財団法人日本ユニセフ協会




ユニセフはイラクの子どもたちの状況が悪化していると警告

敵対する勢力に、攻撃にさらされている子どもたちへの人道支援のアクセスの保障を求める

[アンマン 2003年4月10日]
 ユニセフは、イラクで治安が悪化し、一般市民に犠牲者が出ていることについて、再度懸念を示しました。

 バグダッドでは略奪が広がっているため、市民に深刻な脅威をもたらしています。昨日、首都にあるユニセフ事務所が略奪にあい、電話、イスなど、事務所内のものが奪われました。

 「病院の状況は深刻なままです。そして、ユニセフはあまりに多くの絶望、銃、そして恐怖と不安の中で暮らす家族の姿を目のあたりにしています」と、ユニセフ報道官ウィヴィナ・ベルモンテ氏は述べています。

 ウムカスルの港にいるユニセフの水や保健の専門家の報告によると、イラク南部の水の状況の悪化のために、下痢の症状が驚くほど増加しています。栄養不良が広がっているイラクのような国では、下痢により子どもが命を失うこともあります。2002年4月、ウムカスルの病院では下痢の症状が月30件報告されました。2003年4月には、ここ5日間で50件の下痢の症状が見られたと、医師が報告しています。

 ヘルスワーカーは、こうした状況のもと、1ヶ月間で栄養不良の割合が急激に増加すると予想しています。今日、ユニセフは、ウムカスルの病院に1万リットル分の給水設備を設置し、保健の状況が悪化するのを軽減する努力をしています。

 きれいな水へのアクセスのために支援が行われていますが、ベルモンテ氏は、治安も改善されなければならないと言います。ウムカスルにおける法と秩序の欠如により、多くの医師が病院から去り、今は家や家族のもとにいるため、人々の健康状態は非常に悪化しています。病院に勤務していた6人の医師のうち、2人だけが現在も働き続けています。今朝10時までに、これらの医師はすでに100人の患者を診察しました。その多くが女性と子どもで、負傷している人もいます。

 紛争が始まって以来、ウムカスルの医師は1日に340人の患者を治療しています。この数字は今後増加する可能性があります。予想される下痢や栄養不良の増加に加え、ユニセフはイラク第2の都市バスラの医療施設が略奪にあっているとの報告を受けています。ウムカスルの医師はすでにバスラやサフワンからやってくる人々の治療も行っているとのことです。

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[ジュネーヴ/アンマン/ニューヨーク 2003年4月9日]
 ユニセフは、トラック輸送による国境を越えた人道支援活動に目ざましい改善が見られるにもかかわらず、イラクの子どもと女性への早期支援の試みが、「恐怖と混沌の名残」により大きく妨げられていると警告を発しました。

 ユニセフ事務局長キャロル・ベラミーは、人道支援物資を届けるため危険を冒して戦闘終了直後の街に入っていった民間人契約ドライバーの勇敢さを賞賛して、地域をコントロールするすべての勢力に一般市民の人道支援へのアクセスを保障する義務があると述べました。

 「ユニセフがアクセスについて語るとき、それは人道支援物資を最も必要とする子どもと女性に届けることを保障することを意味します」ベラミー氏は言います。「これは物理的に街に入ることができ、緊急に支援を必要としている人々のもとへ行き、渇きや恐怖、飢えにより衰弱し苦しんでいる人々に確実に届くよう物資を配ることを意味します。私たちは多くの場所に入れるようになっているにもかかわらず、恐怖と混沌の名残に直面しています」

 イラク戦争勃発の数ヶ月前に、イラクの人々へ迅速に緊急支援物資を配る準備として、ユニセフは何千トンもの支援物資をイラク国内、及び、近隣諸国に保管してきました。こうした物資には、栄養不良の子どもたちのための高たんぱくビスケットや栄養強化ミルク、浄水剤、そして基礎医薬品が含まれます。

 ここ数日、人道支援物資を輸送するトラックが給水物資の補充のためにイラク南部に入るにつれ、連合軍が通過した地域において、学校や政府施設の大規模な略奪が見られると、ユニセフのドライバーは報告しています。

 「紛争ですら法規と人道条約に従っています。秩序を保障し、命を救うための人道支援物資を配るための安全なアクセスを保障することは、地域を実効的に支配し続ける者の責任です」

 ユニセフ・イラク代表カレル・ドゥ・ルーイは、テレビに映し出される映像は、荒々しく恐ろしく悩ましいものであると述べました。

 「この紛争が起きる前、ユニセフは子どもたちの命を救うための予防接種キャンペーンや栄養キャンペーン、そして教育支援を成功させるネットワークと制度をイラク国内に持っていました」ドゥ・ルーイ氏は言います。「略奪や、混沌、そして秩序の崩壊について非常に懸念されるのは、こうした私たちが信頼してきた制度が完全に消滅、あるいは崩壊してしまうかもしれないことです」

 今週初めの段階で、ユニセフが発表したイラクに関するアピールで必要と訴えた資金のたった5分の1しか確保できていないと、ドゥ・ルーイ氏は付け加えました。

 「これは明らかに、まったく十分な額ではありません。今、私たちは緊急事態に対して責任があります」と、彼は言います。「今後数週間の私たちの活動が、イラクの子ども世代の身体的、心理的な健康を左右することになるでしょう。」

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募金のお願い

 ユニセフによるイラクへの緊急支援を求める発表を踏まえ、日本ユニセフ協会では、今後さらに必要とされるイラクの子どもたちへのユニセフの人道支援活動を支援するため、イラク緊急募金の受付を開始します。多くの皆様のご支援をお願い申し上げます。