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ガザ人道支援 第15報
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武装勢力により破壊された教室 |
2009年、ガザは1967年以降最大の武力衝突で始まりました。1月18日の停戦まで、イスラエル軍の「キャスト・リード作戦」はガザの子どもたち350人を含む1400人余を殺戮し、何千人もの人々を傷つけました。学校約280校、医療施設のほぼ半数、主要な上下水道が損傷し、破壊されました。
3500軒以上の家屋が崩壊。そのほかにも約5万軒が何らかの影響を受けました。2007年6月に起きたイスラエル包囲網により、限られた基本的な人道支援物資のほかは何もガザに入ってこなくなったため、何千世帯もの家庭が1年間にわたり、瓦礫と破壊されたインフラの中での生活を余儀なくされています。「キャスト・リード」以降、ガザに入ることが許可されたのは、トラック41台分の建設資材(包囲網前の流通量の0.05%)だけです。
家屋を再建するセメント、粉々になった窓を入れ替えるためのガラス、壊れた上下水道を修復するパイプはほぼ入手不可能な状況です。家や学校、医療施設を修復するための資金7700万米ドルをかけて行われる国連プロジェクトは、物資がないために実施が難航しています。ガザの公式経済はほとんど機能しておらず、人々は安全な飲料水、栄養のある食品、医薬品のない状態を強いられているのです。
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学校の再開を祝う子どもたち |
2009年、西岸地区全域で暴動が激増し、東エルサレムを含む各地でパレスチナの人々が住む家を追われました。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、2009年1〜8月の間に西岸地区のパレスチナ民間人やその資産、礼拝所を対象にした事件は217件報告されています。なかには、不法な開拓地を破壊するイスラエル当局の攻撃に乗じ、パレスチナの社会に身体的な負傷を負わせ、資産を破壊する攻撃もありました。11月、OCHAは、83地区に住む約25万人のパレスチナ人がこのような報復攻撃で、暴力の高いリスクに直面していると警告しました。
ユニセフは、学校での暴力を廃止する法律を作るため、教育・高等教育省(MoEHE)と協力して活動を行っています。2009年にガザとエルサレムにあるパレスチナ自治政府の学校、私立校および国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の学校93校で、政策案とガイドラインの試行が行われました。この試行で得られた経験をもとに政策案がまとめられ、2010年にはすべての学校に拡大して実施される予定です。
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8月の国際青少年デーを祝う子どもたち |
ユニセフの事業プログラムは、水と衛生事業(WASH)、子どもの生存と発達、子どもの保護、教育、若者の発達と参加を焦点に実施されています。ユニセフはガザへの緊急対応のなかでWASH、教育、子どもの保護、栄養分野で人道支援活動の主導的役割を果たし、WHOとの協力では精神衛生と心理的な支援を行いました。対策活動の主導的役割とは、緊急対応において効果や予測、アカウンタビリティを改善する一手段として、それぞれの領域で人道支援にかかわるアクターの計画作成や活動を調整することです。
WASH:「キャスト・リード」の最中やその直後に、ユニセフのWASHプログラムではパートナーと共に、弱い立場にある人々に衛生用品や安全な飲料水を配布しました。またガザの水道事業に対しては、破損した上下水処理施設を作動させるためのジェネレーター、塩素、緊急用燃料のために支援しました。
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適切な手洗いの方法をダンスで見せるガザの子どもたち。 |
子どもの生存と発達:ユニセフは「キャスト・リード」の最中やその直後に、ガザの新生児施設6ヵ所に対し、子ども4万人分の緊急医薬品と産科用器具を提供しました。保健省やUNRWAとの協力で、はしか・おたふく風邪・風疹の予防接種キャンペーンを展開し、予防接種を受けていない7年生と9年生の11万7000人の子どもたちに予防接種を実施しました。また地域の草の根組織であるArd El Insan(人間の大地)とともに、中度および重度の栄養不良児を対象にした治療的な栄養支援を行う給食センターを4ヵ所設立。6ヵ月間にわたり微量栄養素の補助食品を提供しました。80人のヘルスワーカーには、急性の重度栄養不良の治療に関する訓練も実施し、2009年にユニセフが保健省とともに行った予防接種活動の結果、乳幼児12万人が3種混合とインフルエンザb型の予防接種(普及率は97%)を、また5万1000人余の妊婦が2回にわたって破傷風の予防接種を受けました。ポリオ、はしか、破傷風の根絶が目標とされているなか、過去5年以上にわたって感染報告は1例も出ていません。
頻繁に停電が起こることから、ソーラー冷蔵庫などコールドチェーン用の設備が医療施設に提供されています。地域社会と家庭でのヘルスケアの実践改善については、ガザと西岸地区の保健員228人に「子どもの病気の総合的治療」(病気の子どもの看病についての総合的な救命アプローチ)の訓練が行われました。また、651ヵ所の母子保健(MCH)診療所には微量栄養素の補充食品と、子どもの成長監視や微量栄養素検査のための基本的な設備が提供されました。14万世帯を対象に母乳育児キャンペーンが実施され、完全母乳育児の原則を理解する女性の割合は当初の58.6%から15%上昇しました。
2009年にユニセフは社会問題省を支援し、前線で活動する人々がガザ市街地、ジェニーン、ラマラ、ベツレヘム、ナブラスで虐待されている子どもを発見し保護する子どもの保護手続きを実験的に実施。ソーシャルワーカーや学校のカウンセラー、警察官、教育省や保健省、法務省、内務省のスタッフ、パートナーNGOのスタッフには訓練を行いました。
教育:「キャスト・リード」の後に配布された緊急支援物資により、学校は早期に再開しました。教室を破壊された子どもたちのためには14ヵ所のテントを含む仮設の学習スペースが確保され、520セットのスクール・イン・ア・ボックス(1セット当り生徒80人分、教師2人分)、数学と科学の教授用キット400セット、ノート10万冊、フォルダー4万4000個が提供されました。9月には、深刻な物資不足のなかで学校の新年度を迎えることへの支援として、ユニセフはガザの小学生を対象に学用品9万2000セット(1セットにノート6冊、ペン2本、鉛筆6本、ものさし、消しゴム)を提供しました。
今後とも、ガザの子どもたちをはじめ、世界の子どもたちのために支援活動を続けてまいりますので、ご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。