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財団法人日本ユニセフ協会
 



東日本大震災緊急募金 第23報
「心のケア」研修がスタート

【2011年4月2日 岩手発】

©日本ユニセフ協会
岩手県釜石市内の大平中学校の避難所で、歯ブラシで遊んでいる子どもたち。避難所では、遊ぶ場所も道具も限られている例が少なくない。

大地震発生から3週間以上が経過。被災地はまだまだ厳しい状況が続いています。1日(金)に岩手県入りした日本ユニセフ協会の宮田由香と、ユニセフ・ハイチ事務所から応援派遣されている教育専門家の井本直歩子さんは、2日、釜石市を訪問しました。

釜石市内では、既に7箇所の保育園が活動を再開。また、他の3箇所も来週を目処に再開への準備が進められています。また、現在避難所となっている釜石小学校でも、19日の始業式の実施が予定されています。

一方、同小学校や、宮田と井本さんが訪れた市内の他の避難所、大平中学校では、子どもたちは、避難生活を送られている方々の生活スペースの合間や片隅にできた僅かな隙間を使って遊んでいました。子どもたちの数に較べて、玩具などの数も限られています。また、避難所の方々は、子どもたちの間にもストレスが溜まってきている様子が見受けられていると訴えられています。

県立大槌高校の避難所で活動を続けるAMDAの助産師の中山さんは、「子どもたちが遊んでいる様子を見ていると、お母さん方のストレスも軽減されます。」「どうしたら、お母さん方を助けてあげられるのか。今はまだ難しいかも知れませんが、今後、お母さん同士がおしゃべり出来る場所、体験などを語りあえる場所をつくりたいと思っています」と語ります。

「心のケア」研修

©日本ユニセフ協会
3日、釜石市内で開かれた「心のケア研修」に参加する市内の幼稚園や保育園の先生方。

日本ユニセフ協会は、3日、日本プレイセラピー協会の協力を得て、「心のケア」活動に参加される教員やボランティアさんたちを対象にした研修プログラムをスタートさせました。

会場となった釜石市内の小川幼稚園には、市内の幼稚園や保育園から約15名の先生方が参加。この日実施された研修は、「プレイセラピー的かかわり(プレイセラピーの知識に基づいた子どもの心のケア)」。大人は、恐怖心を言葉などで伝えることができます。しかし、言語能力が十分に発達していない子どもたちは、そうした恐怖心を心の中に閉じ込めてしまう傾向にあります。こうした子どもたちに、遊びを通じて自分の思いを外に伝えさせることは、子どもたちの心のストレスを軽減させるだけでなく、遊びを通して失った「日常」を取り戻すことにもつながるのです。

©日本ユニセフ協会

研修に参加された先生方も、遊びを通した心のケアのそうした役割や効果を実感されたようでした。

「人形を通じて、子どもたちのケアを行うことができることを知りました。今日学んだセラピーを『ごっこ遊び』の延長として取り入れていきたいです。」(平田幼稚園 千葉先生)

「怖いおもちゃなどは仕舞っておいたほうがいいと思っていましたが、恐竜や兵士などを使って、子どもたちが自分の恐怖を表現できることを知りました。早速明日からとりいれていきたいと思います。」(正福寺幼稚園 及川先生)

「子どもの心のうちを表現できている子とできていない子がいる。このような子どもたちが混在しているため、その対処法に悩んでいました。今回学んだことを、中長期的な災害後の支援として取り入れていきたいと思います。」(釜石保育園 佐々先生)

また、子どもの心のケアには、大人のケアも同様に大切です。今回研修に参加された先生方は、今まで抱えられていた不安や震災当日のことについて詳細に語りました。同じような境遇におかれている他の先生方や専門家を前に、安心する空間が作られ、そのことが、先生方自身の気持ちを前向きにし、遊びながら子どもたちの気持ちを受けとめることの大切さ、方法を学んだことで、自信をつけられていたようでした。

学校の復興を最重要課題として

「陸前高田はもっとも大きな被害を出した町のひとつだと思います。市役所は壊滅状態で、今は狭いコンテナハウスの仮庁舎で仕事をされています。しかし、教育委員会はその状況の中で、『学校の復興を最重要課題として取り組む』とする内容の文書を作成し、3月29日に、すでに市民の方々に配られています。」「このような状況下でも子どもと教育のことを忘れない、すばらしいではありませんか。」 岩手県の支援チームで活動する、ユニセフ・ベトナム事務所から応援派遣された安田直史さんは、2日夜、こう伝えてきました。

宮城・岩手両県では、日本ユニセフ協会の支援チームが、今月中旬以降各地で実施される始業式に向け、具体的な支援内容を確定するため、連日、県や市町村の教育委員会はじめ、自治体の教育関連担当部署ならびに教育支援の分野で活動する様々な団体との連絡・調整を続けています。被災地の学校や自治体などからは、子どもたちの文房具だけではなく、学校の備品、また、交通網の寸断などによる通学困難児童への対応用の車両などに関する相談や要望が寄せられています。ユニセフハウスでは、こうした被災地の支援チームから報告される内容に基づき、被災地のニーズに応えるべく、様々な企業のみなさまのお力をお借りしながら、今週末も作業を続けています。

*プレイセラピーとは・・子どもとセラピスト(治療者)の適切で特別な 対人関係の中で、安全な環境と遊び道具を使って、子どもが自分の 気持ちや考えや行動を表現したり探索したりするのを、プレイセラピストという 大人が促進し手伝うものです。(日本プレイセラピー協会より、http://www.ja4pt.org/