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東日本大震災緊急募金 第27報
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© 日本ユニセフ協会 |
ユニセフ・ソマリア事務所の國井修医師。 |
ユニセフ・ソマリア事務所の國井修医師は宮城県で日本ユニセフ協会の支援活動を展開しています。地方自治体の保健担当者や保健医療支援者との協議、被災者の方々との対話を通して、國井医師は今の課題は、「支援格差」だと語ります。人が多く集まる避難所には、食料・医療などの援助が集まる一方で、アクセスの悪い小規模な避難所や自宅に住んでいる被災者には十分な支援が行き渡っていません。また、ライフラインの復旧が遅れる中、カップラーメンなどのインスタント食品の摂取が続くと栄養不足になり、口内炎、皮膚炎ができるほか、基礎疾患を有する患者さんの状態悪化などが目立ってきます。
また震災直後から現場で保健医療に従事されている地元の方々の状況も深刻です。國井医師は、宮城県三陸市役所ある保健師さんについて、次のように話しています。
「宮城県南三陸町役場の、ある保健師さんは震災直後からずっと現場につめて、被災者の医療、介護、妊産婦・乳幼児ケアにあたっていらっしゃいます。彼女の家族は無事でしたが、親戚が亡くなり、家も車もすべて失ってしまいました。勤務先の役場も倒壊しました。彼女自身も被災者であり、住居の手続きも進めなくてはなりませんが、今は何よりも先に被災者の救済に全精力を注いでいます」。國井医師が、「少しは休んでください」と声をかけると、その保健師さんは、「同じ被災者の方々が苦労していらっしゃるのに、私だけ休めません」と、お話しになりました。
保健医療支援には市町村が中心となった調整・連携機能を立ち上げることが必要です。しかし、その要となる市役所や町役場、保健医療人材も被災し、役所・役場自体が全壊し、保健師などが死亡・行方不明となった地域もあります。巡回訪問をする自動車や妊産婦や介護者などの情報を入れたコンピューター、コピー機など、業務執行に必要なものが今回の災害で失われたところもあります。
このような現状に対して、被災地・避難地など被災者すべてを対象とした包括的な保健医療栄養の対策・支援が必要です。日本ユニセフ協会は県や市・町に技術的、物的、資金的支援を行い、アクセスの悪い避難所の現状調査や栄養不足に対する補助食品やビタミン強化米の配給、保健・医療・福祉サービスの連携協力体制の強化、予防接種、乳児・妊産婦健診を含む中長期の保健システムの早期復興に協力していく予定です。
保健医療分野の支援にはパートナーとの連携も重要です。日本ユニセフ協会では、災害人道医療支援会(HuMA)や日本プライマリ・ケア連合学会などを通じて、被災者、特に母子に対する医療救援を展開しています。
© 赤ちゃん一時避難プロジェクト |
絵もとっても上手、漫画家志望でやさしい笑顔のももこちゃん(新潟県南魚沼郡湯沢町にある一時避難所で)。 |
宮城県南三陸町、福島県内で福島第一原発事故の影響下にある地域および福島県の被災家族が避難している東京・埼玉の避難所での生活を余儀なくされている母子のために、新潟県南魚沼郡湯沢町のホテル エンゼルグランディア越後中里温泉に一時避難場所を提供し、医療保健活動や母子の心のケアを行う赤ちゃん一時避難プロジェクト。このプロジェクトで、日本ユニセフ協会と連携して活動しているNPO法人災害人道医療支援会(HuMA)の救命救急士の岡野谷純氏は、次のように話します。
「日々、被災地の状況にも色々な変化が起こっています。町役場で総務課長、健康福祉課長と今後のスケジュールをお話し、その後、被災者受け入れ手続きをしている公民館に行きました。町民の皆さんから届いた思いやり物資を拝見しました。
湯沢町にはすでに福島県から1,000人近くが避難していますが、皆さん家族で自分の車で来ることができる人たちでした。大きな混乱はなく、職員さんたちもとても優しい笑顔で応対していました。
赤ちゃん一時プロジェクトでは、小児科医に加え、HuMAからも応援医師がきてくれ、また、子ども達の遊び相手、母親などの話し相手にボランティアも入ってくれることになっています。
徐々に子どもを持つ家族の形が整ってきています。HuMA、日本ユニセフ協会、ユニセフの皆様とご一緒に本プロジェクトを遂行できることを誇りに思います。」
日本ユニセフ協会は行政と調整の上、このように現場で活躍する医療従事者がスムーズに活動を進めていけるように、現場のニーズを調査して車輌や機材を投入するといった支援もしています。