ハイチ地震緊急・復興支援募金　第65報
拡大するコレラ感染

【2010年11月10日　ハイチ・ゴナイブ発】

ディエウラ・ルイッサン医師は、ハイチの港町ゴナイブで、コレラの対応に追われていました。それから数日後、ルイッサン医師が最も恐れていたハリケーンがハイチを襲いました。

アルティボニット地域の保健局の局長でもあるルイッサン医師は、この地域で感染が拡大したコレラ対策に、これまで休む間もなく全力で取り組んできました。しかし、ルイッサン医師の活動は、先週、カリブ海諸国を襲ったハリケーン「トーマス」により、さらに困難なものとなりました。

アルティボニット北部に位置し、片側を山に、もう片側を海に囲まれたゴナイブは、特に深刻な被害を受けています。

入院患者の増加

「（ハリケーンがきた時は）コレラ感染の拡大を防ぐための活動を中断しなければなりませんでした。それに加え、衛生施設（トイレ）が普及していないことも、感染が拡大している理由のひとつです。家で息を引き取っている人もいます。そして、そこから感染が広がっています。」

「洪水がもたらした水によって、感染はさらに拡大しています。殺菌処理されていない水を飲んだ多くの人々が感染しているのです。アルティボニットでのコレラの感染の拡大を食い止めるための活動は、ハリケーンの襲来によってたち遅れてしまったのです。」

町の郊外にあるラボト病院には、現在、毎日数百人もの人々がやってきます。「ハリケーンが襲ってから、さらに大勢の人が診察を受けにやってくるようになりました。」ラボト病院のマーセル・シャトリエ医師はこう話しました。「2日間で、388人もの感染者がいたのです。」

ハリケーン襲来で更に難しくなった支援活動

ユニセフは、パートナー団体と共に、ハリケーンの襲来前に、地震被災地各地で、備蓄していた大量の経口補水塩、浄水剤などの支援物資を配布しました。しかしながら、この非常に深刻な緊急事態を前に、この対策だけでは十分ではありません。

「4日間足止めを受けたようなものです」と、ルイッサン医師は話します。「実際、身動きが取れませんでしたから。」その結果、アルティボニット上部にある地域の病院では、コレラの死者数が増加したと指摘しました。

先週末の2日間、アルティボニットは、豪雨と強風に襲われました。町の中心部で洪水が発生。多くの住民が高台にある避難所や、学校、コミュニティセンターに避難を余儀なくされました。しかしながら、ハリケーンの上陸という最悪の事態だけは免れました。

予防キャンペーン

それにもかかわらず、ハリケーン「トーマス」がもたらした被害や損害は大きく、コレラ感染の拡大防止に向けた取り組みをさらに困難なものにしています。コレラ感染が更に拡大する可能性が高まっています。

現在、コレラ予防キャンペーンがハイチ全土で展開されています。自分自身と家族を守るため、自分たちでできる知識や方法の普及キャンペーンが行われています。常に石けんを使って手洗いをすること、安全で清潔な水を飲むこと、汚染されている可能性のあるものは、全て消毒することなどが訴えられています。

それでもハイチでは、今もコレラの感染者数が増え続けています。死者は数百人、入院患者は数千人に上ります。その大多数は、アルティボニット地域の人々です。

人々を襲う悲劇

ヘリダ・ピエールさん（36歳）は、アルティボニットにある貧しい港町ラボトの郊外に暮らしています。9人の子どもの母親でもあるピエールさんは、近くに住む多くの住民たちのように、コレラが流行して、子どもたちが病気に罹ることをとても心配していたと話しました。

ハリケーンが勢力を増しながら接近し、ピエールさんの家の近くの土地は浸水。近隣の人々は、ピエールさんのところに助けに駆けつけました。「子どもたちを一番に助けてくれました。私は、子どもたちと、長女のまだ幼い息子と一緒に避難してきたんです。」ピエールさんはその時のことを思い出して話しました。

翌日、21歳の娘さんは、海岸で遺体となって見つかりました。