公益財団法人日本ユニセフ協会
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アフリカ干ばつ緊急募金 第95報
ニジェールより「日本のみなさん、ありがとう」

【2013年10月2日 ニジェール発】

© UNICEF Niger
日本からの支援物資(ユニセフ・ニジェールFBページより)

2011年夏、ソマリアなどの「アフリカの角」地域から始まった干ばつと食料価格の高騰。その影響は、サヘル地域と呼ばれるサハラ砂漠周辺の国々にも広がり、多くの子どもたちが深刻な栄養不良で命の危機に瀕しました。

日本ユニセフ協会は「アフリカ干ばつ緊急募金」の受付を開始、多くの方からあたたかいご支援をお寄せいただきました。みなさまのご支援を受けて、ユニセフは、重度の栄養不良にかかっていた85万人もの子どもたちへの治療などの支援を行ってきました。みなさまのご支援に、心よりお礼申し上げます。

サヘル地域に位置するニジェール。国土の半分以上をサハラ砂漠が占めるこの国は、自然環境の厳しさもあいまって、子どもの死亡率が高い国のひとつでもあります。多くの子どもたちが栄養危機に瀕したニジェールより、日本からの支援に対する感謝のメッセージが、ニジェール事務所のFacebookページで公開されました(2013年10月2日の投稿)。

「ニジェールでは、子どもの生存のための支援活動が大きく広がり、ミレニアム開発目標4“乳幼児死亡率の削減”の達成に向けて前進しています。このような前進は、日本のみなさま、継続して支援してくださる方々のおかげです。先日もニジェール・公衆保健省は、日本から500万米ドルのご支援をいただきました。

公益財団法人日本ユニセフ協会を通じて、息の長いご支援を下さる日本のみなさま、およびJICAのみなさまに、感謝を申し上げます。」

■ 飛躍的な改善

ニジェールの5歳未満児死亡率は、飛躍的な改善を遂げています。1990年には1000人当たり314人の子どもたちが5歳の誕生日を迎えられないまま亡くなっていましたが、2011年には半分以下の125人まで減少しました。この改善の背景にはさまざまな取り組みが関わっていますが、その中でも、ニジェール政府が特に長年かけて取り組んできたことは、栄養分野における取り組みです。

ニジェールは、その地域特性から、過去に何度も干ばつなどの自然災害により大きな影響をうけてきました。子どもたちは以前から慢性の栄養不良に苦しめられていましたが、特に干ばつが起こると、収穫不足による食料不足が子どもたちの栄養状態をさらに悪化させ、重度の急性栄養不良に陥る危険性があります。2010年のサヘル周辺で起きた大規模な干ばつ危機も、例外ではありませんでした。

しかし、2005年の大規模な干ばつで教訓を得たニジェール政府は、ユニセフとそのほかの人道支援機関の協力のもと、国の保健ケア制度の強化を優先して図りました。 ユニセフは、重度の急性栄養不良を治療するための栄養補給センターを拡充し、全国各地の病院にいる、重度の栄養不良に苦しむ子どもたちを治療するための物資や機器を提供、また、衛生的な水や衛生施設(トイレ)を利用できるようにし、移住してきた女性や子どもへの支援を行い、基礎的な衛生・保健・栄養に関する慣習を母子が実行できるよう、コミュニティを中心とした事業を支援してきました。

表:ニジェールの5歳未満児死亡率 (出生1000人あたりの死亡数であらわす)

  1990年 2011年
5歳未満児死亡率 314人 125人
1歳未満児死亡率 133人 66人

■命を守る取り組み

今年6月世界的医学雑誌『ランセット』を通じてユニセフは、5歳未満の子どものうち、栄養に関する原因で亡くなる子どもたちは年間310万人、もしくは、5歳未満児の死亡原因の45%にあたることを発表しました。また、在胎期間に対して小さく生まれた子どもたちは、死亡するリスクが大きくなることも、研究によって、明らかになりました。低中所得国では、低体重で生まれる子どもたちは出生数の4分の1以上を占めています。

アンソニー・レーク ユニセフ事務局長は「発育阻害は、子どもの人生の機会と国家の発展の機会、両方を奪うものです」と訴えます。

発育阻害になると、年齢に比べて身長が低いことに加え、脳の発達や認知機能を大きく阻害する恐れもあります。発育阻害によってダメージを受けた子どもの体と脳への影響は一生涯続き、その後のその子の学業や勤労収入に影響を及ぼします。発育阻害は、個人の抱える問題だけでなく、しばしば国家の発展を阻み、世代から世代へと引き継がれる問題でもあるのです。また、発育阻害の子どもは、発育阻害でない子どもに比べ、感染症で命を落とすリスクも高まります。

これまで、発育阻害の問題はほとんど報告されておらず、そのために人々に知られたり、理解されたりすることが最も少ない問題のひとつです。実際に、世界の5歳未満の子どもの4人に1人が成長における重要な時期に慢性的な栄養不良に陥り、発育阻害となっています。

■ 「大切な、はじめの1000日間。」〜お母さんのおなかの中から2歳まで〜

ユニセフは、4月に発表した報告書『子どもの栄養状況の改善−世界の進展のための果たすべき義務(原題:IMPROVING CHILD NUTRITION: THE ACHIEVABLE IMPERATIVE FOR GLOBAL PROGRESS)』において、発育阻害を防ぐためには、妊娠から2歳の誕生日を迎えるまでの3年間−つまり、人生の最初の約1000日−への関心を高め、集中的に取り組む必要性があることを強調しています。そして、母乳のみの育児の促進や微量栄養素の欠乏症を周知すること、妊娠前と妊娠中の栄養状況の改善など、すでに行われている取り組みによって、栄養不良が減少できることに注目しています。

母親のおなかの中にいるときから2歳になるまでの1000日間は、子どもの命が次々に危機にさらされる期間です。子どもたちの命と成長を守るには、この時期に必要な支援を途切れなく続けていかなくてはなりません。

* * *

今回ニジェールから届いたメッセージのように、日本のみなさまによる息の長い支援が、確実に世界の子どもたちの命を守る活動を支えています。現在、ユニセフ・マンスリーサポート・プログラムではキャンペーンを行っています。世界中のすべての子どもが5歳の誕生日を笑顔で迎えられるよう、ユニセフは活動しています。

※参考情報

<発育阻害>
発育阻害は、生後1000日の間に慢性的な栄養欠乏に陥ることで引き起こされ、脳と体の成長に一生涯に渡る影響を及ぼします。発育阻害になると、年齢に比して身長が低いことに加え、脳の発達や認知機能を大きく阻害する恐れもあります。

<栄養不良>
体が必要とする栄養が不足している状態を指します。 身体の成長に欠かせないたんぱく質や、免疫力をつけるビタミンAなどの栄養素が足りないと、風邪や下痢などごくありふれた病気が原因で命を落とす危険が高まります。 また、知らず知らずのうちに子どもの知能の発達を遅らせることさえあります。 目に見えにくく、ひそかに子どもたちの未来と命を脅かします。

報告書「Improving Child Nutrition: The achievable imperative for global progress」PDFダウロードはこちらから [5.84MB] »