|
シリア緊急募金 第40報
|
© UNICEF Video |
シリアとトルコの国境沿いにある避難民キャンプには、7,000人の子どもを含む1万2,000人が避難している。 |
バブ・アルサラマ避難民キャンプで、7ヵ月間もの長い難民生活を送っているコーラ・バッカルさんは、家族が身を寄せるテントの中で静かに座っています。
シリア北部、トルコとの国境沿いに位置し、泥のついたテントが並ぶバブ・アルサラマ避難民キャンプの医師や避難民キャンプを管理している関係者によると、この避難民キャンプでは、7,000人の子どもを含む1万2,000人が避難生活を余儀なくされています。
バッカルさんの14歳の娘のワッファさんは、成長ホルモン欠損症に苦しんでいます。アレッポの自宅が爆撃を受け、彼女の処方されていた薬もなくなってしまいました。現在、バッカルさんには、娘さんが必要としている薬を用意するだけの経済的な余裕はありません。そのため、バッカルさんの娘さんは過去7ヵ月間にわたり、成長に支障をきたしている恐れがあるのです。
「医師の話では、脳への影響はないということでしたが、大きくなっても、娘の体は小さいままかもしれません」バッカルさんは、最後の薬が入っていた空のビンを握り締めてこう話しました。
ワッファさんはじめ、何千人ものシリア難民の子どもが、病気に陥っていたり、体調を崩しているにもかかわらず、十分な治療を受けていない状況です。
© UNICEF Video |
避難民キャンプの子どもたちに感染症が蔓延しているが、医療ケアはそのニーズを満たしていない。避難民キャンプ地に設置されている臨時の学校には、物理的あるいは心理的な影響から、学校に通っている子どもの割合は40パーセントに留まっている |
プレハブの建物の中では、バラア・ナセル医師が、骨折して泣いている幼い男の子の腕に包帯を巻きつけていました。ナセル医師は、医薬品と手洗い場の不足、不衛生な環境に加え、過密状態の生活環境が、子どもたちの健康に悪影響を及ぼしていると話します。一つのテントに、5人から10人の子どもたちが身を寄せ合って眠りについているのです。
「この避難民キャンプの子どもたちの大きな問題は、恐らくリーシュマニア疥せん、真菌感染症といった皮膚病の問題です。 清潔なお風呂や衛生設備(トイレ)が整っていないだけでなく、適切な衛生習慣についての教育も行われていませんから」(ナセル医師)
子どもたちは、平均で1ヵ月に10日間、病気に陥っています。
また、ナセル医師は、深刻な精神的トラウマの兆候として、15歳位の子どもたちに夜尿症が広がっていると付け加えました。
「もし、みなさんが5歳の子どもだとしたら、爆発やロケット、銃弾の音が鳴り響いている状況がどんなに恐ろしいものなのか想像できると思います」「今や、飛行機の音は、子どもたちにとって非常に恐ろしいものです。もしも今、飛行の機の音が聞こえたら、全ての子どもたちがトルコの国境めがけて逃げ出すのです。このような状況がお分かりいただけるでしょうか。子どもたちは怯えています」
学校はありますが、心理的あるいは物理的な理由から、学校に通っている子どもの割合は、わずか40パーセントに過ぎません。
この地域周辺の避難民キャンプの状況は厳しく、シリア国内では紛争が激化。その一方で、人道支援が必要な危機的状況は増幅し続けています。国連の推定では、少なくともシリアの400万人は人道支援が必要な状況に置かれています。そのうち少なくとも半数は子どもたちです。
暴力が続く中、こうした難民の数は増え続け、難民に対する支援のニーズが日々高まっています。
ユニセフは、パートナーと共に、シリア各地で支援活動を展開していますが、支援を必要としている全ての人々に支援を届けるためには、さらなるアクセスの確保が求められています。
ユニセフは、パートナーと共に400万人に飲料水と家庭用水を提供。130万人の子どもにはしかの予防接種を実施。7万5,000人以上の子どもが学習プログラムに登録されました。
しかしながら、大きな資金不足により支援活動は思うように進んでいません。現在までに確保できているのは、必要としている資金の約20パーセントに過ぎません。資金が集まらなければ、シリアの子どもとその家族の命を守る活動は、非常に厳しい状況に置かれてしまいます。中断されてしまうプログラムも出てくる見込みです。