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アフリカ干ばつ緊急募金 第81報
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ナイジェリアのギシライナ村に暮らす重度の急性栄養不良に苦しむマリアムちゃん(1歳4ヶ月)と母親のハウワ・ヌラさん。 |
ナイジェリア北部に、恵みの雨が降りました。沢山の"ギニアコーン"と呼ばれるトウモロコシの茎が、土からそっと顔を出しています。
地元の農家の人々は、今年は良い収穫が期待できると楽観的です。しかし、カツィナ近くの診療所は、診察の順番を待つ数百人の子どもたちで溢れています。重度の急性栄養不良の治療を受けに来ているのです。
「子どもたちは、お腹が空いているわけではありません」「不適切な食事が原因なのです」カツィナ州政府のラビア・モハメド栄養担当チーフはこう話しました。
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カツィナ州の外来治療センターの外で順番を待つ人々。 |
ナイジェリアでは、現在、25万人近くの子どもたちが、重度の急性栄養不良で命の危険にさらされていると推定されています。
この地域に住む人々は、主にギニアコーンなどのトウモロコシと米を食べています。これらの食品には、炭水化物は豊富に含まれているものの、子どもが必要とする他のさまざまな栄養素を摂取するには十分ではないのです。
こうしたことが原因で、現在、何千人もの子どもたちが、外来治療センターで治療を受けています。ユニセフは、子どもたちの急性栄養不良問題をコミュニティ管理(CMAM)と呼ぶ統合保健戦略の一環として進めていて、こうしたセンターの運営も支援しています。
子どもたちは、センターの"待合室"となっている木の下で順番を待っています。全員が、急性栄養不良の典型的な症状を示していました。手足のむくみやたんぱく質欠乏症の明らかな兆候を示す子、また、慢性的な下痢、嘔吐に苦しむ子もいます。しかし、継続的な治療は、病院への入院という形ではなく、子どもたちが住む地域の中で行われています。
子どもたちは、定期的に体重が測定され、医薬品や栄養補助食品を提供されています。お母さん方には、栄養や衛生についての知識が提供されています。予防接種を受けられなかった子どもたちのために、このセンターでは、予防接種の機会も提供されています。
現在までに、このプログラムによって治療を受けた5歳未満の子どもたちの数は、1万6,000人。カツィナ州では、3万1,000人の子どもたちに支援を届けることを目標としています。この州の取り組みは、他の地域のモデルなっています。
「5歳未満の人口の20パーセントに手を差し伸べている、こうした統合戦略は非常に重要です」ユニセフと共に活動している地方政府のイブラヒム・ラワル・ダンカバ氏はこう話しました。
診療所の外に集まっている子どもたちの全ての家庭が、農業に従事しています。
他の人々と同様、ラワル・ラマトゥさんは、収穫量の半分を売り、残りを備蓄していました。しかし、その量は、一家が生き延びて行くためには十分な量ではなく、重度の急性栄養不良と診断されたばかりの生後10ヵ月の息子のサイドウちゃんに適切な食事を与えることも十分にはできません。 乳児の母親は、病気を予防するために完全母乳育児を薦められています。しかし、この地域の伝統として、赤ちゃんに、例え清潔な水が手に入らないようなときでさえ、水も同様に与えることが促されているのです。
「完全母乳育児を実践していないことが大きな問題です」「貧困は、事態を悪化させています。ですから、知識の不足が、更なる病苦につながるのです」(モハメド栄養担当チーフ)
ナイジェリアでは、7人に1人が5歳の誕生日を迎えられません。栄養不良は、その大きな要因となっています。 サイドゥさんは、定期健診のために外来治療センターに子どもを連れて行くよう促す地元コミュニティの保健員と共に、今後8週間、CMAMプログラムを実践する予定です。
ユニセフは、国の北部にもこうしたプロジェクトを拡大するために活動しています。しかし、資金不足によって、こうした活動が制限されています。また、物流面での課題も残されています。
治療用センターからさほど離れていない備蓄倉庫は、現在は、最近届けられた治療用食品がいっぱいに保管されています。しかし、ここから南に数百マイル離れたラゴスの港での作業が遅れたために、命を守る食料がこの倉庫に(必要な時に)届けられなかったことも多くあるのです。
ナイジェリアは、アフリカで最も人口の多い国です。この国の栄養危機の問題は、世界で話題となることはありません。しかし、支援がなければ、信じがたいほどの影響を与える事態になりかねないのです。