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ハイチ地震緊急・復興支援募金 第44報
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ラウリタ修道院に届けられたユニセフの支援物資のおもちゃやゲームで遊ぶハイチ南部のジャクメルの子どもたち。学校は1月に発生した地震により被害を受けた。 |
1月12日、大地震がハイチを襲った時、南部の港町ジャクメル郊外の農村部の学校も、全半壊の被害に遭いました。この影響は、授業が短期間中断されただけに留まりません。今後も、多くのおとなが、教室の倒壊を恐れ、子どもたちを学校に通わせることをためらうことが懸念されています。
こうした混乱の中、ラウリタ修道会の修道女たちは、就学前の子どもたちに就学前教育の機会を提供しています。突然教室や遊び場を失った約250人の幼い子どもたちが、彼女たちの活動の恩恵を受けています。
ユニセフは、この活動を応援するため、仮設教室用の大型テント3基を設置した他、早期幼児開発(ECD)キットを20セット届けました。
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ジャクメルの学校にいるスタッフと子どもたち。ユニセフは大型のテント3基と早期幼児開発キットを20セット届け、震災後、幼児早期教育活動の再開を支援した。 |
その日、丘の上の長く深い溝が出来た舗装されていない道路を、支援物資を載せた大きな貨物トラックがやってきました。ボランティアの皆さんが地面を清掃し、テントの設置を準備しました。次の日、200人以上の子どもたちが学校に姿を現し、ECDキットの積荷ほどかれるのを辛抱強く待っていました。
ユニセフは、自然災害や武力紛争による緊急事態の中、あるいはその影響を受けた環境にいる6歳未満の子どもたちのニーズに合わせて、昨年の夏、世界中でこのキットの配布を開始しました。
このキットには、子どもたちが遊びなどを通じて社会性を身につけるために使える道具、例えば、指人形、パズル、メモリーゲーム、色鉛筆など37種類の品物が入っています。ユニセフは、これまでにハイチで、このECDキットを1,000セット配布。現在、さらなる配布の準備を進めています。
「驚いたことに、子どもたちは、毎朝8キロもの道のりを歩いてくるんです。」ユニセフのアルノー・コンション緊急支援担当官はこう話します。「子どもたちは4時に起きてここにやってきます。午後には保護者と一緒に家に帰ります。ですから、子どもたちは本当に遊んだり学んだり、こうした活動がしたいのです。」
ステファニー・セイント・フルーさんは、ラウリタ修道院の就学前教室に通う子どもを持つ親のひとりです。セイント・フルーさんは、地震発生時、家が崩壊する直前に、5人の子どもと一緒に外に避難し、難を逃れました。
ECDキットが届けられた日、セイント・フルーさんは子どもたちと一時間かけてテントづくりの仮設教室にやってきました。セイント・フルーさんは、足が麻痺している一番下の子を抱きかかえてこなければなりませんでした。しかし、テントでおもちゃが配布されると、一番下の子は上半身で踊り始めました。
「おもちゃや支援物資をもらってとても嬉しいです。」セイント・フルーさんは話しました。「そしてテントは、安全な場所を提供してくれます。被災して破損した家に戻るのは怖いですから・・・。被害をうけた教室に、子どもたちを通わせたくはありません。このテントは“天国”です。」
セイント・フルーさんは、彼女の家族は、現在、屋根のないところで夜を明かしていると話しました。彼女は、最も大切な、どうしたら自宅を再建できるのかといったような将来への不安を数多く持っていました。しかし、少なくとも、子どもがこの仮設教室で遊んでいたちょっとの間、子どもたちには多くの将来があることに気がついて安心したようでした。
「娘がこうやって一人で遊んでいるのを見るのは、母親として大変嬉しく思います。」(セイント・フルーさん)
ユニセフは、ECDキットやテントを提供しながら、ジャクメル近郊の農村部をはじめ、地震で被災した多くのコミュニティに、独自のECD教材を作るよう働きかけています。中長期的に、ユニセフなどからの外からの支援に頼らずとも、コミュニティが、自らの子どもたちに、社会性を育てる機会を与え続けられるようにとの考えに基づいているのです。
「私たちは、ここで、他のコミュニティの“モデル”作りをやっているのです。」 コンション緊急支援担当官は、こう話します。「このコミュニティの人々の情熱の高さを目の当たりにすることができました。わたしたちは、復興・再建の良いモデルを確立し、他の地域、とくにこうした支援活動の中で忘れられがちな農村部で拡大できるよう望んでいます。」 教室から、子どもたちの笑い声が響いていました。