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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第66報
新たな紛争の高まり、巻き込まれる40万の難民

【2013年10月14日 シリア・ホムス発】

© UNICEF/NYHQ2013-0548/Hassoun
ホムス近郊の避難所では、避難した家族が夕食を準備しています。紛争が長引くシリアでは、ますます多くの人々が難民となり、深刻な人道危機が続いています。

(現地レポート:アブドルカディール・ムッセ ユニセフ緊急支援専門官)

ぞっとするような静けさがシリア西部にあるホムス州郊外のAl Wa'er地区を覆うなか、私たちは紛争に巻き込まれたおよそ40万人の難民が暮らす地域を訪れました。

私は、ユニセフが国連食料基金(WFP)や国連人道問題調整事務所(OCHA)、国連安全保安局(UNDSS)、シリア・アラブ赤新月社と共に実施している、人道支援アセスメント・ミッションに参加しています。

Al Wa'er地区は、ここ2週間、日常的な砲撃の脅威にさらされています。スナイパーが狙撃しようと待ち構えている、極めて緊張の高まっている地域もあります。 国連職員がこの地域に入るためには、関係する全ての組織から通行許可をとらなければなりません。私たちが訪れた3時間、砲撃は一時的に停止され、住民にとってはほんのひと時の休息となりました。

しかし、私たちが去った後、また新たな砲撃の音が鳴り響き、それまでの静寂が破られました。

悪化する状況

© UNICEF/NYHQ2013-0205/Morooka
ホムスの避難所で、医師が幼児を検診しています。ユニセフは、避難所を日常的に訪問して医療支援や子どもの栄養状態を確認している2つの保健チームを支援しています。

ホムスで危機が始まったとき、多くの家族は逃げ惑い避難先を求め、当時は静かな場所であった、市中心部から北西に外れたAl Wa'er地区に身を寄せました。しかしながら、紛争がますます広がる状況下で、Al Wa'er地区は避難民の家族で溢れかえり、今では人口のほぼ半数を占める20万人が避難民です。

この地域は大部分が封鎖され、外からの出入りには、たとえ人道支援にかかわるスタッフや救援物資の運搬であっても、厳しい制限が設けられています。

私が前回ここに来た5月以降、明らかに、より多くのビルが破壊されています。道には生ごみが積みあがり、子どもたちの身体は虫に刺された跡で覆われています。保健や教育といった必要不可欠なサービスは、悪化の一途をたどっています。

地域のパートナーが運営するある病院は、5ヶ月前は患者であふれかえっていました。今日、その病院は閉鎖されようとしています。院長は私に、出産のために病院を訪れる母親の数は約70パーセント減った、と語りました。医療物資は限られています。3分の1のスタッフがこの地区を去り、その一方、残っているスタッフはほとんど仕事をする余裕がありません。

ユニセフは、避難所を日常的に訪問して医療支援や子どもの栄養状態の調査を行っている2つの保健チームを支援しています。チームが活動し始めた3月以来、およそ7万2千人の子どもたちがその恩恵を受けました。

この紛争は、子どもたちへの教育にも、暗い影を落としています。Al Wa'er地区にある11の学校にはかつて7万人の子どもたちが通っていましたが、今ではそのうち10校が避難所として使われています。たった一校まだ運営されている学校では、およそ2千人の子どもたちが勉強していますが、そこでも数限られた教室が緊急の宿泊場所として使われています。

授業は確かに行われてはいますが、超満員で全員が教室に入りきれません。教会の地下では500人の生徒が勉強しています。他の子どもたちは、厳しくなる寒さや流れ弾の危険にさらされながらも、屋外や学校のベランダで学んでいます。実際に怪我をした子どもたちもいます。

避難所でユニセフは、1年生から6年生までの子どもたちが紛争によって中断された学習を取り戻せるよう、心理社会的なサポートも行いながら、補修クラスの実施を支援しています。

過密な教室

© UNICEF/NYHQ2013-0130/Morooka
ホムスの避難所で補修授業を受ける避難民の子どもたち。この補習授業は、紛争によって中断された学習を子どもたちが取り戻せるよう、ユニセフが支援しています。

教室の大混雑を解消し、より多くの子どもたちが学べる機会を持てるよう、ユニセフは地域で活動するパートナーと、一時的な学習スペースを設置するよう交渉しています。加えて、13のプレハブ教室がここに運ばれてくることになっています。

Al Wa'er地区に避難している人々のほとんどが、ホストファミリーの家、あるいは借りたアパートに住んでいますが、およそ1万3千人の避難民は、学校や高層ビルに設置された共同避難所38カ所に身を寄せています。

私は、まだ建設途中のビルにある避難所を訪ねました。最低限の設備ですが、清潔です。プラスチックの板で区切られている部屋もあって、最大で8人が床に敷いたマットの上で寝ることができます。ただ、多くの窓やドアは開いたままで外気を遮れないため、冬の到来を考えると深刻な懸念材料です。

私がユニセフが支援するレクリエーションのクラスで話した子どもたちは、砲撃の音が聞こえたら、いつ何時であっても地下に駆け込むんだよ、と語っていました。

私が出会った母親たちの最大の懸念は、砲撃のさなかで子どもたちの安全を確保することです。特にこの避難所は、戦闘の前線に近く、いつでも攻撃される可能性があります。子どもたちの防寒服が必要になる冬も、もうひとつの主な課題です。

「冬の間、仮にお湯がなければ、どうやって子どもたちを衛生的に保てばいいのでしょう?」と一人の母親が尋ねました。

ユニセフが支援するAl Wa'er地区での緊急支援は、献身的に支援にあたるシリア・アラブ赤新月社と、パートナーのNGO団体を通して提供されています。それらの団体の職員たちは、日々自らの命を危険にさらしながらも、支援を必要とする子どもたちに命を守る支援を届けています。 例えば保健チームは、先月だけで4回砲火を浴びています。ほんの数日前、パートナー団体のひとつが、Al Wa'er地区にある事務所をロケット弾で攻撃されました。幸運にもケガ人はいませんでしたが、コンピューターや大切な記録が破壊され、このプログラムの遂行を危険にさらしました。

Al Wa'er地区のケースは、緊急支援をする際に私たちが直面する、考えきれないほどの困難を露呈しています。しかし、私たちとパートナー団体は、子どもたちがこのような絶望的な状況から抜け出せるよう、支援を届ける義務があるのです。