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エボラ出血熱緊急募金 第10報
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© UNICEF Guinea/2014/Timothy La Rose |
エボラから回復したカディアトゥさん。 |
ギニアではエボラ出血熱の感染が多く報告されています。エボラに感染した女性から話を聞いた、ユニセフ・ギニア事務所のティモシー・ラ・ローズ広報官からの報告です。
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ギニアでエボラ出血熱の感染が確認されてから間もない頃は、まるで悪夢の中にいるように、耳にするニュースはすべて暗いものでした。しかし、ユニセフ・ギニア事務所には、当時の深刻な状況下では決して起こりえないとも思われていたことが、報告され始めました。それは、エボラ出血熱に感染した人々が回復し、病院から退院し始めたという知らせでした。健康を取り戻した患者には、感染の危険はなく、普段通りの生活を送ることができると記された、保健局の署名入りの証明書が発行されました。
エボラに感染した人のなかには、生存者もいることは知られています。しかし、エボラが発生して間もない頃は恐怖に苛まれ、そのような楽観的な考えはすべてかき消されていました。極めて高い致死率や、首都や国境を越えた隣国へのウイルスの急速な蔓延ばかりが取り上げられていました。あたりに広がる恐怖感で、この地で働き、生活をする私たちは精神的なエネルギーを失っていました。
しかし、エボラに感染して衰弱していたにもかかわらず、隔離病棟から健康な姿で家に戻ることができる患者もいます。当初予想されていた、数名の幸運な人々だけではありません。30%以上の患者が回復しているのです。
このことがメディアに取り上げられると、エボラ出血熱からの生存者は偏見に晒されました。記者は、生存者の人々が職場や学校、家庭で疎外されていると報道しました。しかし、その偏見もすぐに解消され、多くの生存者たちはあたたかく迎えられて、元の生活に戻ることができています。
© UNICEF Guinea/2014/Timothy La Rose |
保健局から発行された、エボラから回復して健康を取り戻したという証明書。 |
私たちは、エボラから回復した女性と話をすることができました。カディアトゥさんはギニアでエボラの感染が確認された初期の患者です。コナクリの大通りで彼女と待ち合わせて、子どもたちがサッカーをして遊ぶぬかるんだ道を通って、彼女の家を訪れました。カディアトゥさんの母親が洗濯物を乾かしている隣で、私たちはプラスチックの椅子に座り、向かい合って話をしました。
「どこで感染したのか、全く分かりません」カディアトゥさんは、エボラの治療の一環として提供された、ペースト状の治療食を食べながら語ります。このペースト状の治療薬は、通常、緊急栄養補助食として、重度の急性栄養不良で苦しむ何千人もの子どもたちに、ユニセフが提供しているものです。エボラに感染すると、嘔吐や下痢でたくさんの栄養や水分を失います。この治療食が、体力の回復を手助けするのです。
「私は医学生なので、仕事でたくさんの患者と接触します」
カディアトゥさんの身体にはまず、多くの病気と同じように頭痛や高熱の症状が表れ、その後、下痢や嘔吐が始まりました。しかし、医学を学んでいたカディアトゥさんの知識が、看病をしていた人たちへの感染の拡大を防ぎました。「叔母が私の嘔吐物を片付けてくれましたが、必ず手を洗い、塩素消毒するように伝えていました」
ユニセフはエボラから住民を守るため、多くの支援物資を提供しています。これまでに提供した物資は、消毒用の塩素35万ボトルや約100万本の棒状石鹸、病室や感染者の家を殺菌するためのものなどです。
エボラ出血熱の検査を受けた数日後、カディアトゥさんは隔離病棟に入院しました。隔離病棟はとても混み合っており、入院している親せきに食べ物を持ってくる家族もいました。「たくさんの記者もいました」と、カディアトゥさんが語ります。
「当初、エボラ出血熱の患者はみんな同じ部屋にいました。しかし、しばらくすると症状が回復した人たちが、私たちと別の部屋に移されていきました。私はその時初めて、エボラに感染しても生き延びることができるのだと、知りました。入院してから数日間は絶望的な時を過ごしましたが、私も生きてここから出られるかもしれないと思いました。たくさんミネラルウォーターを飲み、点滴を受けました。きっと、そのおかげで回復することができたのだと思います」
数週間の入院でしたが、カディアトゥさんにとってはとても長い時間だったことでしょう。カディアトゥさんは新しい服やエボラから回復したという証明書をもらい、退院することができました。
広く報道されている、生存者に対する偏見についてカディアトゥさんに話を聞きました。「学校に戻った時、何人かは私を避けていました。でも、今はそのようなことも減りました。私がエボラに感染していたと、信じない人々もいます。エボラに感染しても回復して健康を取り戻すことができる、という事実そのものを信じないのですから」
しかし、エボラに感染したという事実は、カディアトゥさん自身が一番分かっています。ユニセフは、エボラに関する正しい情報や予防法を伝える活動に力を入れています。市場やモスク、教会、学校で啓発活動を行い、ラジオやテレビでも情報を伝えています。そうすることで、保健員や住民が正しい知識を得て、エボラから身を守ることができるのです。ユニセフはパートナー団体と協力し、これまでに320万人に支援を実施しました。
「私のことを、『生まれ変わったカディアトゥ』と呼ぶ人もいます。私はもう一度、生きるチャンスをもらったのです」
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