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日本ユニセフ協会
 



東日本大震災復興支援 第204報
民生児童委員のDV研修 — 陸前高田市

【2013年8月21日 東京発】

© 日本ユニセフ協会
今回の研修会には、地域の様々な福祉活動を支えていらっしゃる民生児童委員の方々にご参加いただきました。写真中央は講師の丹羽雅代さん。

東日本大震災によって、被災地の子どもたちを取り巻く環境は一変しました。大切な家族や親戚、友人、住み慣れた家や地域を失ったり、遠く離れた場所に移らざるを得なくなった子どもたち、転校を余儀なくされた子どもたちも少なくありません。遊び場も少なくなり、以前のように、祖父母や地域の方々による子育ても難しくなっています。こうした不安やストレスが、暴力などの形で家庭や子どもたち暗い影を落とす事がないよう、日本ユニセフ協会も、各地の自治体や専門家団体の方々と協力し、地域の方々の様々な取り組みの支援を続けています。

昨年、子ども・若者向けの『デートDV予防パンフレット』を製作し、相談機関などを通じて配付・提供された岩手県陸前高田市。その実現に協力した日本ユニセフ協会は、去る8月21日、同市社会福祉協議会が主催するDV予防研修会の開催をサポート。長年にわたりDV被害者を支えてこられているアジア女性資料センター・女性の安全と健康のための支援教育センター運営委員の丹羽雅代さんを講師に招き、地元の民生児童委員の方々の相談対応力の向上を図りました。

相談を受ける側の準備

© 日本ユニセフ協会
2012年、日本ユニセフ協会は、岩手県陸前高田市の依頼を受け、子ども・若者向けのデートDV予防パンフレット製作に協力、親密なパートナーシップを形成し始める10代の子どもたちを対象に、陸前高田市が発行した「デートDV」に関する啓発パンフレット。“暴力”にはどんな行 為が含まれるのか、暴力に巻き込まれたらどうしたらいいのか、また互いを尊重する関係を築くためのヒントなどを漫画や事例で解説しています。閲覧・ダウンロード(無償)はこちら »

東日本大震災の被災地に限らず、報道でも日本各地から伝えられるDV被害。実は、非常に“身近な存在”です。夫から何らか(身体的・心理的・性的)の暴力を受けている女性は3人に1人、命の危険を感じるほどの暴力を受けた経験がある女性は、20人に1人に上るとする調査もあります。

丹羽さんは、講義の中で、DVが子どもに与える影響や関連法の解説も交えながら、こうしたDVが広く存在する背景を、「家庭生活における個人の尊厳と両性の平等が明文化され、女性が選挙権を持つようになったのは、第二次世界大戦後のこと。それ以前の封建的な家父長制の考え方がいまだ根強く残っていることがあると考えられます」と説明。また、暴力の構造についても、その原因は被害者にあるわけではなく、「加害者の個人的なうっぷん晴らしが、自分よりも弱いとわかっている身内に向かう傾向がある」と解説されました。

今回の研修会に参加されたのは、陸前高田市内各所から集まられた民生児童委員36名の方々。自らが置かれている状況をなかなか外に訴えることができないDVや児童虐待の被害者にとって、最も相談しやすい“窓口”の一つです。日本ユニセフ協会東日本大震災支援本部の本田涼子心理社会的ケアアドバイザー(臨床心理士)は、「DVの背景や構造を理解しているか否かが、相談を受けた時の対応や援助の仕方を大きく左右するということを、改めて確認していただけたようです」と語ります。

地道な支援

丹羽さんは、「DV被害者の思いや権利を尊重する形での支援をし、子どもや女性にとって安全な社会を作る担い手となられることを期待します」という言葉で、講演を締めくくられました。

震災から間もなく2年半。しかし、被災地では、子どもや女性への暴力や虐待の増加が未だに懸念され、一部報道では、地域によっては実際に増加しているとも伝えられています。日本ユニセフ協会では、今後も地域の様々なイニシアティブを応援し続けてまいります。

pdf子ども・若者向けの『デートDV予防パンフレット』はこちらから[3.3MB] »

pdf緊急・復興支援活動 2年レポートはこちらから[7.2MB] »