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財団法人日本ユニセフ協会





スーダン情報
空輸されたワクチンが子どもの命を救う

【2007年12月6日 北ダルフール、ダヤ村発】
タニア・マックブライド ユニセフ・スーダン事務所

© UNICEF Sudan/2007/Tania McBride

ダルフールの南西部、ジェベル・マッラ地域には、広大な砂漠と見捨てられた暗く汚れた村の景色が広がります。しかし、歩みを進めると、いつの間にか地形が変わりました。鋭くごつごつした山々が砂漠から突き出し、起伏に富んだ丘には2003年以来の紛争で破壊された小さな集落がいくつかあります。

ユニセフは、ロワッタ、ロケロ、ダヤ村に飛び、予防接種キャンペーンを立ち上げました。この訪問は、過去4年間の紛争によってほとんど足を踏み入れることのできなかった地域での基礎保健ケアサービスの再開という重要な意味をもっています。予防可能な病気に対する定期的な予防接種もその一環です。

ジェベル・マッラでは、5歳未満の子ども18,000人以上を対象に予防接種キャンペーンが行われます。予防接種は、ダルフールの子どもの死亡率減少に大きく影響しています。ユニセフは、様々な病気が原因となり、ダルフールに住む5歳未満の子ども達が毎日75人死亡していると推測しており、このような予防接種キャンペーンは、死亡率を大幅に減らすための第一歩となっています。ワクチンの空輸によって、一週間の子どものためのポリオ予防接種キャンペーンが展開されました。さらに、予防接種キャンペーンの第二弾として、先月ジュベル・マッラでは14,000人以上の子どもが予防接種を受けることができました。

© UNICEF Sudan/2007/Tania McBride

ヘリコプターがダヤ村—麦わらや竹でできたトゥクルという伝統的な小屋の集落—の上空を旋回すると、女性や子どもたちが家や畑から群れをなして集まってきて、私たちに挨拶してくれました。埃が舞うほど多数の人が集まり、村全体が集まってきたようでした。これはコミュニティにとってとても重要なイベントなのです。ユニセフは、ジェベル・マッラで未だ人道支援を続けている数少ない団体の一つです。

子どもが最初に近づいてきてささやきます。「カワイガ カイフ?(外人さん、お元気ですか?)」彼らの外見で、食料や水などの基本的な資源が不足しているかがわかります。擦り傷や開いた傷が感染して膿んでいます。彼らの親もまた、栄養不良になっていることが見てわかります。私が話をした若い母親は白い歯茎をしていました。葉酸欠乏症と栄養不良の表れです。

アブドゥル・ワヒッド率いるスーダン解放軍(ダルフール和平協定に調印していない反政府グループの一つ)の代表が群集の中から歩み出ました。ユニセフとジェベル・マッラのこういった団体との透明な活動関係は最も重要になります。彼らのような団体が話し合いを行い、最も必要とされる保健物資や医療の援助へのアクセスを可能にするからです。村の伝統的なリーダーは助っ人を集め、ポリオのワクチンが入った重いクーラーボックス、抗マラリア薬や下痢止めの薬、蚊帳などを仮設診療所へ運ばせました。

困難を伴うワクチンの運搬

予防接種キャンペーンが保健事業の柱です。ワクチンを全て提供する他、ユニセフは132人の予防接種員を訓練しました。ジェベル・マッラへは道路が通っていないため、物資は空輸しなければなりません。物資がここに着いても、それをヘリコプターでも届けられない村へ運ぶのは非常に困難です。予防接種チームは、174の村のすべての子どもに予防接種をするため、ラクダとロバを借りてワクチンを運びます。ワクチン貯蔵場所は原始的で、多くの場合、粗末な掘っ立て小屋です。

この事業を管理するユニセフのアバス・テラブは、ジェベル・マッラの状況を身をもって理解するために実際にこの地で生活しています。基本的な設備はないものの、保健員や地域の人々の熱心さに、彼のやる気もかきたてられています。しかし、彼は全体的な健康状態を懸念しており、村人の気力も衰えていると言います。

死亡率を下げるために

「子どもたちは紛争のトラウマを抱えていますが、これは実際に危険な状況が続く中、また現場で活動する援助機関が少ない中では取り組める問題ではありません。」アバスは言います。ユニセフは物資を送り届けていますが、緊急の治療は徒歩7時間もかかるところでしかできません。中心から離れた多くの村の学校の教員たちは給料をもらっていません。(給料をもらっている数少ない教員は、一般的に自分が生活し働く村に寄付しています。)学校に入学する多くの生徒は、家族を支えるための仕事を探さなければならないので、学校をやめざるをえなくなります。

多くの家族にとって、自給自足農業が少ない収入となっていますが、それだけでは乳幼児が必要とする栄養が足りません。私は、一人の若い女性—未亡人で8人の子どもを養う母親—に会いました。2歳になる娘がひどい頭の傷を抱えて泣くのです。しかし母親にはお金がなく、この子が緊急に必要な手当をできる病院を探す手段もないのです。

ユニセフはこれらの難題を受けて立つことにしました。ダヤ村とロワッタ村でワクチン用の太陽光冷蔵庫2台や薬の貯蔵庫を設置するなど、地域の対応能力を高める取り組みが行われています。一ヶ月に1,000人分の基本的な医療物資を提供できる基礎保健ケアキットも配布されました。

ダルフールの4年間に及ぶ紛争は市民社会を破壊し、特に保健インフラが崩壊し、多くの子どもたちの命が奪われました。これらの必要不可欠なサービスを再開させることが、この地域の可能性の多くを奪った高い死亡率を変えるために重要な機会となります。

ポリオ予防接種キャンペーンの成功と医療品の配布が、ダルフールの子どもたちの命を救う上でとても重要になってきます。しかし、集まった村の住人を見回すと明らかなのは、孤立した地方の人々のためにもっと多くの事ができ、しなければならないという事実です。ヘリコプターが砂埃を上げながら離陸したとき、若い母親と彼女の悲嘆にくれた娘が私の脳裏に焼きついていました。

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