公益財団法人日本ユニセフ協会
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アフリカ干ばつ緊急募金 第46報
チャド:栄養危機が蝕む12万7,000の命

【2012年2月15日  チャド発】

© UNICEF/NYHQ2012-0047
/Olivier Asselin
マオ西部のユニセフの倉庫で、すぐに口にできる栄養治療食について説明を受けるミア・ファローユニセフ親善大使。

チャド西部のマオ市から望む地平線は、土埃で覆われています。アフリカ・サヘル地域の中央部に位置する内陸国のチャドでは、何年も雨が降らず、過去4回の収穫期も全て不作が続きました。この影響をまず受けたのは動物たち。多くの動物の死骸が、国中で見られています。そして今、子どもたちが同じ危機に直面しています。

サヘル地域8カ国で、子どもたちは「栄養危機」の犠牲になっています。今年、推定100万人の5歳未満の子どもたちが、死に至る危険のある重度の栄養不良に陥る恐れがあります。チャドだけでも、その数は12万7,000人に上る見込みです。

増え続ける栄養不良

© UNICEF/NYHQ2012-0053/Asselin
チャドのシア地域にある避難民キャンプに暮らす女性と話すミア・ファローユニセフ親善大使。

マオには、泥壁づくりの小屋をいくつかまとめて、子どもたちの栄養不良を治療する目的の給食センターが設置されていましたが、最近増え続ける栄養不良の子どもたちに対応するため、この埃っぽい場所に、白いテントが新たに数基設置されました。このテントには、お腹を空かせて泣く乳児が溢れていますが、最も重篤な状態の子どもたちはとても静かです。衰弱が酷く、泣くこともできないのです。

アワ・アバカルさんは、2週間前に息子を連れてこのセンターにやってきました。下痢に苦しむ息子さんの体重は、急激に低下してしまいました。

「下痢と高熱に苦しんでいました。頭には、かさぶたができていました。」「ですから、家の近くにあるビラ保健センターに連れて行ったのです。そこでは、2つの注射を打たれ、もっと大きなトゥラ保健センターに連れて行くように指示されました。そのセンターで、重度の栄養不良と診断され、ここに来たのです。」アブカルさんはこのように話しました。

アブカルさんの息子さんは、それでも幸運な子どものひとりでした。手遅れになる前に集中治療を受けることができたのです。息子さんの容態は、現在、回復に向かっています。

こうした問題の背景にあるもの。それは、単に作物が出来ないという問題ばかりではありません。長年にわたる武力紛争と政情不安が、この国の保健医療制度を崩壊させてしまったのです。また、チャドは、安全な飲料水とトイレの利用率が、世界でも最下位に位置する国のひとつです。こうした状況が、下痢性疾患や栄養不良を引き起こしているのです。また、母乳育児の知識の欠如や子どもたちの心身の健康に有害な伝統的慣習も、この国の子どもたちを、最も厳しく、弱い立場に置いている一因になっています。

サヘルの窮状を伝えるために

ユニセフは、チャド政府やパートナー団体と共に、現在進行しつつあるこの「栄養危機」の状況把握を進めつつ、支援活動を続けています。重度の急性栄養不良に陥っている6万8,000人の5歳未満の子どもたちが、マオはじめ全国に設置されているユニセフが支援する栄養不良治療用の給食センターで治療を受けています。

今月、ユニセフのミア・ファローユニセフ親善大使が、栄養危機に見舞われつつある土埃の舞うチャドの町を訪れ、治療用給食センターの活動を視察しました。ファロー大使は、母親たちに話しかけ、栄養不良で苦しんでいる子どもたちを優しく元気づけました。ファロー大使がチャドを訪れたのはこれで14回目。ユニセフ親善大使としては、3度目の訪問になります。

ファロー大使は、かなり状態が回復した赤ちゃんを腕に抱きながら、次のように話しました。「今回でチャドに来たのは14回目になりますが、今回の訪問は、今までとは違っています。(この国で)急性栄養不良の赤ちゃんを見たのは、今回が初めてです。」「私が今いるチャド西部も含めて、サヘル地域の8つの国で、100万人以上の赤ちゃんが、今後数ヵ月間、飢えに苦しむ危険があります。支援がなければ、私の腕の中にいるこの小さな女の子の命も失われてしまうかもしれないのです。」

今直ぐに必要な支援

ファロー大使は、ユニセフの緊急支援物資を一時保管している倉庫も視察。この倉庫には、カネム全域に配布予定の必須栄養補助食品が保管されています。こうした物資が天井近くまで積み上げられている倉庫ですが、多くの子どもたちへの支援が必要な現状では、すぐに空になってしまいます。

「子どもたちの命を守る治療用の栄養補助食品が、(現時点の計算上)3ヵ月分保管してあるユニセフの倉庫を見ることができて、とりあえず安心しました。」「でも3か月分は、十分な量ではありません。」(ミア・ファロー ユニセフ親善大使)

また、ファロー大使は、国連食糧農業機関(FAO)が、小さなオアシスをつくるべく、砂漠で玉葱やじゃがいもなどの作物を育てている事業の一環としてマオ郊外に作っている“庭園”も訪問しました。こうした取り組みは、将来、栄養問題に対する持続可能な解決策となる必要不可欠なものとなるはずです。

視察を終えたファロー大使は、ユニセフが、悪化の一途を辿っていると懸念するこの危機に対する支援を、次のように訴えました。

「サヘルの危機は、世界では、まだ殆ど報道されていません。」「しかし、支援が今届かなければ、(子どもたちの命を救う)望みが断たれてしまします。」