度・重度の栄養不良に陥った子どもたちは免疫機能が低下し、感染への抵抗力が弱まり、その結果、下痢、肺炎、マラリア、はしか、その他水に起因する病気など、子どもたちに多い病気によりかかりやすくなっています。治療を受けた子どもたちの、そしてまだ治療を受けていない子どもたちについても免疫状態・健康状態を観察する必要があり、治療センターでの調査や地域レベルでの健康調査を続けていかなければなりません。

5. ユニセフの支援活動の拡大

食糧危機による緊急事態においては、ユニセフはWFPと緊密な連携をとりながら活動をします。ユニセフの大まかな方針としては、支援の調整をすること、そして国の保健施設やNGOを支援して中・重度の栄養不良に対応すること(治療用食糧の提供や保健員の研修)、また保健、予防接種、水と衛生、保護に関連して発生するあらゆる問題に対応することです。

ユニセフの差し迫った目標は、①32,000人いると見られる重度の栄養不良の子どもたちと160,000人の中度栄養不良の子どもたちを治療し、a)現在中度の栄養不良の子どもたちが重度に陥らないようにすること、並びにb)栄養不良から回復した子どもが再び栄養不良とならないようにすること、②政府機関とコミュニティの能力強化し、繰り返される食糧危機に対処できる体制をつくること、そして③被害を受けている人々が保健、予防接種、保護、水と衛生に関するサービスを確実に受けられるようにすることです。

<保健と栄養>
ユニセフは、栄養分野と保健分野のプログラムのつながりを強化することで、栄養不良の子どもたちすべてにはしかの予防接種やビタミンA補給をおこない、子どもの健康状態の悪化を防ぎます。また被害を受けている子どもたちの間のマラリア、消化器系の疾患、急性呼吸器感染症の広がりを防ぐことにも注力します。ユニセフは栄養、健康、そして死亡率についての調査と、はしか、マラリア、髄膜炎の感染予防計画においてWHOとともに活動しています。

<水と衛生>
水に起因する病気の広がりによって状況を悪化させることがないよう、ユニセフは食糧センターにきちんとした水と衛生設備を整え、また栄養不良の子どもを抱える家庭には飲料水や浄水資材を届けます。水や衛生分野で活動するほかの機関とも協力し、ユニセフは食料の不足している地域の水質と量を改善し、さらにコミュニティのレベルで衛生意識を向上させる活動を行っていきます。

<子どもの保護>
大規模な食糧支援が行われる中で未成年や女性が性的搾取や虐待の被害に遭わないよう、ユニセフは協力パートナーや国連職員、政府担当者、そして地域社会の人々に対し、行動指針に対する意識喚起を行います。

<モニタリング>
ユニセフは、次のような項目に関連する重要な指標をモニターしていくために、評価手段の開発をしています。
a)栄養治療センターへの効率的な食糧供給、b)栄養治療センターでのケアの質、c)母乳育児の推進と保護、d)被支援者の栄養状態、e)ビタミンAや他の微量栄養素の補給率を含む子どもの健康・予防接種状態、f)被害の出ている地域の水と衛生ニーズ、g)食糧危機の社会サービスへの影響、h)食糧危機の関連する人口の移動、i)家を追われた家族の保護の問題
政府機関、ユニセフスタッフ、そして協力パートナーはチームとして被害を受けた地域に赴き、状況をモニターすると同時にこれらの指標を収集、報告します。

6. 活動プログラム

政府機関、国連機関、NGOとの協力のもと、ユニセフは次のような具体的な活動を実施します。

  • 16万人いる中度栄養不良の子どものための栄養治療食(ユニミックス4,000トンと油40万リットル)や計測機器を調達、配布します。
  • 32,000人いる重度栄養不良の子どもたちのための栄養治療食(プランピーナッツ13,000箱、治療用ミルクF100を366箱)および基礎医薬品、ワクチン、蚊帳、ビタミンAカプセル、鉄分と葉酸のサプリメントを調達、配布します。
  • 追加の栄養治療センターを設置し、保健員に対し重度栄養不良の子どもへの対応を研修します。
  • 地域レベルでの身体測定調査を支援したり、栄養不良児を早期発見し栄養治療プログラムへ紹介するための推進チームを支援、研修します。
  • 特に母乳育児などの子どもの栄養補給、開発、保護の原則について、母親、ケア要員、地域の主要メンバーに助言します。
  • 150の穀物銀行をつくり、150のコミュニティにその運営方法を研修します。
  • 厚生省の職員やNGOのスタッフの栄養プログラム運営能力を強化します。
  • 50の女性グループに種子類を配布します。
  • 栄養不良児をかかえる家庭に水・衛生キット(浄水剤、缶、石鹸など)を提供します。また、家族に対し水の浄化や保存に関する研修をします。
  • 食糧不足に陥っている地域の水と衛生状況を調査し、雨季後に開始する水供給や衛生施設、衛生習慣の改善計画を策定します。
  • 協力パートナー、国連職員、政府職員に対し、特に性的搾取や虐待に関連する人道的行動指針を広めます。
  • モニタリング、評価、報告のシステムを確実にします

7. 活動規模拡大に伴う必要資金

活動・支援物資

必要額

治療用食と非食糧物資の運搬、配布

$8,700,000

栄養不良予防のためのコミュニティ研修

$250,000

穀物銀行の貯蔵品、種子類、灌漑農業のための必需品

$1,000,000

栄養分野の技術支援

$200,000

基礎医薬品、身体測定機器、蚊帳、ワクチン、ビタミンA、他微量栄養素

$1,000,000

保健分野での技術支援

$150,000

水/衛生調査、家庭用キット、研修

$800,000

水と衛生分野の技術支援

$150,000

国内の調整業務

$500,000

調査、モニタリング、評価

$200,000

コミュニケーション

$100,000

プログラム支援にかかる間接費

$1,566,000

合計

14,616,000