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財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー 報告会レポート

児童買春等禁止法改正に関するユニセフ公開セミナー報告

日時 平成15年2月24日(月)
会場 衆議院第一議員会館第一会議室
主催 財団法人日本ユニセフ協会
出席者数 約90名

主催者挨拶:東郷良尚(日本ユニセフ協会専務理事)

 「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(以下「児ポ法」)は1999年5月に成立、同年11月に発効しました。これはここに集った皆さんの強い熱意の結集であり、また野田先生にはこの機会をかりて心からお礼を申し上げます。
 この法律の成立を受けて海外事犯の有罪判決は去年の春に初めてでました。なかなか促進されてはいないわけですが。海外のいろんな意見を聞くと、この法の罰則規定の甘さも指摘されています。俗に言う「援助交際」についてもこの適用ケースが多くなり、ある意味では意味のある法律であったといえるが、一方においては他の法律で処罰されるべき事犯まで、量刑が軽いために、「児ポ法」の対象となってきているという面もあるようです
 この機会に、様々な立場の方からご意見を聞きたいと思います。

野田聖子(衆議院議員):法改正の経緯、主要なポイントについて

 みなさんこんにちは。
 雪混じりの悪天候の中参加いただきありがとうございます。
 私は自由民主党の政務調査会内の児童買春等対策特別委員会の事務局長をしております。今日はこれまでの事実関係を報告します。今国会の成立を向けた改正法案提出となっておりますので、この際皆様方にはアドバイスをいただき、より一層効果のある法律に作り上げていきたいと思います。

【事実経過について】

 現行法は3年前に全党一致で制定され、各党全て意見を提出後に収斂されて新しい法律として生まれました。
 3年後を目処に見直しが行われるということも定められており、今回その時期になり、谷垣先生の提案で自民党政務調査会内に特別委員会を設置しました。
(委員長は谷垣先生)
第一回会合(2002年6月4日)
国連子ども特別総会等について外務省よりヒアリング
第二回会合(7月11日)
児ポ法の施行状況について警察庁よりヒアリング
第三回会合(7月16日)
児ポ法の施行状況について法務省からのヒアリング
第四回会合(7月24日)
文部科学省の取り組みについて、関係者からヒアリング
第五回会合(11月7日)
日本ユニセフ協会、ECPATストップ子ども買春の会からヒアリング
第六回会合(11月14日)
厚生労働省、内閣府からのヒアリング
第七回会合(11月26日)
坪井節子弁護士から「国外犯処罰のための国際調査・司法共助について」、守屋典子弁護士より「捜査、裁判における被害児童の保護について」、奥村徹弁護士より「児童買春、児童ポルノ等禁止法の運用上の問題について」ヒアリング
第八回会合(12月3日)
内山絢子目白大学人文学部教授より「規範意識と援助交際について」、横浜家庭裁判所主任調査官の渡辺昭さんより「調査官から見た援助交際の少女について」についてヒアリング
第九回会合(12月9日)
法律の見直しにあたっての主な論点整理を行う
八代委員長より野田試案作成の指示
第十回会合(2月18日)
「出会い系サイトに係る児童犯罪被害防止に向けた対策」について警察庁よりヒアリング
 なお、内閣改造により当時委員長をしていた谷垣議員が国務大臣になったため第五回会合以降は八代英太議員が委員長となりました。

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【法改正に関する特別委員会での合意事項】
(1)
基本原則として現行法の児童買春等禁止法の意義を法律の改正にあたっても徹底し具体化していくということを確認しています。児童の権利条約やサイバー条約を、日本政府が批准するにあたって、それが国内法的に担保できるようにすることです。また、世界的な意識としては児童の商業的性的搾取、いわゆる児童買春を明確に犯罪と規定することが基本原則であることを確認しました。
(2)
児童の権利の擁護を目的に掲げた日本で初めての法律であること。今まで児童の権利については語られてはきたものの、立法作業においてこれが明確にされた法律は今日までなかったということ。
(3)
買い手を処罰対象とした初めての法律であるとともに、児童ポルノをわいせつではない観点から犯罪としたことが重要。これまでも売春防止法はありましたが、この法律では売春をした成人は犯罪者にはならず、場所を提供した人が処罰の対象となるといったこの国のありようがありますが、そういう意味では、これまでは処罰対象となっていなかった買い手を児童買春に限っては犯罪者と認定している点が重要。
(4)
国外犯処罰規定を設けるとともに国際協力を規定したこと。つまり、法律の成立は3年前になりますが、もともとこの法律への要望があったのはさらに7年前にさかのぼります。ちょうど10年ほど前、ユニセフ、ECPAT、カスパルといったNGOの団体から国会議員に対して、不届きな外国人旅行者が貧しい国の子ども達を金で買い、生命の危機に瀕するような行為までしていることに対し、ヨーロッパ等では厳しい国外犯規定がありましたが、当時の日本にはそういう規定がなかった。ルールどころか児童買春の概念すらこの国には存在していませんでした。最近では、国内の児童買春の取り締まり法のイメージがあるが、その起源は国外犯に対して国内で厳しく罰することができるような節度のある国づくりを呼びかけるNGOの熱い想いから始まりました。つまり、前回の法制定にあたってのメインの柱の一つは国外犯処罰規定を設けるということであったことです。
(5)
買い手の処罰だけでなく、児童の人権への配慮、教育、啓発、調査研究、被害者の回復、再統合支援を規定しています。また、行政府の提案する法律案を国会が事後承諾するというこれまでの流れに対して、この法律は、10年前にNGOの運動の成果として、議員提案の法律として生まれたという重要性があります。
(6)
法律成立当時から今日に至るまでの世の中の流れが大きく変わった点、当時時期早尚として見送られた課題を踏まえることが必要です。
(7)
横浜会議における公約、新しい国際条約の中身に適合した改正を行います。

【改正のポイント】
(1)
児童買春・児童ポルノの定義について、インターネット上または被写体となる児童が実在しないとき、つまり現行法ではその人が誰であるかが確認された場合以外では児童ポルノの被害者としての認定はできず、また犯罪も立憲できないとしてある。しかし、児童ポルノ、児童買春を助長するフィクションに関しても法律の範疇に入れるべきという議論もありました。これは表現の自由などの制約もあり、前回の議論では見送られました。例えば20歳でありながら小学生のような容姿であらわな性的な写真を撮ったり、一部コミックで実写以上にリアルな画像などの場合、かつその中に万人が見ても子どもと分かるコミックについては児童買春、児童ポルノを助長するものとして処罰の対象とするか否かという問題があり、法改正にあたって議論をしてほしいという声もありました。
(2)
児童ポルノを業とする人は処罰の対象となる一方で、児童ポルノの単純所持は処罰の対象とするかどうか。約半数の党は処罰の対象とするべきとしていましたが、当時は児童買春や児童ポルノといった定義もなかった当時、持っているだけで犯罪とするのはどうかという慎重論もあり、制定後3年の法改正の段階で取り扱ってほしいという見送り事項の一つとなっていました。最近のECPAT等の見解では実在する児童の写真は持っているだけで児童の権利の侵害であるとしています。これに関連して、営利目的でない単純製造は処罰の対象となるかどうかも現在検討中。
(3)
量刑の見直しについて、法定刑の重みが抑止効果となっていないという批判がある。警察のデータを見てもこの3年、児童買春の数自体が上昇傾向にあり、昨年は裁判官までもが児童買春で逮捕されています。買い手の処罰の引き上げによって犯罪の重みを自覚してもらうために法定刑の引き上げが議論の対象となってきています。
(4)
被害児童への配慮や擁護は法律でうたっているものの不十分であり、ひとつには法制定後のフォローアップの場がなかったことが一因とされています。法成立と同時に特別委員会は解散してしまった。その後3年間、受け皿がありませんでした。例えば、DV法の所管である厚生労働省ではNGOや学者からなる専門家審議会と呼ばれるフォローアップ委員会があり、改正法案では審議会を経た問題点が法律の改正事項として出てきています。「児ポ法」に関してはこのような受け皿がありません。本来そういう審議会が出来ていれば、被害児童への配慮や回復支援システムは機能しているかどうかを評価する場がありましたが、そういう受け皿が議会にも行政府にも存在しなかったという反省点があります。今回の法律改正でもその必要性を感じています。直接の担当は警察の管轄ですが、児童買春、児童ポルノを防ぐのは厚生労働省の問題でもあり、文部科学省の問題でもあるということで、そういうリンケージがあるかどうかを判断するために外部監査も必要です。専門施設、スタッフの拡充、NGO等民間組織との連帯強化も必要であると思います。
(5)
国際協力の拡張も重要。国外犯に関しては、例えば途上国でおきることが大半で、現地の警察の協力が不可欠ですが、警察も「袖の下」が横行し、犯人がわりと釈放されやすいことなどがNGOからも報告されています。捜査方法でも統一性がなく、相手国の書類管備の不備などが目立ちます。つまり、国外でも改善点があります。
(6)
情報リテラシー教育の徹底が必要です。児童の権利についての議論に広範な国民の参加を促すことも重要。警察庁で「出会い系サイト」の法案を出す動きがありますが、私個人の素朴な疑問としては、中高生の間に携帯電話が普及する中で、様々な情報が錯綜し、これらのなかから情報を選ぶだけの能力を教育によって養うこと、実際の学校現場でこういうことに関してもっと注意をうながすことの大切さ、被害者となりうる児童達にこういうことがありうると伝えるように先生や親に指導することに関する通達も文部省からされていません。警察や法務省もこれらのことを積極的に学校機関、家庭に通達すべきで、つまり国民の責任です。今後の法改正では教育面での対応の拡充が必要であると思います。

【野田試案の方向性】
(1)
ITやインターネット上の映像は有体物(ビデオや雑誌)に加え無体物(情報)として加えることにすることにしました。
(2)
児童ポルノの単純所持については時期早尚とする意見と道徳的意味合いからたとえ個人の楽しみでも人権の侵害となるという意見とに分かれており、現在でも検討中です。
(3)
量刑については抑止的意味合いを持つことが重要としており、法務省とともに検討していきたい。
(4)
この法律の目的が児童の権利擁護であることをさらに強調する内容とすることを検討しています。これによって児童買春、児童ポルノが児童の権利侵害であるという立場をより一層社会に浸透させるという努力をしたい。
(5)
3年後の見直し条項を再度盛り込みます。
(6)
現在議論されている事項に加え、3年後には社会も変化していることを受けて、例えば幅広い分野の有識者による協議会を設置することで、議員主体ではなく、NGOや現場の人々が主体となって、教育の怠慢、施設の怠慢などを指摘するためのフォローアップの場を提供したい。
(7)
コミックの中の実在しない児童ポルノについては、法律成立当時から賛否両論があります。処罰の対象とすべきとする意見と表現の自由の侵害とする意見が対立。

【今後の見通し】

第十一回会合で試案を提出したい。
 特別委員会での了承案に基づき、与党三党(自民、公明、保守新党)内でプロジェクトチーム(PT)を創設、そこで議論した上で、前回もこの法律は全党一致で成立した経緯を踏まえ、今回も各党との話し合いの場を持ち、全党の意見として全会一致の採決を目指していきたい。

【特別委員会の範疇外の事項】
(1)
「出会い系サイト」の法律案。これは警察庁の管轄で、現行の「児ポ法」に取り入れることは法律全体のバランスを崩してしまうので、分けて議論されるべき。この法成立当時「ポルノ」という言葉を法律に入れることでも多くの議論がなされましたが、「出会い系サイト」にしてもその定義をすることが、相当の努力を要すると予想されます。あくまでも「児ポ法」は児童の権利の擁護としての立場を強調します。
(2)
「児ポ法」成立当時、児童福祉法の改正法案として国外犯処罰規定をつけて対応するという案も出ましたが、その翌年にこの法律の大幅な改正が予定されているという理由で、その話は却下となりました。今振り返れば、この法改正は結局行われませんでした。
現在も、国会では児童権利条約の採択議定書の批准に向けて話し合いが進められていますが、子どもの人身売買の3つの目的である性的搾取、強制労働、臓器移植のうち、一つ目の性的搾取に関してのみ国内法で担保されていて、あとの二つに関してはこの法律では対応が難しい。「児童福祉法」に国外犯処罰規定をいれることで対応することができるという意見がある一方、ルールとサービスが混在して収拾がつかなくなるという危惧があります。
(3)
また「出会い系サイト」についてもう一言。児童買春の温床となっていることから問題も深刻化。「児ポ法」の趣旨である「児童が被害者である」ということは貫かれるべきです。これに対し、誘った側である児童は「出会い系サイト」の法律では加害者となる可能性があるわけで、これについては警視庁で最近行われたヒアリングによると、PTA内でも処罰してほしいという声があがっています。またパブリックコメントの8〜9割が子どもを処罰すべきであるとしています。しかしこれらの議論については、本日は「児ポ法」の範疇外であるので、議論は控えていただきたい。

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第2回児童買春等禁止法改正に関するユニセフ公開セミナー
平成15年6月9日

会場 : 衆議院第一議員会館第一会議室
主催 : 財団法人日本ユニセフ協会
児童買春等禁止法改正案の解説 : 衆議院議員 野田聖子氏

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1999年に制定された「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び保護等に関する法律」(以下「児童買春等禁止法」)は、今年改正,,,,,,,,,,,,,,,の時期を迎えています。これまで、NGOとの会合やヒアリング等が重ねられ、現在、衆議院議員 野田聖子氏が改正案を取りまとめ、今期国会で成立を目指しています。
 現在の状況と改正案のポイント、そして今後の見通しについて、野田聖子議員を基調報告者にお迎えし、ユニセフ公開セミナーが開催されました。会場には、森山真弓法務大臣、谷垣禎一国務大臣のほか、民主党の小宮山洋子議員、社民党の山内恵子議員もお見えになり、それぞれの観点からごあいさつをいただきました。NGO、報道機関などからおよそ100名が集まり、意見交換がおこなわれました。


【公開セミナーレポート】

■野田議員からの報告

〈児童買春等禁止法改正へ向けての現在の状況〉


自民党内で作成した児童買春等禁止法改正案に基づき、公明党、保守新党、民主党、社民党、共産党、自由党の賛同を得て全党一致で今国会へ提出する方向で調整中。

〈改正までの経緯〉

平成11年 超党派による議員立法として児童買春等禁止法が成立。
同年11月1日 法律施行 → 改正後3年を目途にこの法律を見直すことが定められている。
*当時は「児童ポルノ」・「児童買春」という言葉すらなく、この法律はそれらを定義し、国民に周知徹底させる第一歩のものとなった。
平成14年6月 自民党政務調査会の直轄で児童買春等対策特別委員会(初代委員長:谷垣 禎一氏、現在二代目委員長:八代 英太氏)を設置し、改正のために議論の場を作り出し、現在の改正に至る。

〈改正案の内容〉

1、児童買春、児童ポルノに対して厳しい態度で臨むことの宣明
(1)児童買春・ポルノ法が児童の権利の擁護を目的とすることをより明確に表現。
(2)目的のいかんを問わず、児童ポルノの製造、所持(保管)、運搬、輸出入が許されないことを明記。
単純所持は犯罪か否かについて大きな議論となったが、持っていることが子どもの人権を傷つけていると認識するべきである→単純所持を禁止と明記

2、施行状況を踏まえた法定刑の引き上げ
(1)児童買春事件が大幅に増加(887名に有罪判決:平成14年)
(2)児童ポルノ事件も後を絶たない(93名に有罪判決:平成14年)
児童買春・児童ポルノは被害児童の人権を著しく害している、児童を性の対象とする風潮を助長する点において強い社会的非難に値する→悪質な事案に対して厳しい刑罰を科すことを可能にする。 (ア)懲役刑の上限の引き上げ
3年→5年 児童買春、児童ポルノ頒布等、児童買春周旋・勧誘
5年→7年 児童買春周旋・勧誘を業とした場合
⇒児童買春は犯罪であるという認識を司法においても作りだしていくことが必要。
(イ) 罰金刑の上限の引き上げ
100万円→ 300万円 児童買春
300万円→ 500万円 児童買春周旋・勧誘、児童ポルノ頒布等
500万円→1000万円 児童買春周旋・勧誘を業とした場合

3、条約上の義務に対する対応等
(1)国際的動向を踏まえた立法であることを法律の目的で明示
(2)サイバー犯罪条約(欧州評議会で採択)を日本も署名したのに合わせて、児童の権利擁護を一層促進していくために処罰法規を新設:インターネット上における児童ポルノを禁止(有体物と同様に処罰)

(ア)児童ポルノの画像データの「提供」とこれを目的とした「保管」の犯罪化
(イ)特定・少数の者に対する「提供」とこれを目的とした「製造」・「所持」等の犯罪化
(ウ)「児童に姿態をとらせて児童ポルノを製造する行為」の犯罪化

〈児童買春等禁止法に対する批判〉

● なぜ売った少女を罰しないで買った大人を罰するのか→児童の権利を守るということが大前提の法律である。
● 児童の定義があいまい→国連や国際的動向の中で多くの国が18歳未満を児童としている事実があるのでこれに基づくかたちにした。
● 単純所持には今回罰則を設けていないが設けた方が良い→今回は「禁止」ということを明確にした。単純所持については段階的に対応していくべきである。
● 児童ポルノコミックについては、自民党の中でも処罰の対象にすべきだという声は大きかった。ただ、児童ポルノコミックがあるから児童ポルノを作ったり、児童買春に走る人が増えるという意見も現時点ではエビデンスに欠けていたので、現状に合わせた改正を最優先にすることにした。また、懇談会を設けて常にチェックしていく体制を作りだしていく必要がある。

「この公開セミナーに先立ち、日本ユニセフ協会や関連NGOは協力して、児童買春等禁止法改正に関する要望書を作成し、賛同団体を募りました。要望書は、3月13日、衆参両議院議長、衆参両議院法務委員会委員長に提出されました」

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