HOME > 世界の子どもたち > 緊急支援情報 > シリア緊急募金
財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第70報
アンソニー・レーク事務局長がシリアを訪問
子どもたちへの予防接種は、緊急かつ最優先課題

【2013年10月29日 シリア・ダマスカス 発】

2日間の日程でシリアを訪問したユニセフのアンソニー・レーク事務局長。シリア難民の母親と子どもたち、そして現地で命を守る支援を続けている人々と面会しました。

2日間の日程でシリアを訪れたユニセフのアンソニー・レーク事務局長は、最も困難な状況にあるシリアの子どもと女性に、人道支援を行っているパートナーや地域で活動する団体、ボランティアの人々の献身に感謝の意を表しました。

避難民の母娘

© UNICEF Syrian Arab Republic/2013/Sanadiki
シリアの保健センターでは、保健員がポリオワクチンを投与しています。現在実施している予防接種キャンペーンは、240万人の子どもたちに命を守るワクチンを届けます。

訪問のなかでレーク事務局長は、経済的および社会的混乱により安全が保障されない状況下で、何十万ものシリアの家族が直面している深刻な問題に言及しました。シリア国内では、子どもたち300万人を含むおよそ680万人の人々が、紛争の影響を受けています。一方で、国内避難をしている子どもたちは、およそ200万人にのぼります。

レーク事務局長は、子どもたちへの予防接種が行われていた、ダマスカスのthe Abou Dhar Al Ghifariプライマリ・ヘルスケアセンターで、避難民の子どもと母親たちに会いました。

このセンターにきた家族の多くは、ダマスカス近郊のダラアやモアダミエから避難し、集合型シェルターや親戚の家で暮らしています。

母親たちは子どもの将来をとても不安に思っています。しかし予防接種の重要性に対する理解が広がってきていることも確かです。自分の子どもに予防接種を受けさせようとここへ来た母親たちは、危険な状況下で一命を取りとめた話や逆境に立ち向かう強い意志を、他の母親たちと共有しています。

母親の一人のラウダは1年半前にダラヤにある家を出ました。自分の母親と3人の子どもを抱えながら、避難先となる親戚宅に余計な負担がかからないように、数週間毎に住処を替えています。

ラウダは、来年小学校に入学する年齢の娘ラマを心配しています。「ラマを小学校に通わせたいのです。そして小学校に入学する時期までには、行方がわからなくなっているラマの父親について良い便りがあればいいのですが・・」とラウダは言います。

新たな課題

© UNICEF Video
レーク事務局長とシリア・アラブ赤新月社(SARC)の若いボランティアたち

現在も続く紛争により、プライマリ・ヘルスケアは著しく崩壊しています。保健省によると、2013年7月時点で、公共の病院の60%と保健センターの34%が破壊されています。保健員などの人材不足も深刻で、ホムスを含むいくつかの地域では、医師の半数が国外に避難しています。

封鎖された地域や治安が悪化している地域では、子どもたちや家族に支援を届けることがますます困難になっています。これは予防接種を受ける子どもたちにとって、重なる試練です。また、シリア東部ではWHOにより10件のポリオの症例が報告されました。

「子どもたちが予防接種を受けることは当たり前のことで、そこに政治や軍事の影響があってはなりません。1999年以来初めてポリオの感染が確認され、その感染が広がりつつあるシリアでは今、すべての子どもたちにポリオや他の予防接種を届けることが、緊急であり最優先すべき課題です。なぜなら、これはシリアだけでなく、全世界の問題だからです」(レーク事務局長)

予防接種キャンペーンを全力で

ユニセフとWHOは保健省の予防接種キャンペーンを支援しています。「このキャンペーンでは、160万人の5歳未満の子どもたちへのポリオ・ワクチンの投与を含め、240万人の子どもたちに命を守るために必要な予防接種を実施します」と話すのは、レーク事務局長に同伴した、ユニセフ・シリア事務所のイマン・バーナシ 子どもの保護・保健担当官です。

2013年、ユニセフはパートナーとともに、100万人を超える子どもたちに、はしか、おたふく、風疹、ポリオの予防接種を支援しました。また、ユニセフは1000万人の人々が安全な水を使えるように支援しています。

保健センターでは、レーク事務局長がシリア・アラブ赤新月社(SARC)の若いボランティアと面会し、彼らの勇気と毎日の献身を称えました。「あなた方の日々の献身に敬意を表します。そして、どれほど感謝してもしきれません」とレーク事務局長は若きボランティアの人々に伝えました。

ユニセフはパートナーとともに、シリア国内各地において、安全確保と実施可能性を考慮した上で可能な限りの緊急支援を広げています。

pdfシリア危機 2年レポートはこちらから[1.96MB] »