|
シリア緊急募金 第127報
|
© UNICEF/Syria-2014/Rashidi |
ユニセフとWHOの予防接種チームからポリオの予防接種を受ける女の子。 |
報告書によると、シリア危機が発生する以前は99%だったポリオの予防接種率は、危機後には52%へと激しく低下しました。シリア国内の病院の少なくとも60%が破壊、あるいは損壊しています。現在でも運行できる救急車両は3分の1以下まで減っています。ワクチンの供給、予防接種実施に必要な車両、コールドチェーン(ワクチンの温度を適切に保ったまま輸送・管理する物流システム)の維持に必要な器具などが破壊され、もはや使えない状態になっていたり、失われたりしています。
「すでに人道危機下にあったシリアで、ポリオの発生が確認されました。この地域で長く忘れられていたポリオという脅威に対し、私たちは、かなり制限された資源で活動しなくてはなりません。ポリオは国境やチェックポイントというものには制限されず、急速に広がり、危機下にあるシリアだけなく、その地域一帯で生活する子どもたちに感染します」とWHOのポリオ撲滅・緊急支援部長のクリス・マヘール氏が述べます。
6,500万人を超えるシリアの子どもたちが今、命を守る人道支援を必要としています。シリア国内では、76万5,000人の5歳未満の子どもたちが、支援が届きにくい地域で暮らしています。武力衝突や何らかの制限によって、ワクチンなどの基本的な物資を含めた人道支援が、極めて届きにくい地域です。
© UNICEF/JORDAN2013/Sharpe |
ポリオの予防接種を受けた子どもの指に着けられる紫色の印を見せる、ヨルダンに避難しているシリア難民の子ども。 |
報告書には、シリアやイラクからポリオを撲滅するのは不可能ではない、と述べられています。撲滅のためには、次の行動が必要不可欠です。
「私たちの活動は、終息とは程遠いところにあります。これからの数カ月間、わたしたちはもっと多くの子どもたち、特に暴力が繰り広げられているシリアやイラクにいる子どもたちに、支援を届けなくてはなりません」と、カリヴィス代表は訴えます。
■参考情報
36のポリオの感染例がシリア国内で確認されている。うち25例はデリゾール、5例がアレッポ、3例がイドリブ、 2例がアル・ハサカ、1例がハマ。1999年以来、14年ぶりに報告された。この地域の国々に感染が広がるリスクは、依然として高いと考えられている。今後も、この地域で繰り返し予防接種キャンペーンが実施される予定。シリアでは、全国レベルの大規模なポリオ予防接種キャンペーンが今年10月と11月に、地方レベルでの大規模なキャンペーンが8月に実施される予定。
2014年3月30日、首都バグダッドのルサファ地域で暮らす子どものポリオ感染が発見されたことで、イラクの保健省がポリオの発生を宣言。翌月7日に同じくバグダッドで、ポリオによる麻痺症状を発症した子どもが、ポリオ感染2例目となった。
パキスタン由来のものと遺伝的に関連したポリオウイルスが、2012年12月にエジプトで、2013年にはイスラエルやウエストバンク、ガザ地区の汚水より検知された。同ポリオウイルスが検知されたなかで一番新しい汚水サンプルは、2014年3月30日にイスラエルで採取されたもの。