公益財団法人日本ユニセフ協会
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アフリカ干ばつ緊急募金 第73報
チャド:緊急かつ長期的視野に立った支援

【2012年6月4日 チャド発】

© UNICEF video
チャド西部カネム地域のノコウ病院に入院している生後8ヵ月のエレタちゃんの体重はわずか2.6キロ。雨不足は、サヘル地域一帯に及ぶ。チャドは、母乳育児を実践する割合が世界で最も低い国のひとつ。

「上の子どもたちは、生まれて8ヵ月後には歩くことができましたが、エレタは違うんです」 エレタちゃんの母親のザイナボウ・ママタヤさんは、こう話しました。チャド西部カネム地域のノコウ病院に入院している生後8ヵ月のエレタちゃんの体重は、2.6キロしかありません(注:日本では、7〜10kg程度)。

カネムは、アフリカのサヘル地帯を襲う食糧危機と栄養危機に苦しめられている地域のひとつです。雨不足と農作物の不作の影響で、チャドの人々の間に広まる深刻な栄養不良は、今年初めから、更に深刻化し続けています。

こうした状況に苦しめられているのは、エレタちゃんだけではありません。何千人もの子どもたちがエレタちゃんと同じような状況に置かれているのです。ユニセフは、(このままの状況が続けば)今年、チャドだけで、12万7,000人の子どもたちが重度の急性栄養不良に陥るものと見込んでいます。このため、ユニセフは、この地域の病院や保健センターへの支援を拡大。栄養不良の子どもたちのために治療用の支援物資を提供しています。

病院に入院してから2週間。エレタちゃんは回復に向かっていました。体重も500グラム増加。「今は、エレタにミルクを与えると、普通に飲んでくれます。体重も増えましたし、回復していることがよく分かります。もうかつての(深刻な)状況は脱しました」(ママタヤさん)

子どもたちを守る母乳育児

© UNICEF video
チャドの母親たちに母乳育児の恩恵について説明する地域の保健推進員。

ユニセフは、栄養不良の根本原因に対処するため、予防策の普及にも力を注いでいます。「チャドの人々は、(普段から)バランスの良い食事を取っていません。主に食べているのはシリアル(穀類)です。(多くの)お母さん方は、完全母乳育児という発想はないと思います・・・」ユニセフ・チャド事務所のロジャー・ドディノウ栄養担当官はこう話します。

チャドは、母乳育児が実践される割合が世界で最も低い国の一つで、その割合は100人中わずか3人。一方、5歳未満の子どもの死亡数のおよそ13パーセントは、母乳育児の実践で予防することができるとされています。また、チャドの多くの子どもたちが、下痢性疾患や他の病気を引き起こす原因にもなり得る不衛生な水を利用せざるを得ない状況に置かれています。

「出産直後、生まれた子どもには、(母乳ではなく)水や、少量のキビ(雑穀)を煮込み、油を足した白湯を与え始めました」「これが祖母から続く伝統的な方法でしたから。本当に、理由なんて分かりません」ママタヤさんは、こう語ります。

健やかな成長のために

ユニセフは、パートナー団体の国際NGOと密接に協力して、各地の農村で、母乳育児の普及のため、その恩恵について村人たちが話し合える場づくりの支援もしています。村人自身が進行役を務めるこうした集会では、母乳育児を実践している母親たちが、自らの経験を、他の女性たちに伝えています。

「(確立された)理論があるならば、それは、実践されなければなりません」 この村の中で行われている様々な保健分野の活動をまとめているアチャタ・マハット・セレーさんはこう話します。

「村人が持つ信念や伝統的な慣習を変えるには、時間がかかります。そうした問題を解決するためには、村人の生活を改善させるための計画に基づいた活動が必要です。そうした活動の第一段階は、村人自身が必要な技術を向上させられるようにすること。そして、村人が、自らの食生活(食事内容)を改善できるよう、社会的な体制を整えることが求められます」(ディノウ栄養担当官)

チャドをはじめとするサヘル地域を襲っている栄養不良危機には、いくつかの根本原因があります。また、子どもたちの間に広がる栄養不良を削減する方法も数多くあります。現在、食糧危機に直面している中で、目の前の子どもたちの命を救うことが最優先事項であることは言うまでもありません。しかし、社会開発を視野に入れた長期的戦略も不可欠です。そうした戦略が、これから先、長期にわたって、子どもたちの命を守り続けられる環境をつくることに繋がるのです。