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財団法人日本ユニセフ協会



被災地はいま 〜現地からよせられた声〜

子ども達が楽しみにしている移動図書館  子ども電話ホットライン

子ども達が楽しみにしている移動図書館

10歳になるソマイエは、バムの仮設教室で鉛筆をくわえながら心配そうに壁の時計を見ています。「遅すぎないかしら。この日を何日も楽しみにしていたのに。」ソマイエはバスが2週間に一度しか来ないことを知っています。「今週は来ないのかもしれない。」とソマイエは心配をつのらせます。

エンジンの音が聞こえたとき、ソマイエは飛び上がりました。「本が来た!本が来た!」彼女はそう叫びながら外に飛び出しました。クラスのみんなもソマイエに続きました。

外では、大きな白いバスが校庭にゆっくりと入ってきているところでした。バスは停まると同時に、胸を躍らせている何十人もの女の子達に囲まれました。以前バスが来た時に借りた本を抱えている子もいれば、図書館カードを手にしっかりと握っている子もいます。

これは特別なバスです。移動図書館には、3,000冊以上の本があり、2人の司書がいます。

「移動図書館が来ると、子どもたちは本当にうれしそうです。」校長先生はどよめく校庭で自分の声が聞こえるように声をはりあげて言いました。「図書館は、子どもたちの文字の読み書きする能力を向上させ、知識や小論文を書く能力も向上させます。」

バムの移動図書館サービスは、ユニセフの支援で数ヶ月間実施されています。2003年の地震の大被害によって、ほとんど全ての学校が完全に崩壊し、ほとんどの子ども達が本を読めなくなりました。今は、2週間おきに2台のバスが交代でバムの40校以上の学校を訪れ、4,000人の子ども達が本を読めるようになりました。

「地震の被害によって、子ども達のレクリエーションがなくなりました。本を学校に届けることは私たちができる最善のことなのです。」司書のナイレーは言います。「子ども達は精神的にも傷ついています。本を読むことで楽しむことができ、私たちが子どもを助けることもできるのです。」

バディは移動図書館で働く10人の司書の一人です。司書はペアで働き、一人は新しい生徒の登録を、一人は何を読めばいいかを子ども達にアドバイスします。イランの伝説から現代画集や詩集まで様々な本を読むことができます。数学や理科の勉強に役立つ本もあります。

「私は歴史の本が一番好き。昔がどうだったか、何を食べていたか、何を着ていたか、どうやって生活していたかがわかるから。」マータブちゃんは本棚の下段にある本に目を通しながら言います。

兄弟姉妹がいる生徒は、図書館から借りた本を家に持って帰って読ませることができます。「移動図書館が来たと聞くとすごくうれしい。」とハニエは言います。「本を借りたら、本から学んだことを、弟や妹に教えてあげるの。」

図書館を移動式にすることで、より多くの人が利用できるようになります。場所が足りないため、バムの学校は午前と午後の男女交代制で授業を行っています。バムのほとんどの学校は小さくて狭いプレハブ校舎で、あまり快適ではありません。学習環境とあまり良い環境ではなく、そのためユニセフではイラン教育省と協力して移動図書館サービスを始めました。

「より多くの子どもに質の高い教育を保障するため、施設や学習教材は移動でき、共有できるようにしなければいけません。」と、ユニセフの緊急教育支援担当のカタリナは言います。「教育やレクリエーションは被災したコミュニティに安心を与え、未来への希望を与えてくれます。」

子どものための電話ホットライン

10月のある水曜日のお昼頃電話がなりました。これはバムで新しくたちあがった電話ホットラインにかかった最初の電話の一つです。イラン州立福祉機構のカウンセラーのハッサンは小さいプレハブの建物の中で電話をとっています。

注意深く質問することで、ハッサンは電話をかけてきているのが地震で両親を失い、今はおじを暮らしている小さい男の子ということがわかりました。男の子は乱暴に扱われて殴られると訴えています。簡単な会話のあと、ハッサンは男の子に教育省が運営しているカウンセリングサービスに立ち寄ることを薦めました。

「電話をかけてきた子どもが深刻な問題を抱えているようであれば、できる限りのカウンセリングを行い、もっと専門的な支援をしてくれるセンターを紹介します。」とハッサンは言います。

電話ホットラインでは、ソーシャルワーカー2人と精神面や法律面でのアドバイザー2人が交代で、朝の8時から夜の8時まで対応しています。バムのホットラインと同様のサービスはイランの主要都市で行われていますが、バムのカウンセラーは地震の悲劇や地震によって失われたものに対応するための研修を受けています。

電話をかけてきた人とカウンセラーの間で信頼関係を作り、早い段階で問題が解決できるようにすることが目的です。もし問題がとても深刻であれば、ホットラインは専門サービスと電話をかけてきた人の橋渡しの役割を担います。

ホットラインは無料で、秘密は完全に守られます。「電話でのカウンセリングは秘密が保たれるので、問題を抱える人々を助けるのに効果的だと証明されています。」と語るのは、ホットラインの研修や機材を提供しているユニセフの子どもの保護担当官アミール・ガデリィです。「ホットラインでは、匿名で必要なアドバイスをもらうことができます。」

ホットラインはユニセフの家族との再会プログラムにも貢献しています。家族再会プログラムでは、家族や親戚が自分達の抱えている問題を解決できるよう支援しています。このサービスは学校や町じゅうにはられているポスターで紹介されています。

「警察から紹介され、家から逃げ出した女の子の事例を扱ったことも何回かあります。」とホットラインのマネージャーは言います。「このような女の子達はホットラインが助けとなります。多くの女の子や女性が虐待や搾取されたりしています。彼女達はどこに助けを求めればいいかわからないかもしれません。でも、ホットラインができたことによって、問題をどう対処すればいいかもっと簡単にわかるようになりました。」