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財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー プレスリリース

国連子どもの権利委員会において、
日本政府による第2回報告書の審査が実施される

「子どもの権利条約」は、それを締結した国が定期的に国内の子どもたちの問題や子どもの権利を実現するために政府などが何をしたか、それによってどんな前進があったかを、国連の子どもの権利委員会に報告しなければならないと定めています。これに従い、今年1月28日、2回目となる日本政府からの報告の審査が、子どもの権利委員会でおこなわれました。(第1回目は1998年におこなわれました)
 日本政府は、子ども買春など性的搾取を罰するために「児童買春等禁止法」、子どもの虐待を防ぐために「児童虐待防止法」をそれぞれ策定するなど、法律整備を進めたこと、日本が国際援助のために世界でも最大の資金を出しており、その支援の多くを開発途上国の保健や教育のためにあてていることなどを報告しました。
 子どもの権利委員会は、こうした点を評価する一方で、日本が1998年の第1回政府報告審査の際、子どもの権利委員会から受けた勧告に対するフォローアップが不十分であること、子どもの権利条約の2つの選択議定書をまだ批准していないこと、子どもの権利に基づいたアプローチについてより理解を深め、それを実践する必要があることなどを含め、詳細で具体的な勧告を行いました。

子どもの権利委員会の総括所見原文(英語)
http://www.unhchr.ch/html/menu2/6/crc/doc/co/Japan%20CO2.pdf

第2回政府報告:原文
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/0111/index.html

国連・子どもの権利委員会の総括所見:日本(第2回)

日本語仮訳:子どもの権利条約NGOレポート連絡会議
*この翻訳は、子どもの権利委員会が2004年1月30日(金)正午前後(ジュネーブ時間)に公開・採択した未編集版にもとづく仮訳である。国連の正式文書化にされる過程で若干の技術的編集が施される可能性がある。なお、文中の「委員会」とは国連・子どもの権利委員会を、「条約」とは子どもの権利条約を、「締約国」とは日本を指す。また、「総括所見」(CONCLUDING OBSERVATIONS)は「最終所見」「最終見解」などと訳されることもある。

CRC/C/15/ADD.231
2004年1月30日

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「子どもの権利条約 第44条」にもとづいて締約国が提出した報告書の検討
子どもの権利委員会の総括所見:日本

1.委員会は、2004年1月28日に開かれた第942回および第943回会合(CRC/C/SR.942−943参照)において日本の第2回定期報告書(CRC/C/104/ADD.2)を検討し、2004年1月30日に開かれた第946回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、包括的な締約国定期報告書、および委員会の事前質問事項(CRC/C/Q/JAP/2)に対する詳細な文書回答が提出されたことを歓迎する。これらの文書により、締約国における子どもの状況がいっそう明確に理解できた。委員会はさらに、部門を横断した代表団について評価の意とともに留意し、かつ、率直な対話と、議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎するものである。

B.積極的な側面

3.委員会は以下の点に評価の意とともに留意する。

  1. 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(1999年)および児童虐待防止法(2000年)の制定。
  2. 児童の商業的性的搾取に対する国内行動計画の策定(2001年)。
  3. 青少年育成施策大綱の策定(2003年)。

4.委員会は、締約国が絶対額では最大の政府開発援助(ODA)拠出国であること、および、その援助の相当額が保健・教育を含む社会開発に配分されていることに、評価の意とともに留意する。

5.委員会は、締約国が、就業の最低年齢に関するILO〔国際労働機関〕第138号条約を2000年に、また最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関する条約を2001年に批准したことを歓迎する。

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C.主要な懸念事項および勧告

1.実施に関する一般的措置
(条約第4条、第42条および第44条6項)

委員会の前回の勧告

6.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/41/ADD.1)の検討後に行なわれた一部の懸念表明および勧告(CRC/C/15/ADD.90、1998年6月24日付)が立法上の措置および政策を通じて対応されてきたことに留意する。しかしながら、とくに差別の禁止(パラ35)、学校制度の過度に競争的な性質(パラ43)およびいじめを含む学校での暴力(パラ45)に関する勧告は充分にフォローアップされていない。委員会は、これらの懸念および勧告がこの総括所見においても繰り返されていることに留意するものである。

7.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念事項に対応するために、あらゆる努力を行なうよう促す。

宣言および留保

8.委員会は、第9条および第10条に関する締約国の宣言ならびに第37条(C)に対する留保について懸念する。

9.1993年の世界人権会議のウィーン宣言および行動計画(A/CONF.157/23)にしたがい、委員会は、締約国が条約に対する宣言および留保を撤回するよう求めた勧告を繰り返す。

立法

10.委員会は、条約の原則と規定が国内法に全面的に反映されていないこと(たとえばこの総括所見のパラ22、24および31参照)、および、条約は裁判所で直接援用可能であるものの実際には援用されていないことを懸念する。

11.委員会は、締約国が立法の包括的見直しを行なうとともに、条約の原則および規定ならびにそこに掲げられた権利基盤型アプローチとの全面的一致を確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。

調整および国家行動計画

12.委員会は、子どもと若者に関する政策を調整する権限を与えられた青少年育成推進本部が内閣府に設置されたこと、および、前述したように青少年施策大綱が立案されたことに留意する。しかしながら委員会は、青少年施策大綱が包括的な行動計画ではないこと、および、大綱の立案・実施への子どもおよび市民社会の参加が不充分であることを懸念するものである。

13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

  1. 青少年育成施策大綱において権利基盤型アプローチがとられ、条約のすべての領域が対象とされ、かつ2002年国連子ども特別総会の成果文書「子どもにふさわしい世界」のコミットメントが考慮されることを確保するため、市民社会および若者団体と連携しながら同大綱を強化すること。
  2. 新たに浮上する論点および問題が青少年育成施策大綱において効果的に対応されることを確保するため、市民社会および子どもとともに同大綱を継続的に見直すこと。

独立した監視

14.委員会は、条約の実施を監視する独立したシステムが全国規模で存在しないことを懸念する。同時に委員会は、3つの自治体が地方オンブズマンを設置したという情報、および、人権委員会の設置に関する法案が再提出される予定であるという情報を歓迎するものである。法案においては法務大臣の監督下にある人権委員会が構想されているという代表団の情報に照らし、委員会は、同機関の独立性について懸念する。加えて委員会は、計画されている人権委員会には条約の実施を監視する明示的な権限が与えられていないことを懸念するものである。

15.国内人権機関に関する一般的意見2号に照らし、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

  1. 計画されている人権委員会がパリ原則(総会決議48/134)にしたがって独立した効果的機構となることを確保するため、人権擁護法案を見直すこと。
  2. 人権委員会が、条約の実施を監視するという明確に定義された権限を有し、子どもからの苦情について子どもに配慮した方法で迅速に対応し、かつ、条約にもとづく権利の侵害に対して救済を提供することを確保すること。
  3. 自治体における地方オンブズマンの設置を促進し、かつ、人権委員会が設置されたときにはこれらの地方オンブズマンが同委員会と調整するための制度を確立すること。
  4. 人権委員会および地方レベルのオンブズマンが、充分な人的および財政的資源を提供され、かつ子どもが容易にアクセスできるものとなることを確保すること。

データ収集

16.委員会は、0〜18歳のすべての子どもを対象とした、条約のすべての領域に関する包括的なデータが存在しないことを懸念するとともに、0〜18歳の子どもに配分される資源についての情報が存在しないことも遺憾に思うものである。

17.委員会は、条約のあらゆる領域に関してデータが収集されること、および、そのデータが18歳未満のすべての者を対象として年齢別ならびにとくにジェンダー別、民族的マイノリティ別および先住民族マイノリティ別に細分化されることを確保するため、締約国が現行のデータ収集機構を強化し、かつ必要な場合には追加的なデータ収集機構を設置するよう勧告する。委員会はまた、支出の影響および効果を評価する目的で、かつ子どもを対象としたさまざまな部門のサービスの費用、アクセス可能性ならびに質および実効性の観点からも、締約国が子どものための予算配分に関するデータを収集して、公共部門、民間部門およびNGO部門において0〜18歳の子どもに用いられている国家予算の額および割合を特定するよう勧告するものである。

市民社会との協力

18.代表団から提供された、市民社会との協力を向上させる傾向が強まっている旨の情報には留意しながらも、委員会は、とくに子どもの権利の分野において政府とNGOとの間に交流が存在しないことを懸念する。

19.委員会は、条約および委員会の総括所見を実施するにあたり、締約国が市民社会と制度的に協力するよう勧告する。

広報および研修

20.委員会は、裁判官、教職員、警察官、矯正施設職員、保護観察官および出入国管理官を対象として締約国が実施している研修活動を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもおよび公衆一般、ならびに子どもとともにおよび子どものために働いている多くの専門家が条約およびそこに体現された権利基盤型アプローチについて充分に理解していないことを、依然として懸念するものである。

21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

  1. 公衆一般および子どもを対象として、条約、およびとくに子どもが権利の主体であるということに関する意識啓発キャンペーンを強化すること。
  2. 子どもとともにおよび子どものために働いているすべての者、とくに教職員、裁判官、弁護士、議員、法執行官、公務員、自治体職員、子どもを対象とした施設および拘禁所で働く職員、心理学者を含む保健従事者、ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修をひきつづき実施すること。
  3. 意識啓発キャンペーン、研修および教育プログラムが態度の変革、行動および子どもの取扱いに与えた影響を評価すること。
  4. 人権教育、およびとくに子どもの権利教育を学校カリキュラムに含めること。

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2.子どもの定義
(条約第1条)

22.委員会は、最低婚姻年齢がいまなお男子(18歳)と女子(16歳)で異なっていること、および、性的同意に関する最低年齢(13歳)が低すぎることを懸念する。

23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

  1. 女子の最低婚姻年齢を男子のそれまで引上げること。
  2. 性的同意に関する最低年齢を引上げること。
3.一般原則
(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止

24.委員会は、法律で婚外子が差別されていること、および、女子、障害のある子ども、アメラジアン、コリアン、部落およびアイヌの子どもその他のマイノリティ・グループならびに移住労働者の子どもに対する社会的差別が根強く残っていることを懸念する。

25.委員会は、締約国が、とくに相続ならびに市民権および出生登録に関わるいかなる婚外子差別も解消するために法律を改正するとともに、法令から「嫡出でない」といった差別的用語を根絶するよう勧告する。委員会は、とくに女子、障害のある子ども、アメラジアン、コリアン、部落、アイヌその他のマイノリティ、移住労働者の子どもならびに難民および庇護申請者の子どもに関して社会的差別と闘いかつ基本的サービスへのアクセスを確保するため、締約国が、とりわけ教育・意識啓発キャンペーンを通じて、あらゆる必要な積極的措置をとるよう勧告するものである。

26.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置のうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。

子どもの意見の尊重

27.子どもの意見の尊重を向上させようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校、その他の施設および社会一般における子どもの意見の尊重が制限されていることを依然として懸念する。

28.委員会は、条約第12条にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

  1. 家庭、裁判所および行政機関、施設および学校ならびに政策立案において、子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して子どもの意見の尊重および子どもの参加を促進し、かつそのための便宜を図ること。また、子どもがこの権利を知ることを確保すること。
  2. 意見を考慮される子どもの権利および子どもの参加権について、とくに親、教育者、政府の行政職員、司法関係者および社会一般に対し、教育的情報を提供すること。
  3. 子どもの意見がどのぐらい考慮されているか、またそれが政策、プログラムおよび子どもたち自身にどのような影響をあたえているかについて定期的検討を行なうこと。
  4. 学校、および子どもに教育、余暇その他の活動を提供しているその他の施設において、政策を決定する諸会議体、委員会その他のグループの会合に子どもが制度的に参加することを確保すること。

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4.市民的権利および自由
(条約第7条、第8条、第13条〜第17条および第37条(A))

表現および結社の自由

29.委員会は、学校内外で生徒が行なう政治活動に対する制限を懸念する。委員会はまた、18歳未満の子どもは団体に加入するために親の同意を必要とすることも懸念するものである。

30.委員会は、条約第13条、第14条および第15条の全面的実施を確保するため、締約国が、学校内外で生徒が行なう活動を規制する法令および団体に加入するために親の同意を必要とする要件を見直すよう勧告する。

名前および国籍

31.委員会は、日本人の父および外国人の母の子が、出生前に父の認知を受けていないかぎり日本国籍を取得できないことを懸念する。これにより、場合によって子どもの無国籍が生じてきた。委員会は加えて、資格外滞在の移住者がその子どもの出生を登録できないこと、およびそのために無国籍が生じてきたことを懸念するものである。

32.委員会は、日本で生まれた子どもがひとりも無国籍になりえないよう、締約国が、条約第7条との一致を確保するために国籍法および他のあらゆる関連の法令を改正するよう勧告する。

プライバシーに対する権利

33.委員会は、とくに子どもの持ち物検査との関連でプライバシーに対する子どもの権利が全面的に尊重されていないこと、および、施設の職員が子どもの個人的通信に介入できることを懸念する。

34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

  1. 個人的通信および私物の検査との関連も含め、プライバシーに対する子どもの権利の全面的実施を確保すること。
  2. 条約第16条との一致を確保するため児童福祉施設最低基準を改正すること。

体罰

35.委員会は、学校における体罰は法律で禁止されているとはいえ、学校、施設および家庭において体罰が広く実践されていることに懸念とともに留意する。

36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

  1. 施設および家庭における体罰を禁止すること。
  2. 体罰に関する態度を変革するため、子どもの不当な取扱いの悪影響について教育キャンペーンを実施すること。また、そのような罰に代わる手段として、学校、施設および家庭において積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけを促進すること。
  3. 施設および学校の子どもを対象とした苦情申立てのしくみを強化することにより、不当な取扱いの苦情が効果的に、かつ子どもに配慮した方法で対応されることを確保すること。

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5.家庭環境および代替的養護
(条約第5条、第18条1〜2項、第9条〜第11条、第19条〜第21条、第25条、第27条4項、第39条)

児童虐待およびネグレクト

37.委員会は、児童虐待の通報および調査を改善するためにとられ、相当の成果をもたらしてきた措置を歓迎する。しかしながら委員会は、以下の点について懸念するものである。

  1. 児童虐待の防止のための包括的かつ分野横断的な戦略が存在しないこと。
  2. 訴追された事件数がまだきわめて少ないこと。
  3. 被害者を回復およびカウンセリングのためのサービスが不充分であり、ますます高まるこのようなサービスへの需要を満たせていないこと。

38.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

  1. とくに市民社会、ソーシャルワーカー、親および子どもと連携しながら、児童虐待の防止のための分野横断的な国家戦略を策定すること。
  2. 家庭で虐待の被害を受けた子どもを対象とした保護措置を改善するために法律を見直すこと。
  3. 児童相談所において被害者に学際的な方法で心理カウンセリングその他の回復サービスを提供する、訓練を受けた専門家を増員すること。
  4. 子どもに配慮した方法で苦情を受理、監視、調査および訴追する方法について法執行官、ソーシャルワーカー、児童相談所職員および検察官に提供される研修を増加させること。

養子縁組

39.委員会は、国内・国際養子縁組の監視および統制が限られた形でしか行なわれていないこと、および国内・国際養子縁組に関するデータがきわめて限られていることを懸念する。

40.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

  1. 国内・国際養子縁組を監視する制度を強化すること。
  2. 国際養子縁組における子どもの保護および協力に関する第33号ハーグ条約(1993年)を批准および実施すること。

子どもの奪取

41.委員会は、子どもを奪取から保護するための保護措置が不充分であることを懸念する。

42.委員会は、締約国が、国際的な子どもの奪取の民事面に関する第28号ハーグ条約(1980年)を批准および実施するよう勧告する。

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6.基礎保健および福祉
(第6条、第18条3項、第23条、第24条、第26条、第27条1〜3項)

障害のある子ども

43.委員会は、精神障害を含む障害のある子どもが、条約で保障された権利の享受の面で依然として不利な立場に置かれており、かつ教育制度およびその他のレクリエーション活動または文化的活動に全面的に統合されていないことを懸念する。

44.障害のある子どもに関する委員会の一般的討議(1997年)および障害者の機会均等化に関する国連基準規則(1993年12月20日の国連総会決議48/86)を考慮にいれ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

  1. 障害のある子どもに影響を及ぼすあらゆる政策を、それらが障害のある子どものニーズを満たし、かつ条約および障害者の機会均等化に関する国連基準規則にしたがうことを確保する目的で、障害のある子どもおよび関連の非政府組織と連携しながら見直すこと。
  2. 教育ならびにレクリエーション活動および文化的活動への障害のある子どものいっそうの統合を促進すること。
  3. 障害のある子どものための特別な教育およびサービスに配分される人的および財政的資源を増やすこと。

思春期の子どもの健康

45.委員会は、思春期の子どものあいだで精神障害および情緒障害(ストレスおよび鬱を含む)が蔓延していること、および、思春期の子どもの精神的健康に関する包括的な戦略が存在しないことを懸念する。委員会はまた、若者のあいだで性感染症(STD)が増加していることも懸念するとともに、締約国の青少年による薬物濫用についての締約国の懸念を共有するものである。委員会はまた、18歳未満の子どもが治療および医療上の相談のために親の同意を必要とすることも懸念する。

46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

  1. 精神的健康、リプロダクティブ・ヘルスおよびセクシュアル・ヘルス、薬物濫用ならびにその他の関連の問題に対応する、思春期の子どもの健康に関する包括的な政策(適切な場合には予防策を含む)を策定する目的で、思春期の子どもの健康に関する研究を実施すること。
  2. 18歳未満の子どもが親の同意なく医療上の相談および情報にアクセスできるようにするため、法律を改正すること。
  3. 思春期の子どもの精神障害および情緒障害の予防のためのプログラムを策定および実施すること。また、思春期の精神的健康の問題に子どもに配慮したやり方で対応する方法について、教職員、ソーシャルワーカーおよび子どもとともに働くその他の者を訓練すること。

若者の自殺

47.委員会は以下の点についてきわめて懸念する。

  1. 若者の自殺率が高く、かつ上昇していること。
  2. 自殺および自殺未遂ならびにその原因に関する質的および量的データが存在しないこと。
  3. 若者の自殺の問題に対応する主要機関のひとつに警察が指定されていること。

48.委員会は、締約国が、児童相談所、ソーシャルワーカー、教職員、ヘルスワーカーその他の関連の専門家と協力しながら、若者の自殺およびその原因について詳細な研究を実施し、かつ、その情報を活用して若者の自殺に関する国家的行動計画を策定および実施するよう勧告する。

7.教育、余暇および文化的活動
(条約第28条、第29条および第31条)

49.委員会は、教育制度を改革し、かつそれをいっそう条約に一致させるために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら、委員会は以下の点について懸念するものである。

  1. 教育制度の過度に競争的な性質によって、子どもの身体的および精神的健康に悪影響が生じ、かつ子どもが最大限可能なまで発達することが阻害されていること。
  2. 高等教育進学のための過度な競争のため、学校における公教育が、貧しい家庭出身の子どもには負担できない私的教育によって補完されなければならないこと。
  3. 学校における子どもの問題および紛争に関して、親と教職員とのコミュニケーションおよび協力がきわめて限られていること。
  4. 日本にある外国人学校を卒業して大学進学を希望する者の資格基準が拡大されたとはいえ、依然として高等教育へのアクセスを否定されている者が存在すること。
  5. とくに中退した生徒を対象として柔軟な教育機会を提供している東京都の定時制高校が閉鎖されようとしていること。
  6. マイノリティの子どもたちにとって、自己の言語で教育を受ける機会がきわめて限られていること。
  7. 審査手続の存在にも関わらず、一部の歴史教科書が不完全または一面的であること。

50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

  1. 高校を卒業したすべての生徒が高等教育に平等にアクセスできるよう、高い水準の教育の質を維持しつつも学校制度の競争的性質を緩和する目的で、生徒、親および関連の非政府組織の意見を考慮にいれながらカリキュラムを見直すこと。
  2. 生徒および親と連携しながら、学校における問題および紛争、とくに(いじめを含む)学校における暴力に効果的に対応するための措置を発展させること。
  3. 東京都に対し、定時制高校の閉鎖を再検討し、かつ代替的形態の教育を拡大するよう奨励すること。
  4. マイノリティ・グループの子どもが自己の文化を享受し、自己の宗教を表明しまたは実践し、かつ自己の言語を使用する機会を拡大すること。
  5. 教科書でバランスのとれた見方が提示されることを確保するため、教科書の審査手続を強化すること。

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8.特別な保護措置
(条約第22条、第38条、第39条、第40条、第37条(B)〜(D)、第32条〜第36条)

性的搾取および人身取引

51.パラ3で述べたように、委員会は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(1999年)の制定および実施を歓迎する。しかしながら、委員会は以下の点について懸念するものである。

  1. 強姦が、刑法において、男性から女性に対する行為として狭く定義されたままであること。
  2. 性的搾取の被害者全員が適切な回復・援助サービスにアクセスできているわけではないこと。
  3. 被害を受けた子どもが犯罪者として取り扱われているという報告があること。
  4. 「援助交際」すなわち対償をともなう交際が行なわれているという報告があること。
  5. 〔性的〕同意に関する最低年齢が低いこと。このことは「援助交際」を助長している可能性があり、また子どもの性的虐待の訴追を妨げている。

52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

  1. 男女の子どもが平等に保護されることを確保するため、性的搾取および性的虐待に関する法律を改正すること。
  2. 児童相談所において被害者に心理カウンセリングその他の回復サービスを提供する、訓練を受けた専門家を増員すること。
  3. 子どもに配慮した方法で苦情を受理、監視、調査および訴追する方法について法執行官、ソーシャルワーカー、児童相談所職員および検察官を訓練すること。
  4. 未成年者の性的虐待および性的搾取に関連する法律についての資料、および教育プログラム(健康的なライフスタイルについて学校で実施されるプログラムを含む)のような、性的サービスの勧誘および提供を行なう者を対象とした防止措置を発展させること。
  5. 性的同意に関する最低年齢を引上げること。

少年司法

53.委員会が締約国の第1回報告書を審査して以降、締約国が少年法改革を進めてきたことには留意しながらも、委員会は、改革の多くが、条約および少年司法に関する国際基準の原則および規定の精神にのっとっていないことを懸念する。このことはとくに、刑事責任に関する最低年齢が16歳から14歳に引き下げられたこと、および、審判前の身柄拘束の期間が4週間から8週間に引上げられたことに関して指摘できる。委員会はまた、成人として裁判を受けて拘禁刑を言い渡される少年が増えていること、および、少年が終身刑に付される可能性があることを懸念するものである。最後に委員会は、評判の芳しくない場所に頻繁に通うなどの問題行動を示す子どもが罪を犯した少年として扱われる傾向があるという報告を懸念する。

54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

  1. 少年司法の運営に関する委員会の一般的討議(1995年)に照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。
  2. 法律を改正して少年に対する終身刑を廃止すること。
  3. 自由の剥奪が最後の手段としてのみ用いられることを確保するため、身柄拘束(審判前の身柄拘束を含む)に代わる手段の利用を増強すること。
  4. 現在、家庭裁判所が16歳以上の子どもの事件を成人刑事裁判所に移送できることについて、このような実務を廃止する方向で見直しを行なうこと。
  5. 法律に触れた子どもに対し、法的手続全体を通じて法的援助を提供すること。
  6. 問題行動を抱えた子どもが犯罪者として取り扱われないことを確保すること。
  7. リハビリテーションおよび再統合のためのプログラムを強化すること。
9.子どもの権利条約の選択議定書

55.委員会は、締約国が、子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書を批准していないことに留意する。

56.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書を批准するよう勧告する。

10.文書の普及

57.最後に委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)のあいだで、条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。

11.次回報告書

58.委員会は、締約国の第3回定期報告書が、期限である2006年5月21日までに提出されることを期待する。報告書は120ページ以内に収められるべきである(CRC/C/118参照)。

ARC 平野裕二の子どもの権利・国際情報サイト 
c2003 http://homepage2.nifty.com/childrights/

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