公益財団法人日本ユニセフ協会
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アフリカ干ばつ緊急募金 第86報
ニジェール:栄養危機とコレラの流行の中、最悪の洪水被害に対応するユニセフ

【2012年9月5日 ニジェール発】

ニジェールの首都ニアメ郊外のニジェール川沿いに位置するサランド・ガンダ村では、土壁でできた多くの家屋が倒壊、あるいは深刻な被害を受け、村の70パーセントの人々が住む家を追われました。

洪水の被害を受けた数百人が、学校に避難しています。ある暗い教室の中では、子どもと女性がマットの上に座り、わずかなスペースを共有して利用していました。どこの教室にも、マットレス、椅子、テーブルや被災者の持ち込んだ僅かな所持品で溢れかえっています。

豪雨による多くの犠牲者

ニジェールは、過去数週間にわたり続いた豪雨の影響で、家屋と作物は浸水。国内で、死者52人、40万人近くの人々がこの影響を受けました。洪水被害に見舞われた人々は、サランド・ガンダ村のケースように、近くの学校や教会、モスク、また親戚の家に避難を強いられています。

最も深刻な影響を受けたのは、ニジェール川沿いの地域です。現在、サランド・ガンダ村をはじめとするこうした地域は孤立し、アクセス手段はボートしかありません。

この洪水被害は、もうすぐ収穫の時期を迎えようとしている矢先の出来事でした。サランド・ガンダ村は、あたり一面に野菜畑や果樹園が広がり、通常ならば、この村で収穫された作物は、一年を通してニアメの市場に出荷され、取引されます。しかし、洪水の影響で作物は流され、穀倉庫の備蓄も、何もなくなってしまいました。

© UNICEF Niger/2012/Therrien
ニジェールのサランド・ガンディ村を襲った洪水により、崩壊した家屋の中に立つアブドゥハマン・カリモウさん(62歳)。

「このような壊滅的な洪水は、今まで見たことがありません」こう話すのは、アブドゥハマン・カリモウさん(62歳)です。カリモウさんは、サランド・カンダ村で暮らしていた自宅と5つの備蓄倉庫、また、その他の所持品も全て失いました。

「全ての作物がだめになってしまいました。ここには食べるものが何もありません。子どもにとって、(食べるものがないことは)とても苦しいことです」サランド・ガンダ村のリーダーであるセイニ・ハマンドウ・サニさんはこう話しました。「また、子どもたちは、特に下痢性疾患やマラリアに陥りやすいのです。1週間のうちに、53人がマラリアに感染しました。治療を受けるため、近くのボウボンやコウムバにある診療所まで、ボートで急送しました」 サニさんは、もし緊急に食料支援を受けられなければ、既に下痢性疾患やマラリアにより衰弱している子どもたちは、栄養不良に陥ることになると、警告しています。

不確かな未来

© UNICEF Niger/2012/Therrien
僅かな所持品を持った女性と子どもたちを乗せたボート。サランド・ガンダ村とその他の地域は、洪水の影響で孤立している。

「この地域の人々は、勇敢で、働き者です。厳しい状況に置かれている彼らを目にするのは、心が痛みます」ユニセフ・ニジェール事務所のアマドウ・ティンニ物資支援担当官はこう話します。「近くに水があることは、村の利点でした。そのおかげで、1年を通して、さまざまな野菜や作物を育てられたのです。でも、今は、作物も、収入源も、何もかもなくしてしまいました」

まだ若い父親のアダモウ・ジボさんは、野菜を売って家計を支えています。しかし、洪水に見舞われ、家も作物も失いました。「ここでは、何の安全も保障されていません。誰もが自分たちの家や畑に戻りたいと思っていますが、それがいつになるのかも分かりません」ジボさんはこう説明します。

さまざまな危機

洪水に襲われる以前より、ニジェールは、現在も継続している食糧危機と、隣国から避難してきた難民や、国内避難民の対応に直面していました。

ユニセフとパートナーは、今年、39万4,000人の5歳未満の子どもたちが重度の栄養不良で治療が必要になると推定しています。

マリでの紛争により避難を余儀なくされた人々が、ニジェールに避難し続けています。現在、5万7,000人の難民及び国内避難民が、食糧危機の最も深刻な影響を受けている地域を含む全国のさまざまな地域で避難生活を強いられているのです。

また、雨期に入り、全国各地でコレラが流行しています。特に、ティアベリ地域のニジェール川沿いに位置する村落は、食糧危機の最も深刻な影響を受けた地域のひとつです。

さらに、マラリアの流行が、拡大し続けています。過去数週間で、感染者数は3,671人、死者は80人と報告されています。この洪水被害により、さらに感染が拡大し、状況が悪化することが懸念されています。

支援の継続

過去数年間で最悪の洪水被害に見舞われているニジェールで、ユニセフは、パートナーと協働して、洪水の影響を受けた人々の緊急のニーズに対応する緊急支援を展開しています。洪水による深刻な被害を受けた地域のひとつ、ドッソでは、6万人以上が被災、1万棟の家屋が崩壊しました。ユニセフは、毛布、ビニールシート、調理器具、蚊帳、また、石けんやバケツ、生活必需品といった衛生用品を配布。サランド・ガンダ村には、水を媒介とする疾患から子どもたちやその家族を守るために浄水剤が配布されています。

しかし、支援物資や避難場所の提供、倒壊したり、破損した学校の修繕など、今後数週間から数ヵ月間でやらなければならないことが山積みとなっています。

ユニセフは、ニジェール政府を支援し、パートナーと共に、ニーズの確認を進め、優先順位を明確にし、洪水の影響を受けたコミュニティを支援し続けるための命を守る支援物資を手配しています。また、ユニセフは、パートナーと共に、被害を受けた人々が復興し、再び元の生活を取り戻すために、国際社会にさらなる支援を訴えています。

ニジェールでは、雨期はまだ終わっていません。さらなる洪水被害の恐れも懸念されています。