ユニセフ
◆ユニセフ スーダン ダルフール地域緊急支援アピール(2004年6月〜12月)◆
概要
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避難民キャンプの子どもたち |
ダルフールで起こった激しい戦闘によって、約120万人が国内避難民となり、それら避難民を受け入れている地域も直接的な被害を受けました。また、およそ10万人の人々が隣国チャドへ避難したため、ユニセフはチャドへも緊急支援を行っています。
数百もの村が焼き討ちにあい、作物や家畜は盗まれたり殺されました。このような悲劇の舞台となった場所は、すでに、保健、水、衛生、教育といった分野でサービスが実施されていた地域でした。そのため、更なるサービスを提供する余裕はなく、国内避難民やその近隣の村に対して十分な支援を行うことは難しい状況です。これからやってくる雨季の間、5歳未満の子どもたちの栄養状態が非常に懸念されます。
国内避難民は、最低限の基礎社会サービスを受けられる場所にたどり着いても、安心することはできません。女性や子どもが、薪集めや水汲みのために居住地の外に出るとレイプや暴行の被害を受けるという報告も数多くされています。
ダルフールでの活動にあたって最も大きな障害の一つは、パートナーの能力と規模の問題です。現在、13の医療センターが1500人の子どものケアにあたっていますが、5500人以上の子どもたちがいまだに深刻な栄養不良状態にあります。また、子どもの保護、調査、アドボカシ−(提言活動)に関わる専門的な組織がありません。支援活動を行う際のビザの制限や渡航許可に関する手続き上の障壁は、最近取り除かれたものの、ユニセフはこうした面のさらなる改善を訴えています。しかし、まだ慣習上の問題から、ユニセフやそのパートナーが使用できる車両の台数に制約が残っています。
ユニセフは、国や地方の諸機関、国内および国際NGO等と協力しながら支援活動を実施しています。例えば、ダルフールの国内避難民と受け入れ地域を対象に医療活動を行うユニセフ支援の保健クリニックは42あります。そのうち、30はNGOによって運営され、12が保健省によって運営されています。また、とくに水の分野では、民間への業務委託契約も行われています。
ダルフールでの活動規模を拡大していくために、ユニセフは国際職員の増員を行っています。ダルフールにある3つの出張所は、駐在のプログラムオフィサーが指揮をとり、また、ユニセフが活動を続ける分野(保健、水、環境衛生、栄養、教育、子どもの保護)で少なくとも1人の国際職員が配置されています。平均して7人の国際職員をそれぞれの出張所に配置し、さらに追加的に8人の国際職員が現場で働く職員を後方支援しています。8月末までに、ユニセフはダルフールに38人の職員を配置する予定ですが、そのうちの22人は国際職員です。こうした職員の増強によって、保健や栄養といった分野の特にプロジェクトモニタリングにおいて、ユニセフはより力を発揮できるようになります。
ユニセフの活動
今回の緊急事態で困難な状況にある人々の救援に向けて、ユニセフは広い分野で活動を続けています。すでに国内避難民として暮らす34万人に安全な飲み水を提供しました。40万人を対象としたプライマリーヘルスケアを支援し、さらに、マラリアの発生を抑えるために10万人の子どもを対象に蚊帳5万張りを提供しました。また多くの子どもが学校に行けずにいたため、ユニセフは2万1000人の子どもを対象とした補習授業を実施しました。大半の子どもたちにとって、これが初めての学校でした。
こうした取り組みにもかかわらず、課題は山積みです。国内避難民の半数がいまだに保健サービスを受けることができない状況にあり、そして2/3はきれいな水を手に入れることができません。避難民キャンプの衛生施設は未整備で、現在学校に通っている子どももわずか15%に過ぎません。
この報告書は、できるだけ多くの子どもに最も基本的なサービスを届けるためのユニセフの取り組みを紹介しています。ユニセフが取り組むのは栄養改善を含む保健分野、安全な飲料水の配給、公衆衛生、基礎教育、搾取や虐待からの子どもの保護といった分野です。無限の挑戦がそこに広がっていますが、ダルフールの子どもたちを救うために、ユニセフは可能な限りの手を尽くして、スーダンの政府機関、NGO、その他協力機関を支援しています。
(1) プライマリーヘルスケアと栄養
2004年末までにユニセフは、基礎プライマリーヘルスケアをダルフールの100万人の国内避難民とその受け入れ地域で確実に実施することを目指しています。その計画には、通常の予防接種の実施や保健員の研修、NGOや保健省に対する基礎薬品キットの提供などが含まれます。より多くの人々に保健サービスを届けるために、ユニセフは保健省と協力して移動式の保健チームの運営を始めました。また、ユニセフは、スーダンの他の地域からダルフールに働きに来る公務員に対して奨励金を払うことを検討しています。さらに、226万人の子どもを対象に、ユニセフ、WHO(世界保健機関)、保健省は協働で、大規模なはしかキャンペーンを実施しました。キャンペーンは、2004年6月5日にダルフール南部で始まり、そして6月12日にはダルフール北部と西部で行われました。
ダルフールの複数の地域で見られる5歳未満の子どもの深刻な栄養不良をユニセフは特に懸念しています。ユニセフは、NGOや政府の施設に対して、医療物資や身体測定器を提供したり、調査活動を支援したり、研修を行ったりしています。2004年5月に2人の栄養分野の専門家を招いて行った栄養不良の対処方法に関する研修には、約40人の医療専門家が参加しました。世界的に著名な2人の専門家は、すでに他の国で何万もの命を救った治療体制を紹介しました。また、NGOが十分に機能しない場合には、栄養補給を技術的な面から支援することも検討しています。
必要な支援額 |
米ドル |
はしかキャンペーン |
2,100,000 |
保健と栄養 |
5,700,000 |
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(2)水と衛生
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ユニセフの支援で設置された井戸に
水を汲みに集まる人々 |
ユニセフは、60万人の国内避難民とその受け入れ地域に対してこれから90日間、安全な水の供給を実施する予定です。そのために、新たな試井の掘削、手動のポンプの修復、多量の水が産出できる地域における水場の建設、タンカーを使用した水の輸送などを実施しています。複数の手動式の井戸にはポンプを設置し、またより多くの給水施設を設置するために、ユニセフは6月から11月までの間に75の試井を掘削する契約を民間企業と結びました。
国内避難民の居住地では、公衆衛生の問題が深刻化しています。ユニセフ、政府の厚生機関、およびNGOはトイレの設置を進めていますが、さらに数千のトイレが必要とされています。ユニセフは、民間の業者を通じて、これからの90日間で2000基のトイレを設置する予定です。しかしそれでも需要をすべて満たせるわけではありません。他のパートナーにもこの分野での積極的な関与が求められています。
必要な支援額 |
米ドル |
水と衛生 |
6,298,000 |
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(3)基礎教育
基礎教育は、心に深い傷を負った子どもたちに日常の感覚や心の安定を取り戻させる最も大切な活動のひとつです。ユニセフは158の仮設教室を建設し、3万人以上に学用品を提供する予定です。1年生に登録された子どもが他のどの学年よりも多く、それは、初めて学校に通う機会をもった子どもたちが大勢いるということを意味しています。新たなダルフール危機の中で基礎教育は唯一の希望の兆しなのです。
(4)子どもの保護
ダルフールの子どもたちは非常に深刻な精神的ダメージや搾取を経験しています。両親や親類が殺害されるのを目撃したり、レイプされたり、社会サービスの欠如からくるストレスに苦しめられています。子どもたちが生活の中で日常の楽しみを再び見つけ出せるよう、ユニセフは地域のNGOを通じて5000人の子どもたちに対して遊びやレクリエーション活動を計画しました。レイプやその他の虐待という問題を受けて、ユニセフは性的またはジェンダーが原因となった暴力に関する警察官を対象とした研修プロジェクトを始めました。人道支援に携わる人々のセッションもすでに実施され、今後はさらに拡大していく予定です。また、レイプの犠牲となった人たちの精神的、身体的回復を支援するために専門医の紹介システムを立ち上げる予定です。
(5)シェルターと救援物資 ダルフールの国内避難民100万人に対してシェルターと救援物資を提供するために、ユニセフは2,237万8,000米ドルが必要であると訴えています。配給の第一段階として、プラスチックシートと毛布が現物で支給されましたが、幅広い分野での追加物資が必要とされています。その中には、石鹸、缶、バケツ、蚊帳、そしてさらなるシェルターや毛布が含まれています。国連人道問題調整局の指揮の下、そして国連合同物流センターの支援を得て、共通の配給システムが立ち上げられました。CAREは、国内避難民の居住地への輸送を組織しました。そして、その居住地では、パートナーのNGOが配給に携わっています。雨季が近づいているので配給は一刻を争う状況です。ひとたび雨が降ったらびしょぬれになってしまうような簡素なわら作りの小屋で数十万人の人々が現在、暮らしています。
必要な支援額 |
米ドル |
シェルターと救援物資 |
22,378,000 |
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ユニセフの行った活動によって、ダルフールで暮らす数千人の命が救われました。しかし、まだ多くの人が助けを必要としています。この報告書で紹介されたユニセフの活動は、子どもたち、そして戦争や故郷を追われたことによるトラウマの中で生き抜いている人々を支援するためのものです。皆様からの支援は今よりも多くのユニセフの職員が現場へ出向くことを可能にし、また、さらに多くのパートナーと協力して、プライマリーヘルスケア、基礎教育、安全な水と衛生、子どもの保護活動、救援物資をダルフールの子どもたちに届けることを可能にするのです。
今後のユニセフの主な活動 |
90日
6月〜9月 |
雨季後
9月〜12月 |
保健と栄養 |
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はしかの予防接種を受けた生後6ヶ月から15歳までの子どもの数 |
2,260,000 |
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ビタミンA補給を受けた生後6ヶ月から4歳11ヶ月までの子どもの数 |
784,000 |
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破傷風の予防接種を受けた妊婦の数 |
22,000 |
22,000 |
支援もしくは設立された医療センターの数 |
25 |
25 |
保健教育を受けた人数 |
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300,000 |
研修を受けた保健員数 |
50 |
50 |
技術、医薬品、医療器具の支援を受けた保健所の数 |
100 |
100 |
水と衛生 |
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修復された給水所(各所で500人が恩恵を受けた) |
200 |
200 |
修復された水場(各所1000人が恩恵を受けた) |
5 |
4 |
モーターの設置された手動式井戸(各所4000人が恩恵を受けた) |
2 |
4 |
新たに設置された給水所(各所500人が恩恵を受けた) |
100 |
125 |
新たに設置された衛生施設(各所20人が恩恵を受けた) |
2000 |
1200 |
環境を整備されたキャンプの数 |
10 |
10 |
(タンカーなどの)一時的な給水でカバーされた人口 |
50000 |
50000 |
毎月、適量の浄水錠剤を受け取った世帯数 |
20000 |
20000 |
ポンプの構造についての研修を受けた人数 |
600 |
600 |
給水設備の稼動や維持について研修を受けたコミュニティーの指導者 |
60 |
40 |
衛生教育の研修を受けた社会推進員 |
200 |
200 |
衛生教育の研修を受けた人数 |
500000 |
1000000 |
食料品以外の配給とシェルター |
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毛布、マット、石鹸、カン、ばけつ、ポット、蚊帳、衣類、衛生用品
(国連とケア提供)の配給を受けた世帯数 |
114000 |
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教育 |
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学用品を提供された子どもの数 |
15730 |
15730 |
教育教材の提供を受けた教師の数 |
268 |
268 |
学習資材を配布されたクラス数 |
250 |
250 |
地雷、性的搾取を含む研修を受けた教師の数 |
255 |
255 |
修復、もしくは仮設された小学校の数 |
158 |
31 |
公衆衛生の教育を受けた生徒 |
7078 |
7078 |
レクリエーション用の教材を配布された学校 |
80 |
80 |
子どもの保護 |
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子どもと国内避難民の保護に関わる実地訓練を受けた人道支援担当者 |
1000 |
1000 |
人道危機の中で性的搾取から子どもと女性を保護するための訓練を受けた人道支援担当者 |
500 |
500 |
国内避難民の子ども達のために設立されたレクリエーションセンター |
6 |
6 |
レイプや性的暴力からの保護に取り組んだ警察 |
200 |
200 |
レイプ被害者の心身回復を支援することを目指して構築された専門医への紹介システム |
3 |
3 |
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必要な支援額:総計 3957万6000米ドル
はしかキャンペーン |
2,100,000 |
保健と栄養 |
5,700,000 |
水と衛生 |
6,298,000 |
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シェルターと救援物資 |
22,378,000 |
教育 |
1,600,000 |
保護 |
1,500,000 |
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