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日本ユニセフ協会
 



東日本大震災復興支援 第236報
改めて「子どもとともに」を訴える

【2014年6月6日 東京発】

4年目の活動

2014年6月6日、衆議院第一議員会館で開催された第11回「東日本大震災子ども支援意見交換会」。
© 日本ユニセフ協会/2014
2014年6月6日、衆議院第一議員会館で開催された第11回「東日本大震災子ども支援意見交換会」。国会議員、地方議会議員、中央省庁関係者、地方自治体関係者、支援・市民団体、報道関係者など80名が参加した。

震災が起きてひと月あまり。様々な形で子どもたちの支援に取り組んでいた日本ユニセフ協会や子どもの権利条約総合研究所などのNPOは、中長期にわたる復興支援が、「子どもの権利条約」の趣旨に基づくユニセフの「子どもにやさしいまちづくり」が反映された形で進められるよう、「東日本大震災子ども支援ネットワーク」を立ち上げ、国会内や被災地での意見交換会、被災した子どもたちと市民の意見交換の集いなど、国会議員や中央・地方の行政関係者、支援関係者の方々との間の情報交換の場を設定。行政や国会・地方議会議員、企業、大学、市民団体間の連携の促進を図ってきました。しかし、震災から4年目をむかえた被災地の子どもたちの多くは、立ち止まることが許されない現実の中、自ら意見を出す機会はほとんど与えられない形で描かれた“未来図”や“計画”に基づいてつくられている“まち”の担い手として位置づけられ、期待されるという矛盾の下で暮らしています。

子どもたちは、震災直後とは大きく異なる多様な形の困難に直面しています。子どもたちの“今”と“未来”を支えるための支援の在り方を訴えるため、東日本大震災子ども支援ネットワークは、創立記念日の5月5日、『子どもの暮らし復興に向けて—東日本大震災子ども支援ネットワーク4年目の活動』を発表しました。

「支えられ」の違い

震災後、がんばってきた疲れが出ている子どもたち。未曾有の被害をもたらした震災を受け止められず、苦しみを抱え続けている子どもたち。悲しみや苦しみを表現しストレスを低減するなど、適切な心のケアを受けることができなかった子どもたち。子どもたちが抱える状況は様々です。復興に貢献したいと思いながらも、自分たちの声がなかなか聞かれないもどかしさを感じる子どもたちもいます。多くの団体や専門家、行政が、子どもたちを支えるために懸命に努力をしてきました。しかし、地震や津波の被害があまりにも広範囲に及ぶなか、また、必要とされる支援の中身が変化し続けるなか、支援を必要とする全ての子どもたちに必要十分な支援を届けることが叶わないまま、3年余の月日が過ぎました。

子どもたちの復興の状況には、「支えられ」の違いが生じています。支援団体が被災地から徐々に撤退してゆくことに不安を感じる子どもたちや、一過性のイベントではなく、徹底して子どもたちに寄り添ってくれる人や“場”の不足を感じる子どもたちもいます。

10のアクション

「東日本大震災子ども支援ネットワーク」は、『子どもの暮らし復興に向けて』の中で、こうした子どもたちの現状とその背景を、次のように解説しています。

「この3年間を見ると、大震災からの復旧・復興において「子どもとともに」という視点が弱いといわざるをえません。その年齢にふさわしい判断能力・行動力のある子どもに育てるという視点も弱いです。身近なおとなたちの疲弊した生活を一緒に過ごすなかで、何を言っても聴いてもらえない、受けとめてもらえないもどかしさのなかであきらめていく子どもたちが出ています。一方で、丁寧な支援を受けられていない子どもたちのなかには、支援慣れしてしまい、社会を切り開くのではなく支援を受けることが前提の暮らしになっている状態も生じています」

「東日本大震災子ども支援ネットワーク」は、この状況を変えてゆくため、復興や支援に携わるおとなが、「子どもの権利条約」の趣旨を理解すること、すなわち、子どもを“庇護”の対象としてだけではなく“社会の一員”として捉えることが重要だと改めて訴え、具体的なアクションとして、次の10のアクションを提唱しています。

  1. じっくり丁寧に子どもと話し、子どもの思いや願いを受けとめよう
  2. 子どもを復興のパートナーとするための仕組みをつくろう
  3. 「つなぎ役」を育て、さまざまな場に位置づけよう
  4. 安心できる居場所をつくりだそう
  5. 子どもが一人でも安心して相談でき、効果的に救済される固有の仕組みをつくろう
  6. 既存の制度と復旧・復興のための制度との調整を図ろう
  7. 継続的な支援を確立しよう
  8. 子どもや家族の支援者を支えよう
  9. 子どもと家族を総合的に支える仕組みをつくりだそう
  10. 子ども支援にかかわる情報や経験を共有し、広めよう

11回目の意見交換会

今月6日、衆議院議員第一会館で、「東日本大震災子ども支援意見交換会」が開催されました。11回目となった今回の意見交換会には、国会議員や地方議会議員の他、各中央省庁や各自治体の行政担当者、市民団体、報道関係者など、80名が参加。「学齢期の子どもたちの学びを支える」をテーマに、情報と意見の交換が行われました。

岩手県沿岸部の高等学校を取り巻く現状と課題を報告されたのは、県高等学校教職員組合の澤瀬さん。高田高校など沿岸部の被災した校舎の再建や災害復興住宅の建設が進まず、学びや住宅環境が十分に整っていない、被災した子どもたちも先生たちも十分に話を聞いてもらえる環境が整っていないと報告。教職員の加配はあるものの、1年ごとの更新なので、複数年度同じ先生に関わってもらえる保証がないことや、沿岸部と内陸部の学校の人事異動により教員同士、教員と生徒の間に「温度差」が生じていたり、学校校舎の再建や道路建設などで通学路の安全や騒音が生じる心配もあり十分な学びの環境が整えられていないことなどを訴えられました。教職員のバーンアウトを危惧されている同県教職員組合の砂金さんも、「加配教員の住宅手配は各学校の責任となっているが、被災地域は宿舎として利用できる建物が限られているため苦労している」と、加配教員の単年度雇用の問題を指摘。継続雇用が可能になるような仕組みづくりの重要性を指摘。また、スクールカウンセラーについても、「週1−2回ではなく必要な時に利用できるようにしてもらいたい」と訴えられていました。

福島県からは、会津若松市で寺子屋方丈舎を運営する江川さんが「不登校の増加」を報告。大熊町や南相馬市、浪江町などからの避難者を多く受け入れている会津若松市には、現在も、3,000人以上の方々が借り上げ住宅や仮設住宅で避難生活をおくられています。このため、もともと合図若松市内の不登校の子どもたちの支援をしていた寺子屋方丈舎も、他の民間団体や教育委員会などと協力して大熊町の子どもたちの学習支援など、多様な活動を行っているとのことでした。「特に被災地域では、転校や区域外通学、仮設住まいなど、子どもをとりまく環境が複雑で、子ども同士の関係性が流動的になったり、子どもたちの間に孤立感が深まっていることも、不登校に大きく影響している」と江川さんは指摘。国や自治体はスクールカウンセラーは積極的に配置している一方、スクールソーシャルワーカーの加配が少ないことや、不登校やいじめの問題解決のためには公教育と民間教育が相互補完的に連携しあう必要があるなど、「不登校」を、単に“こころの問題”では片づけてはいけないと訴えられました。

中学生不登校率が平成24年度全国一位だった宮城県からも、教育庁義務教育課の千葉さんが、同問題の現状と取り組みの状況を報告。「(現在の「不登校」問題には)震災が少なからず影響している」と語る千葉さんは、スクールカウンセラーの加配や、心のケアに関する研修会などを実施する教育相談充実事業、登校支援ネットワーク事業やスクールソーシャルワーカーの加配などの国の事業に加え、宮城県が独自の事業として県内24市町で展開している「学び支援コーディネーター等配置事業」を紹介。支援員として登録された2,200名を超える大学生や元教員、地域の方々が、小中学生7万人を対象に、放課後や週末、長期休暇中の学習支援をサポートしていると報告されました。

現場の“生の声”を国政や支援に繋げる国会内の意見交換会。次回は9月に「心のケア」、11月には「子どもの貧困」をテーマに開催される予定です。また、宮城県議会との意見交換会も回を重ねており、次回は7月に開催される予定です。