ユニセフ、イラク国内と隣国に避難した子どもたちの窮状を訴える
【2007年5月23日 ジュネーブ・ニューヨーク・アンマン発】
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© UNICEF Iraq/2007/Dhayi |
日々国内各地で続く武力衝突。またそれに伴う避難によって子どもを取り巻く環境が限界を超えて悪化しているとユニセフは訴えました。1950年代よりイラクで子どもたちの支援活動を続けているユニセフは、イラク国内や、隣国のヨルダン・シリアに避難している子どもたちを支援するために、今後半年間に計4,200万ドル(54億6500万円あまり)の資金が必要になると訴えました。
「今こうしている間にも、イラクの子どもたちの生命線である様々な人道支援が展開されています。しかし、イラクの将来を考えると、(この国がこれまで以上に深刻な危機状態に置かれている)今こそ、その支援を一層強化させることが必要です」と、ユニセフのダニエル・トゥール緊急支援局長は訴えます。「イラクで最も弱い立場に置かれているのは、子どもたちです。特に国内外で避難生活を強いられている子どもや、戦闘地域に住む子どもたちに、基本的な保健・医療、水、衛生、教育の支援を行き届かせなければなりません。」
ユニセフはまた、イラクから隣国に続々と逃れてくる子どもたちのために、ヨルダン政府やシリア政府と協力して、様々な基本的な社会サービスを提供しています。イラクを追われた子どもたちが、教育や、保健・医療サービスを享受できるように。そして、搾取などの被害にあわないための保護的な支援を十分に受けられるようにすることが優先課題としてあげられています。
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© UNICEF Iraq/2007 |
2003年以来、イラクの人口のおよそ15%にあたる400万人あまり(半数が子ども)が、住みなれた家を追われ隣国に避難しました。こうした人々の多くは、隣国の中でも比較的貧しい地域、または武力衝突の影響を受けた地域に避難しました。結果、既に経済的に疲弊していたこうした地域の教育・医療サービスは更に疲弊。イラク国外へ避難した人々は、「先行き」が見えない不安な毎日を過ごしています。多くの避難民は、明確な法的立場を与えられていないため、保健・医療サービスを受けられず、また子どもを学校に通わせることもできずにいます。一方、こうした避難民の中には、医師、看護師、技術者、教師といった、イラク国内の子どもたちが健やかに成長していくために欠かせない技術を持った人々が何千人も含まれています。武力衝突によって多くの人々の命を奪われただけでなく、こうした「専門家」の流出により、イラクの子どもたちの生存と発達が非常に脅かされているのです。
「私たちは、日々続く戦闘にばかり気を取られがちですが、こうした『技術者』や『専門家』の流出は、(戦闘や悪化する一方の治安状況と同じ位)イラクの子どもたちの日々の生活に重大な影響を与えています」とユニセフ・イラク事務所のロジャー・ライト代表は憂慮の声を上げています。「私たちに課せられた使命は、こうした不安定な治安状況に対処し、こうした状況が子どもたちに与える影響を最小限にとどめることです。あまりにも多くのイラクの子どもたちが、日々悪化するばかりの状況に置かれているのです」
イラク政府は、先週、今年初めてのコレラと疑われる症例が発見されたと発表しました(今回発見された全ての患者は子どもです)。これから厳しい夏を迎えるにあたって、コレラの大量発生が懸念されています。上水道や下水・ゴミ処理などのシステムが悪化、または機能していないため、安全な飲料水を飲める子どもが僅か30%に過ぎないと見られています。また、不安定な社会情勢と避難民による急激な生徒数の増加などのために、今年の課程を満足に修了出来る見込みの子どもたちは、極々限られた人数であると見られています。
トゥール局長は、「現在のイラクは、多くの分野において十分な支援を提供できる状況には無い」と、イラクの現状を非常に危惧しています。しかし、トゥール局長はまた、「(そうした中でも)支援を必要としている子どもたちの多くに救いの手を差し伸べることはできる」とも訴えています。先日、ユニセフとWHO(世界保健機構)が実施された「はしか・おたふくかぜ・風疹の予防接種キャンペーン」では、目標の9割、360万人の子どもたちに予防接種を提供することができました。トゥール局長は、こうした子どもたちへの基本的なサービスがイラク政府自身によって実施されるようになる時が来るまで、国際社会の支援が必要でかつ重要であると訴えています。「治安が非常に不安定な地域でも、ユニセフの支援は子どもたちにきちんと届いており、大きな成果が得られています。私たち、ユニセフのスタッフは、日々の活動を通じてそれを実感しています。」とトゥール局長は語ります。
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