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財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー プレスリリース

母乳育児の普及を図る専門家会議、マニラで開催

【2007年6月22日、フィリピン・マニラ発】

© UNICEF/LAO PDR

子どもの生存と成長・発達にとって、完全母乳育児——生まれてからの6カ月間、母親の母乳だけで乳児を育てること——が最良の処方箋であることがこれまでの研究から明らかになっている。にも関わらず、東アジアと太平洋地域では生後4カ月の乳児の完全母乳育児率は61%、生後6カ月の乳児ではさらに低く、わずか35%にとどまっている。

子どもの生存を脅かすこのような事態を受けて、ユニセフと世界保健機関(WHO)は、東アジアと太平洋諸国の政府に対して、母乳育児の保護・促進・支援に向けた投資を強化するよう訴えた。ユニセフとWHOはまた、さらなる追加措置をとり、母乳育児の重要性と母乳代用品の危険性を子どもを持つ親に対して知らせるとともに、「母乳代用品の販売流通に関する国際規準」違反を取り締り、母乳育児支援サービスを母親や家族に提供する公衆保健システムにより多くの資金を投入することが必要だと述べている。

ユニセフとWHOによる共同声明は、マニラで始まった3日間にわたる会議の冒頭に発表された。この会合には、東アジア・太平洋地域と世界各地から集まった公衆保健分野の専門家70名が参加し、母乳育児の保護・促進・支援に関する討議が行われる。会議では、母乳代用品がもたらす悪影響と母乳の重要性に対する認識の向上を図り、母乳代用品で子どもを育てるという文化的背景に変革をもたらすための方策が焦点となる見込みである。

フィリピンでは、1998年に20%だった生後4〜5カ月の乳児に対する完全母乳育児率が、2003年には16%に低下した。同国では、1万6,000人の5歳未満児が、粉ミルクを含む不適切な栄養供給が原因で死亡していると推定されている。このような事態を受け、同国保健省は、「母乳代用品の販売流通に関する国際規準」の完全施行および粉ミルク・メーカーによるいかなる違反も未然に防ぐことを目的として、新たな規定を導入するよう提唱している。

「5歳未満の子どもの命を奪うもっとも大きな要因は、不十分な栄養である」と、WHO西太平洋地域事務局代表のオミ・シゲル博士は述べた。「母乳育児は、人生の最初の数カ月間、子どもに自然の防御手段を提供するものであり、その成長と発達にとって欠かせない」。西太平洋地域のすべての加盟国が支持を表明している、「ユニセフ・WHO共同 地域子どもの生存戦略」では、子どもの生存パッケージの主要な構成要素として、生後6カ月間にわたる完全母乳育児が推奨されている。

© UNICEF/Myanmar

母乳には数百種類もの免疫と酵素が含まれ、子どもの免疫システムを活性化して予防接種に対する反応を改善させるほか、下痢や肺炎、乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防にも役立つ。母乳育児はまた、家族計画の面でも役立つものである。

子どもと母親双方の健康に短期的な利益があることに加え、母乳育児は、成長しておとなになったときにも慢性病の予防に役立っていることが明らかになりつつある。WHOの調査によると、母乳育児で育てられた子どもは、知能テストで良い結果を収めるとともに、成長しておとなになったときの平均血圧と総コレステロールが低いことが明らかになっている。また、同じく母乳育児で育てられた子どもは、成人してから肥満やⅡ型糖尿病になる確率が低くなっている。母乳育児は、認知発達と学校成績の向上を促進するとともに、ぜんそくやアレルギー、小児ガン、糖尿病、クローン病、大腸炎、肥満、心疾患、耳感染の発生を抑制するものなのである。

同地域の多くの国々では、不十分な公衆保健システムと粉ミルクの巧妙かつ高価なマーケティング、そして製品のマーケティングに対する規制の不十分さがあいまって、母乳育児率の低下につながってきた。公衆保健システムへの財政投入が十分でないために、保健員が母乳育児の普及に必要な技術や知識を身につけることができない場合も多い。賃金の低い保健員が、自社製品の販売を促進しようとする粉ミルク・メーカーからインセンティブを提供されている場合には、問題はさらに複雑になる。

公衆保健上の利点に加え、母乳育児が家族と保健システム双方にもたらす経済的効果は非常に大きなものとなる可能性が秘められている。これは貧困層の家庭にとっては特に重要なことである。貧困世帯は、子どもの知能が高まり、より良い人生を送れるようになると信じて、一家の収入の大きな割合を粉ミルクを手に入れるために費やしているからだ。WHOフィリピン事務局によると、フィリピンの人々は、子どもの粉ミルク代に年間4億6,500万米ドル(215億ペソ)をかけていると推定されている。

「東アジア・太平洋地域では、不衛生な水や不適切な衛生環境、不十分な衛生知識が子どもの生存に暗い影を投げかけている。粉ミルクを不衛生な水で溶かして与えることによって、子どもの命は死の危険にまでさらされることになる」。ユニセフ東アジア・太平洋諸国地域事務所代表のアヌパマ・ラオ・シング氏は述べた。「我々は、母乳育児の保護・促進・支援に対する取り組みを維持し、子どもを持つ女性と家族が母乳育児がもたらす恩恵を学べるよう手助けしていかなければならない。そのために、各国政府は『母乳代用品の販売流通に関する国際規準』の遵守に向けた取り組みを継続するとともに、公衆保健システムへの投資強化を図らなければならないのだ」

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