HOME > 世界の子どもたち > 緊急支援情報 > スーダンダルフール 地域緊急支援2006/10/21
財団法人日本ユニセフ協会




長引く紛争の中、安全な場所を求めて

【2006年10月21日、南ダルフール・ニヤラ発】

2004年以来、ダルフール南部には、紛争から逃れてきた人々のための避難民キャンプが、39ヵ所以上設置されています。その中のひとつ、オタシュ避難民キャンプには、最近の紛争の激化を受けて、安全な場所を求める新たな避難民が到着しました。以前にこのキャンプにやってきた避難民達と同様、彼らの経験もまた、語るにはあまりに残酷で絶望的なものです。

茂みの上に無造作に置かれ、ひらひらと風に揺れるカラフルな布。オタシュ避難民キャンプに向かう車から、最初に目にする光景です。男性も女性も、棒や小枝をくくり、一見すると大きな昆虫のようにも見える物体を作っています。これは、完成すると、彼らの新しい住まいになります。遠くから見えたカラフルな布や、山積みになっているボール紙やビニール袋、ござなどは、木の枝で組み立てられた骨組みを覆うためのものです。新しい住まいに運び込まれるまで、避難時に持ってきた物は、地面に放り投げられています。大人たちが働いている間、赤ちゃんや幼い子どもたちは、照りつける太陽の下で、泣きながら横たわったり座ったりしています。疲労がたまり空腹のまま、子ども達はただ、親たちが新しい住まいを作り終わるのをじっと待つことしかできないのです。

© UNICEF/Phuong T. Nguyen/Sudan
枯れたバオバブの木の下に僅かにできた日陰に集まる子どもたち

少し離れたところに、現地のNGOによって、ユニセフが活動するためのテントが2つ設置されました。これらの移動式の診療所テントの設置は、体力的にも精神的も疲れきった新たな避難民が、オタシュ避難民キャンプに到着して数日たってからでした。この診療所には、医者、医療助手、予防接種担当者、薬の受け渡し担当者がそれぞれ1人ずつ常駐しています。先週のオープンから、診療所は1日あたり300人もの患者を診ています。

出血性の下痢、マラリア、腸内感染、眼・皮膚疾患などが、新たに到着した避難民の命を脅かしています。オタシュ避難民キャンプに到着する人々は、徒歩やロバ、トラックを使って長い時間をかけて旅をし、その途中で雨期の終わりに降った雨がたまってできた水溜りの水を飲んでいました。そのため、病気の中でも一番多いのは下痢です。

幼い子どもたちは、母親や保護者から片時も離れようとしません。多くが、銃撃や焼き討ち、強盗を目撃しただけでなく、武装した男達が家を襲ったり、家族に対して肉体的・性的暴力をふるったりするのを目の当たりにしました。また、その後の混乱で、ただ命を守るために一所懸命逃げるうちに、多くの子ども達は家族と離れ離れになってしまいました。家族と一緒に逃げることができたり、オタシュのような避難民キャンプで数日後に家族と再会することができたのは、運のいい一握りの子ども達だけでした。

© UNICEF/Phuong T. Nguyen/Sudani
緊急の学校用テント内に設置された簡易移動式診療所では、一日あたり300人の患者を診ています

避難民キャンプでの生活では、ある程度の安全は保障されているものの、新たに到着した避難民は不安を抱えています。「国際社会の支援があれば、この地域の安全が保障される、少なくとも今よりは安全になると聞いています」

基本物資を供給したり、安全を保障してほしいという避難民たちの期待は、特にユニセフなどの支援組織に向けられています。しかし、安全な領域は限られています。なぜなら、女性は特に、キャンプの外に出ると襲われる危険があるからです。避難民たちによれば、ここのところ、4人の女性と男の子1人が薪を探しにキャンプの外に出たきり、戻ってこないのだといいます。彼らは、村を襲ったグループによって、もともと住んでいた家が乗っ取られていることを恐れており、避難民たちは、彼らが村に戻ることはないといいます。

病気と飢えを瀬戸際で防ぐ

© UNICEF/Phuong T. Nguyen/Sudan
女の子と女性にとって、避難民キャンプでの生活は特に危険なものになります。キャンプの外を徘徊する武装した男達によるレイプや誘拐の被害者になりやすいからです。

ユニセフは避難民キャンプで生活する人々のニーズに迅速に対応できるように、ビニールシート、石鹸、基礎医療キット、栄養強化食品、手動式のポンプ、学習用具などの物資を備蓄しています。戦闘が続くことで、住むところを失ったり、紛争を逃れてきた人々が、ダルフール全域にある100ヵ所以上の避難民キャンプへこれからもやってくるだろうといわれています。

ユニセフはパートナー組織と協力して、水と衛生、保健、栄養、子どもの保護と教育の分野における主要なサービスを提供しています。多くの子ども達にとって、心に傷を負うようなつらい経験をした直後に、保護された環境を与えることが重要になってきます。教育を受けたり、心理社会的ケアやレクリエーション活動への支援を受けたりすることで、子どもたちは、少しだけ紛争のことを忘れ、「日常」を取り戻すことができるのです。これが、ユニセフとパートナー組織が、学校や子ども達のための遊び場を確保しようとする理由です。

新たに大量の避難民がキャンプに流入したため、オタシュ避難民キャンプに避難している人は5万3,000人に上り、感染症の流行の危険性が高まっています。ユニセフは共有溝式トイレを設置したり、キャンプ内で公衆衛生教育を行っています。水はいくつかの試錐孔から供給されており、現在、避難民キャンプへの給水量を増やすために、給水ネットワークを拡張する活動が行われています。今のところ、新たに到着した避難民への対応として、キャンプ内に設置された貯水タンク3つ分の水をトラック輸送しています。給水ポイントがキャンプ中に設置されたおかげで、避難民一人ひとりの水の入手が容易になりました。

親と離れ離れになった子ども達への支援

ユニセフは、村が襲われた後、混乱の中、親と離れ離れになってしまった子ども達の支援を行っています。このような子どもは、キャンプにつくと同時にひとつのグループに入り、家族が見つかるまでの間、必要なケアや支援を受けます。ユニセフの支援で、3週間で36人の子どもが家族と再会することができました。

太陽が水平線に消えてゆくと共に、またオタシュ避難民キャンプの一日が終わります。ユニセフの支援チームがキャンプを離れる準備をしていると、恥ずかしそうな表情を浮かべた女性が仮設の住まいから顔を出したり、何人かの子どもたちが興奮気味に騒ぎ始めました。ダルフールの人々からは、驚くほどに強い、どんな困難からも立ち直る人間の意志を感じます。

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