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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第78報
教育を受けられない子ども300万人
シリアの子どもたちへの教育、初の報告書

【2013年12月13日 ジュネーブ・ニューヨーク・アンマン発】

シリアの子どもたちの教育状況が、地域内で最も急激に低下していることが、13日発表の報告書「シリア危機:中断された教育-学齢期の子どもたちのために世界的な行動を(原題:Syria Crisis: Education Interrupted - Global action to rescue the schooling of a generation)」のなかで述べられています。

本報告書では、2011年以降、300万人近いシリアの子どもたちが、戦闘によって教室が破壊されたり、恐怖のあまり通学ができず、家族と国外へ避難し、学業を中断せざるを得ない状況が強調されています。紛争が始まる前、数十年に渡って積み上げられてきたシリアの教育システムは、紛争後のたった3年弱で倒壊したのです。

倒壊した教育システム、出席率6%の地域も

2011年に紛争が始まる以前は、初等教育(小学校)出席率が97%を誇っていたシリア。本報告書は、紛争よって著しい影響を受けたシリア国内の教育状況をまとめた初の報告書です。

1,000日以上に及ぶシリア内戦は多くの人々を殺傷し、何百万人もの子どもたちから、校舎や教師、教育の機会を奪っています。限られた状態ながらも教育を受けられる子どもがいる一方、家族を支えるために学校を退学し、働かざるを得ない子どももいます。

報告書では、学校が破壊されたり、あるいは避難所として使われているため、シリア国内では5校につき1校が使えない状況を指摘。シリア難民を受け入れている周辺国では、50〜60万人のシリア難民の子どもたちが学校に通えていません。

激しい戦闘が発生し、その影響を最も受けている地方のラッカ、イドリブ、アレッポ、デリゾール、ハマ、ダラ、ダマスカス郊外などでは、出席率が6%にまで落ち込んでいるところもあります。

紛争前のシリアは、教育分野では周辺地域内のリーダー的存在でした。しかし、3年もかからずに教育状況は大幅に後退、このままでいくと、将来、悲惨な結果を招くことは避けられません。

通学・就学を阻む要因

© UNICEF/NYHQ2013-0563/SHEHZAD NOORANI
避難先のヨルダンで、教師の周りに集まり勉強するシリア難民の子どもたち

報告書は、短期間でこれほどまでに教育が衰退した複数の要因を挙げています。紛争が激化するなか、多くの人が家を失い避難したシリア。教師は殺害され、学校は被害を受け、あるいは、本来教育を提供する場所が避難所として使用されている結果、子どもたちが学校へ通うのが困難となりました。通学途中の子どもの安全を懸念し、自宅に置いておくほかないと、多くの保護者が訴えています。

また、避難先の周辺国でも、学校に通えないシリア難民の子どもたちがいます。周辺国では言語や方言、カリキュラムが異なり、学習スペースは限られるか、あるいは全くありません。また、身の安全や貧困、もともと住んでいる住民との緊張の高まりなどの要因もあります。その一方、受け入れ側の子どもたちや教師にも影響が出ています。シリア避難民の子どもたちを受け入れたため、教室はあふれかえり、既存の教育システムへの負荷は高まるばかりです。

提言: ただちに行動を

現状を反転させるために、報告書では直ちに次のような行動をとるべきと提言しています。

  • シリア国内の教育インフラの保護 軍事目的で学校を使用することをやめること、学校を平和な場所とし宣言すること、学校の保護を妨害する勢力に責任を負わせること
  • 難民を受け入れている周辺国の地域社会に対し、国際社会からの投資を倍に 学習スペースを拡張し、新たに教師を採用し、地域社会が負担している受け入れ費用を削減すること
  • 革新的な方法でシリア難民の教育ニーズに応えること 例:避難先の国での就学・修了を、シリアでの教育制度での認証ができる公的な文書で証明するといった取り組み
  • 在宅学習や非公式教育センター、子どもの心のケアを行う「子どもにやさしい空間」のような取り組みを拡大すること

■参考情報:統計でみるシリアの教育状況(本報告書より抜粋)

  • 学齢期にあるシリアの子どもたちは480万人
    このうち、シリア国内では220万人が、周辺国では50万人が学校に通えていない
  • シリア国外では、学齢期で学校に通えていない子どもは、学校に通えている子どもよりもはるかに多い
    最も顕著な例はレバノンで、学齢期(5〜17歳)にあるシリア難民の子どものうち、80%が学校に通えていない
  • トルコとイラクでは、シリア難民の子どもの約3分の2が学校に通えていない
    一方、ヨルダンとエジプトでは、半数強が通学できている

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