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財団法人日本ユニセフ協会



ハイチ地震緊急・復興支援募金 第30報
安心して母乳を与えるために設置された「赤ちゃんに優しいテント」

【2010年2月18日 ハイチ・ポルトープランス発】

© UNICEF/NYHQ2010-0181/Noorani
看護師のテシイア・エンマキュリーさんは、シャン ド マルス公園の避難キャンプにある赤ちゃんのテントで、生後4ヵ月の女の子の母親のオリビアさんと一緒に最適な母乳育児について復習している。

崩壊した建物と臨時避難キャンプが並ぶ、震災によって著しく疲弊している町に、母親が安心して赤ちゃんに母乳を与えるための静かな場所を提供する12基の特別なテントが設置されました。

ユニセフからの支援を受けて、この「赤ちゃんに優しいテント」は運営されています。

アナスタシア・セント・ジョセフさん(19歳)は、震災から12日後に出産しました。ポルトープランスにあったアナスタシアさんの自宅は崩壊し、現在は市内にある避難キャンプのひとつで、十数人の家族と共にビニールシートの下での生活を強いられています。ここ3日間、アナスタシアさんは毎日この赤ちゃんテントに通っています。

「二人の子どもたちの栄養について助言してくれるのでここに来ました」と、アナスタシアさん。「ひとり目の子どもには、母乳を与えませんでした。ですから、二人目の子どものために、どうやって母乳を与えるのか教えてもらいました。もし、私が生後6ヵ月間の完全母乳育児を行えば、娘の健康を維持できることが分かりました。」

アナスタシアさんのような授乳期の母親が数百人ほど、この赤ちゃんのテントを利用していると推定されています。「赤ちゃんに優しいテント」のスタッフは、近くにある全ての臨時避難キャンプで、このサービスを宣伝して回っています。

母乳育児の神話
© UNICEF/NYHQ2010-0188/Noorani
シャン ド マルス公園の避難キャンプにある赤ちゃんに優しいテントで生後5ヵ月の娘に栄養補助食品を与えるソフィアさん。汚染を防ぐために、安全な飲料水を混ぜて加工している。

多くのハイチの女性たちが、震災後に広まった「神話」を信じ母乳育児を中断してしまいました。母親が震災の体験などからストレスを受けると母乳が出なくなる、というのも噂のひとつです。また、母親が適切な食事をしていないと、その母親の母乳は良くないものであるという「神話」もありました。

こうした誤解は、粉末の乳児用調製粉乳が支援物資として大量にハイチに送られる事態を引き起こし、赤ちゃんにとって危険な状況を作り出す結果となっています。ハイチの人々の多くは清潔な飲料水を手に入れることができず、汚い水で粉乳の粉末を溶かすことになってしまいます。そしてこれは、赤ちゃんの命を脅かす下痢性疾患を引き起こす要因となり得るのです。

ユニセフのアリ・マクレーン栄養担当官は、乳児用調製粉乳を送る前に、こうした結果を導いていることを人々は認識する必要があると話します。「赤ちゃんを救っていると思っていても、実際は赤ちゃんの健康と命を危険にさらしているのです。」

震災で母親を失った幼い子どもたちのために、ユニセフは、他人道支援団体と協力して、すぐに食べられる栄養補助食品を提供しています。この食品は、子どもに与える前に手を加える必要がないため、汚染された水を混ぜてしまうことによって、子どもが下痢性疾患に陥る危険もありません。しかし乳児用調製粉乳の場合は、汚染された物質の混入を避け、鮮度を保つために、正しく管理された状況で利用されなければなりません。

ユニセフは、より多くの女性がこの赤ちゃんに優しいテントを利用し、このプログラムが拡大されることを期待しています。

最も弱い立場の子どもたちへの支援

ユニセフと共に支援活動を実施している人道支援団体のスタッフはこう話します。「ハイチには多くの子どもたちがいますから、ポルトープランスにある全ての避難テントで、こうした子どもたちのためのテントに対する大きなニーズがあります。さらに、震災で多くの母親が母乳育児を中断してしまった今、この赤ちゃんに優しいテントがあることは子どもたちの幸福と福祉にとって、本当に重要なのです。そして母親への心理・社会的な支援も、こうした状況の中で非常に重要なものです。」

緊急事態下ではいつも、乳児や幼い子どもたちが、被災者の中でも特に弱い立場に立たされます。ハイチの状況も例外ではありません。そのような状況の中、母親にとっても身近な母乳育児は、ハイチの子どもたちの生存と健康を保つためになくてはならないものです。