|
|
報告会レポートみんなで守ろう子どもの権利 STOP!子ども買春
|
■日時: |
2004年11月19日(金)13:30〜16:15 |
■場所: |
東京・港区高輪ユニセフハウス |
■主催: |
(財)日本ユニセフ協会、ECPAT/ストップ子ども買春の会 |
■後援: |
外務省 |
■コーディネーター: |
日本ユニセフ協会大使 アグネス・チャン |
■報告: |
東京・港区高輪ユニセフハウス |
■パネリスト: |
東京・港区高輪ユニセフハウス |
2004年11月19日(金)、港区高輪のユニセフハウス1Fホールにおいて、子ども買春・ポルノ・人身売買問題に関するシンポジウムがECPAT/ストップ子ども買春の会との共催で開催されました。
シンポジウム第一部では、子ども買春、人身売買の問題等に関わる、特にアジアの状況についての報告と、この問題が進展してきた背景についての報告が、第二部では旅行業界を中心としたCodeプロジェクト立ち上げの経緯と主旨、内容についての説明が関係者から述べられました。当日の模様をご報告いたします。
主催者挨拶
第一部
「アジアの子ども買春:私が出会った子ども達」
日本ユニセフ協会大使 アグネス・チャン
「アジアの現状と課題…Codeプロジェクト日本発足の背景」
ECPAT/ストップ子ども買春の会 共同代表 宮本潤子
外務省 国際社会協力部人道人権課課長 足木孝
第二部
「Codeプロジェクト:日本発足に向けて」
コーディネーター
日本ユニセフ協会大使 アグネス・チャン
日本ユニセフ協会広報室 中井裕真
パネリスト
ECPAT/ストップ子ども買春の会 斎藤恵子
国土交通省 総合政策局旅行振興課課長 村野清文
(社)日本旅行業協会理事長 金子賢太郎
|先頭に戻る|
平素は日本ユニセフ協会の活動、および子どもの権利を守るという大きな大義に向けての皆様のご支援に心からお礼を申し上げます。今回のシンポジウムの一つの大きな前進は、いよいよ日本の旅行業界が本格的にこのCodeプロジェクト発足に向けて協力してくださるということで、これはひとつの大きな節目を迎えつつあるのではないかと私どもは大変喜んでおります。
今までの歩みを簡単にご案内しますと、1996年に子どもの商業的性的搾取根絶に向けた第一回ストックホルム世界会議がありました。この会議はユニセフとスウェーデン政府が主催したもので、この会議に初めて日本から政府代表団が参加しました。この会議は、出席した日本の代表団が、日本自身が加害者という立場でこの問題に関わっていることを実感した、貴重なきっかけとなりました。翌年スウェーデンから日本に対して、第二回の会議を日本で開催するようにという強い要望があり、日本ユニセフ協会が中心になって取り組んでまいりました。
子ども買春、子どもポルノの問題に関しては、日本国内における法律の改正がどうしても欠かせません。そこで海外犯を含めて罰するための法律作りが議員立法で進み、1999年の暮れに「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下、児童ポルノ等禁止法)」が発行しました。その後、特にインターネットと新しいメディアを通じた子どもを題材に使ったポルノグラフィについての規制を強化すべく、同法改正案が国会に提出され、2004年7月に施行されたのです。ところがこの春に、子どものトラフィッキング(人身売買)というもう一つの問題点が注目されるようになりました。
このような状況において、WTO(世界観光機関)の運営委員会においてコード・オブ・コンダクト、旅行業界における行動規範が作られました。2004年の春にアメリカ・ニューヨークで初めて、ユニセフが中心になって業界向けのキックオフがなされ、日本としてもぜひこれに続きたいと旅行業界に参加を呼びかけているところです。2005年3月のキックオフを目指して、進めていきたいと思っています。
|先頭に戻る|
私が子ども買春の問題を初めて知ったのは、1998年、日本ユニセフ協会大使に任命された年でした。それまで日本のメディアで見る言葉は「売春」ばかりで、売るほうがいけない、買う側はあまり責任を問われないという状況でした。そしてその年にすぐ、この問題を自分の目で確かめるべく、タイを訪れたのです。
バンコクの、女性を買いにいくお客さんも多く泊まるホテルに部屋をとると、日本の旅行者がたくさんいました。すぐ近くには日本のお客さん向けのレストランや色々なサービスが提供される繁華街があり、夜になると若い女性がたくさん外に並んでいます。旅行客に話を聞くと、平気で「遊びに来た」と言います。そういうサービスを提供する女性の中には子どももいるかもしれないと言うと、「年なんか分からないし聞けないじゃないか、でも子どもなら自分は買いません」と言いました。でも本心かどうかは分かりません。
私たちはシェルターを尋ねました。現地の民間援助団体と警察に救助された子どもたちのうち、家に返してしまうと再び売られてしまう恐れのある子どもたちを収容するシェルターです。私が会った子どもたちは14〜15歳で、第一印象は身体がとても小さいということでした。学校に通いながらそこで共同生活をしています。親に一度は売られた身でも、子どもたちは本当は家に帰りたいのです。でも、親が反省していなければ再び売られて大変な目にあうので、民間援助団体は子どもを返しません。子どもたちは深く傷ついていました。人身売買には組織的な犯罪者が関わっていて、援助団体の施設は火をつけられたり脅迫されたりすることもあります。そういった困難な中で彼らは頑張って活動していました。
その後私たちは、北部のチェンライというミャンマーとの国境に近い町に行きました。どういう状況で子どもたちが騙され、家族がなぜ子どもたちが遠くへ行くことを許すのか、どこまで生活が苦しいのか、実際に子どもたちが売られている現地を見るためです。私が尋ねた山岳民族が生活する土地は斜面で、農地が少なく、食べることで精一杯。親は山を下りて日雇いで仕事をしています。子どもたちはとても素朴でかわいい。でもそういう民族の中では子どもの出生届けを出さない家庭が多いのです。子どもたちはとても狙われやすい環境にありました。借金のある家、離婚した家、家族が病気になっている家をブローカーが狙います。お父さん、お母さんに前金を払って子どもを連れて行く場合もあれば、直接子どもに声をかけて騙す場合もあります。そうして子どもたちを村の外に連れ出して売ってしまう、買春宿に入れてしまうということが行われていました。
実際に被害にあった子どもたちにも会いました。彼女(写真の子を示して)は15のときに両親が別れたので、生計を助けようと思って誘ってきた女性の言葉を信じてついて行くと、その晩から売春をさせられました。タイ語がしゃべれず、助けを求めることもできず、2年近くの間、毎日10何人の相手をさせられました。とうとう片言の言葉がしゃべれるようになって、トラックのドライバーに助けを求め、自力で村に帰ってきました。しかし、HIV/エイズにかかっていることが分かり、村の人たちが彼女を追い出しました。病気がうつる、汚い病気だと言って追い出したのです。彼女は幸い民間援助団体に救助されました。彼女のような目に会う子どもがいっぱいいます。買春宿は子どもたちを扱って商品として売り、子どもたちはHIV/エイズになる。地域によっては30〜50%がHIV/エイズにかかっているといいます。そういう子どもたちは発病したら山に捨てられてしまうケースもあります。こうしたことを予防するのに大切なのは学校です。売られてしまいそうな、ハイリスク地域の子どもたちを集め、学校で彼らや親に、子どもたちを売ってはいけないということを教育する活動が始まっています。
実際に買春宿で働く子どもたちにも会いました。年齢を聞くと14歳と言いますが、通訳の方はせいぜい12から13歳ですと言っていました。当時日本には子ども買春の法律がなく、それでも14歳未満の子どもとの性行為は禁止されていたため、日本人に聞かれると必ず14歳と言うのです。一人は最初のお客さんは80歳くらいの日本人だったと言いました。もうひとりの子も、私の常連は日本人だと言う。それを聞いて私は心が痛くて痛くて、柱に隠れて大声で泣いてしまいました。
フィリピンにも行きましたが、それ以上に大変な状況にあったのはカンボジアです。カンボジアでは、子どもたちは完全に外国に売られてしまうのです。私が行ったのはポイペットという、タイとの国境の町。毎日ポイペットから何千人と洪水のように労働者がタイへ流れていきます。大人と違い、子どもは国境を通過するのにお金がかからないため、何の証明書もいりません。ものすごくゆるい国境なので、そこでたくさんの子どもたちが売られています。商業的性的搾取のために売られる子もたくさんいます。
お客さんに何をされるのか、皆さんは想像できるでしょうか。世界では毎年大体120万人の子どもが売られたり買われたりして、犠牲になっていると言われています。その中で何人ぐらいが死んでしまうのかは分かりません。私があったエイズの女の子は、「私みたいな汚れている人は人を愛する資格がないんだ」と言いました。人を愛する資格、愛される資格は誰もが持っています。でもそういう子どもたちの中には、自分はもうだめだと思ってしまう子がたくさんいます。
子どもの商業的性的搾取は、子どもの人権上、絶対にやってはいけないことです。子どもを買いにいく人は日本人の中の本当に一部ですが、そのために日本が加害者のひとりだと言われることはとても悔しいことです。その一部の人々に子どもたちの実態を教え、それが犯罪であり、子どもたちが大変なダメージを受けるんだということを知らせたい。100%の国民が子どもの商業的性的搾取を否定する、そういう国になってほしいと思います。
|先頭に戻る|
私は、第2回横浜世界会議後の中期評価会議のうち、先週バンコクで開催されたアジア太平洋地域評価会議についてご報告する中で、現在の状況、そして各国の取り組みについて申し上げたいと思います。
今回の中期評価会議を主催したのは国際ECPAT、UNICEF、特に今回はユニセフ東アジア・太平洋地域事務所、UNESCAP(国連アジア太平洋社会経済委員会)、そしてタイ政府、日本政府、イタリア政府がこれに協力する形で実現しました。
政府代表としては16カ国、NGO、国際・国連機関などから約200名が参加しました。この問題に関する世界会議は、政府とNGO、そして国連・国際機関という3者の共同で行うという形がとられています。今回も日本を含めて10数カ国から政府報告が出されました。アジア・太平洋地域で政府報告を提出した国は、カンボジア、インドネシア、日本、マレーシア、モンゴル、パプアニューギニア、フィリピン、韓国、タイ、ベトナム、そしてカンボジア、ラオスです。それにNGO側からの評価が出され、それが合体したもので今回評価がなされました。
第一回、第二回世界会議の後に何が変わったか。それはまず第一に、第一回会議当時に見られた“否認”の状態−この問題はわが国には存在しない、関係ないという態度−が非常に薄れ、この問題に関してオープンに話し合うことができるようになったこと、そして透明性が増したことが挙げられます。それからもうひとつは、新しいリサーチが各国、各地域で始まったことです。例えば、インドネシア、マレーシア、そして太平洋地域での調査・分析・状況評価が始まっています。
子どもの参加。すなわち、政府がこの問題に関する解決法を考えるときに、若い人たちを意見集約の場に入れ、一緒に考えていくという方向性に関しては、積極的に行われている国とそうでない国とがありました。オーストラリア、カンボジア、モンゴル、フィリピン、タイなどは積極的に若い人たちの意見が取り入れられている国として挙げられましたが、残念ながら日本はこの中に入っていません。
第二点は、もともとUNICEFの子どもに関するデータベースを中心に、それにECPATやUNESCAPなどが協力・参加することによって、CSEC(子どもの商業的性的搾取) INFOというデータベースが整備されつつあるということです。また国としてこの問題に取り組む際の重要な部分は法律ですが、法改正、法の整備に関してはほとんどの国で何らかのアクションがとられてきました。ただし、その法執行の中身が問題として残されています。
第三点はCode of Conductプロジェクト。民間セクターのうち特に旅行業界を取り込んで進められています。旅行業界としても将来的な繁栄のためにこの問題に取り組むという姿勢が明らかになり、日本を含めて具体的なアクションが世界各地でスタートしつつあります。
第四点は、国家間の国際的な協力としてのMOU(Memorandum of Understanding)=覚書の締結があります。条約ほど手続きが難しくなく、しかし内容を伴った二国間または多国間の協約ですが、トラフィッキングに関してはそれぞれの国々で大きく前進したり、新しく結ばれたりしています。今後の課題は、覚書を結んだ後、どのように実効力のある形にもっていくか、それを具体的にどのように子どもたちの救済に結び付けていくか、ということでした。
第一回、第二回の両世界会議においてあまり表に出てこなかった国々として太平洋地域の島々、諸国があります。それらの国が今回の中期評価会議においては前面に登場しました。太平洋諸国12カ国が2003年、フィジーでUNICEFその他の協力を得てワークショップを開き、それ以来、状況分析、調査を押し進めています。
テーマとしては、インターネット技術に伴うポルノグラフィーの問題、そして男の子の性的搾取・性虐待が大きくクローズアップされました。そしてすべての搾取の中でさらに重点的に取り組むべき問題として、デマンド(需要)側の問題が提起されました。なぜ搾取するのか、子どもたちを搾取している人々に関する分析と対処が、最終的な政府宣言の中に入れられることが決議されました。
|先頭に戻る|
今日は政府がどのようなことをやっているのかを簡単にご説明させていただきます。政府としての取組みは外務省だけがやっているわけではなく、関係省庁のご協力を得てやっているものです。 2001年12月に、横浜で、日本において「児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」を開き、スウェーデンで開催された第一回会議の2回目としてストックホルム宣言を確認しました。
今回11月8日〜10日にバンコクで開催された中期評価会議の目的は、各国のレビューと協力関係の再確認にありました。こうした評価会議は、日本国内の役人としても節目となり、各省庁が集まり、色々な協議を行い、足りないところ、できたところの確認など、チェック・アンド・ゴーをする良い機会になります。ここで日本がやっていることを国内のものと海外のもの、3点ご紹介いたします。
国内のものについては、関係省庁のご協力を得て、児童買春・児童ポルノに関わる犯罪対策の推進、青少年育成大綱が2003年末に出来上がりました。そして2004年、「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議が小泉首相の指導のもと設置されました。これはいわゆるトラフィッキングの問題を扱うものです。年末までの1カ月半の間に行動計画が発表される予定です。この行動計画は大まかにいって3つに分かれています。まず第一はそのような被害者の入国を抑える。その次は日本国内における風俗営業、売買春などの犯罪的な摘発。それをオーガナイズしている業者、特に組織犯罪を取り締まる。最後は被害者の方を保護する。これらの3段階でやろうとしています。この中には、法律を改正して厳しく取りしまる部分と、さらに役人の意識を変えるという部分があります。すなわち、性産業に従事する方を犯罪者として扱うのではなく、自分の意志に反して連れてこられ、無理矢理そういうことをさせられている被害者として扱うということです。
性産業はまさに商売、お金儲けですから需給の問題です。供給サイドは供給サイド側の国で規制しなければいけない。他方わが国は需要サイドですので、需要がなくなれば利益が得られなくなるわけですから、収束していくのではないかと思います。ゼロにするのは難しくとも、減らしていくことはできるのではないかと思います。
次は予防です。すなわち、人身売買の背後にあるのは生活困窮であり、様々なコミュニティ、家庭の問題。ではそれについて日本として協力できないのだろうか? これは外務省の海外協力の世界ですので、今後はこういった問題に資源を更にシフトできればと考えています。
最終的には保護。被害にあった人たちを保護して健康、精神を回復し、さらに社会へ戻っていくための教育が大切だと考えています。
最後にこれからどうするか? これについては国内行動計画を作り、それを国内で実のあるものにする必要があります。また、世界にこうやっているんだと示して、評価点をあげてもらう必要があります。また、皆さんも一人一人が自分自身の問題だと考えて、まずは自分の身内にそういうことをさせないという意識を持つことが大事だと思います。子どもの参加も今後の一つの課題だと思います。ただこれは一朝一夕にできることではなくて、外務省だけでは対応が困難な部分がありますので、実現のためにはNGOの方たちのご協力をいただく必要があると思います。
|先頭に戻る|
第二部では、コード・オブ・コンダクトを日本で発足させるために、日本の旅行業界の皆様に参加してくださいという呼びかけをするのですが、まずはこのコード・オブ・コンダクトとは何か?いつ、誰が、何のために、何をするのか?という話をさせていただきます。
いつ、誰が? 1996年の第一回ストックホルム会議で出てきた問題に対して、政府機関やNGO、国連機関だけではなく、旅行者がこういうことをやっている部分が大きいので、旅行業の方にも協力していただこうということで、ECPATスウェーデンが旅行業の団体に声をかけて始まったのが最初です。
では次に、何をするのか? これは、もうすでに行動倫理規定という文書が出来上がっていて、それに関心のある方がサインをすればそれで終わりというわけではありません。このプロジェクトに参加していただく企業の方には、サインをした後、実際に次の6つのアクションをとっていただきます。
1つ目。企業ポリシーで子どもの商業的性的搾取反対をうたう。企業、会社の方針などの中で、商業的性的搾取に反対するという立場を明らかにしていただく。
2つ目。海外勤務のかたを含め、社員の方々の教育・研修をしていただく。
3つ目。関連業者、すなわち海外の旅行先地で業務提携をしている方々と業務上の契約を結ぶ際に、その契約書の中に、子どもの商業的性的搾取に関わらないこと、関わった場合には契約を反故にするということを明記した契約書を交わしていただく。
4つ目。旅行カタログ、パンフレット、機内ビデオ、チケット、ホームページなどの旅行者の方々に直接触れるツールの中で、商業的性的搾取に反対する姿勢を謳い、この問題に関する啓蒙をしていただく。
5つ目。旅行先地のキーパーソン、すなわち組織内で決定権のある人に情報を提供する。そういった人たちにこういう問題について日本の旅行業者がこういう対策をとっており、また、我々はこういうアクションをとらなければならないのだということを伝えていただく。
6つ目。年次報告をする。これらの活動を毎年続け、どういうアクションをとったかということを各社でモニターし、それを公にする形で毎年ECPAT事務局に報告書を提出していただく。以上6点でワンセットの倫理規定となり、日本ではこの動きをCodeプロジェクトと呼ぶことにしました。
今、ヨーロッパ、北米、アジアで50以上の企業が参加しています。北米での最初の打ち出しが2004年4月に行われ、カールソンという北米最大級の旅行業グループが第一号としてサインしました。次にCodeプロジェクトの日本で期待される効果を二つ挙げてみました。
1 つ目は、この問題に関わる現地の関係者に対する世界的な包囲網が形成されること。日本の旅行業が世界の旅行業のマーケットに占めるシェアは世界一と伺っています。先進国の旅行業者が商業的性的搾取の問題に直接関わっているということはまずないと認識していますが、現地のオペレーターまでコントロールしきれていないことがひとつの課題だと思います。しかし、世界の旅行業において世界一のマーケットシェアを持つ日本の旅行業の皆さんが参加することによって、世界的な包囲網を形成することができると思います。
もう1 つは、世界的基準に則った企業の社会的責任を履行しているということが明確に伝えられることです。皆さんが参加して、もっと広がっていくことによって、このコード・オブ・コンダクトは環境分野で採用されているISO9000やISO14000にも匹敵するものになると思っています。
では具体的に、今現在6つの項目についてどのような取り組みがなされているのか? ECPAT/ストップ子ども買春の会の斎藤さんから説明していただきます。
|先頭に戻る|
1. |
観光における子どもの性搾取に関する倫理規定を持つ。 |
2. |
従業員への教育。旅行者の送り出し国と受け入れ国の両方で行う。 |
3. |
子どもの商業的性的搾取をともに拒否する条項を関連業者との契約事項に入れる。 |
4. |
旅行者に情報を提供する。 |
5. |
目的地でキーパーソン(組織内で決定権のある方)に情報提供をする。 |
6. |
年次報告をする。 |
本日すでに説明のあったコード・オブ・コンダクトですが、1〜6の項目まであげましたのでもう一度ご覧ください。
コード・オブ・コンダクトとは、旅行業界とNGOによる「子どもの観光買春防止のための国際協力プロジェクト」です。企業、観光業者が中心ですが、2003年の時点で13カ国を超え、50を超える業者が世界的に参加しています。また、約300万人の旅行者にコード・オブ・コンダクトがインパクトを与えたといわれています。CodeプロジェクトはECPATのプロジェクトであり、ユニセフが資金提供。WTOを含む3者が密接に互いに協力しあって進めています。ナショナルパートナーとして、世界各国のECPATとNGOが協力しています。コード・オブ・コンダクトの運営委員会では、WTO、インターポール、観光業界の代表、日本ユニセフ協会、タイ政府観光庁、国際ECPAT、学識者などがメンバーになっています。
ではコード・オブ・コンダクトの実際例について見てみたいと思います。北ヨーロッパのマイ・トラベルという会社の例では、Corporate Policyの最初に、「マイ・トラベルはすべての形態の子どもの性的搾取に反対し、そのような犯罪を予防し、処罰するために作られた法の条項を支持します」と書いてあります。また、「マイ・トラベルは顧客とパートナーとスタッフのすべてのメンバーが子どもの性的搾取に関与することを拒否し、彼らの認識を促すようにすべての子どもの性的搾取のケースを報告します。このポリシーに違反した場合、解雇、警察への通報、協力関係の停止となることがあります」また、別の部分には、会社のスタッフはこの会社のポリシーについて、内部の雑誌、イントラネット、ウェブで、また海外スタッフの場合は特別トレーニングを通じて情報が提供されるというふうに書いてあります。
次はコード・オブ・コンダクトの3、子どもの商業的性的搾取を拒否する条項の例として、イギリスの旅行会社、トンプソン社の例があります。同社の宿泊施設との契約用紙には、「トンプソン社とともに、契約の相手の会社・業者は子どもの商業的性的搾取の予防のためにともに働くことに同意します」と記載されています。また、トンプソン社は旅行業者の影響力を子どもの虐待防止のために行使することを決意すると宣言しています。
タイ政府観光庁の作ったパンフレットの裏面には警察、観光庁、ECPATの住所など、すぐに旅行者が通報できるように連絡先がはっきりと書いてあります。
次は若者のキャリア支援プロジェクトです。趣旨としては、単なる職業訓練ではなく、買春の被害にさらされる危険のある子どもたちに生きる術を身に付けさせるというものです。これは1995年、タイのパンパシフィックホテル・バンコクで開始されました。子どもの商業的性的搾取の防止のためのプロジェクトといえます。最初は9人の女の子の研修生から始まり、2001年は17歳から20歳の研修生100人が参加しました。タイ国内の最も貧しい県、チェンライ、チェンマイ、コンケンといったところで研修生が募集されました。このパンパシフィックでのプロジェクトは非常に評判を呼び、現在はバンコクで23ホテル、フィリピンのマニラでは6ホテル、合計350人以上が研修を受けています。23週間のプログラム内容は、ホテルの日常業務、サービス、基本的な英語のほか、ライフ・スキルとしてエチケット、応急措置、HIV/エイズの勉強、親の責務について、キャリア・プランニング、時間の管理、チームワーク、電話のかけ方、性教育、セクシャルハラスメントについて、子どもの権利についてなどが包括的に学べるようになっています。このプログラムはパンパシフィックホテル・バンコクとユニセフ・バンコク事務所が共同で開発しています。
このプログラムを実施しているパンパシフィックホテル・バンコクのパンパシフィックホテルズ・アンド・リゾーツ(株)というのは、東急グループの海外ホテル運営部門です。この問題に関する日本への批判は根強いものがありますが、日本の企業がこういったプロジェクトを推進しているということをもっと皆さんに知ってもらいたいと思いました。ある報告書ではパンパシフィック・ホテル・アンド・リゾーツ(株)は企業の社会的責任を促進しているリーダーだと賞賛されています。
|先頭に戻る|
日本旅行業協会(JATA)は、旅行業法という法律に基づいて、お客様を観光旅行などにお連れする、そういった旅行商品の企画・販売をする業者の集まりです。
JATAは大手の旅行会社から中小の会社まで、約1200社の正会員からなっています。現在日本には旅行業者が約1万社あるといわれますが、海外旅行を取り扱っている会社の数でいうと、この1200社で8割がカバーされていますので、海外に旅行した際の児童買春問題の解決に向けては、JATAが責任を担うのが適切であると感じています。
旅行業界としての買春問題についての取り組みですが、今始まったというわけではございません。業界団体として、大きく二つに分けて取り組んでいます。ひとつは、業界の中で会員企業、そして会員企業の社員を直接対象にした取り組み、もうひとつは直接旅行に参加する一般の方々への啓蒙という取り組みです。
1つ目の業界内企業、会員企業に対する取り組みとしては、ホームページで平成11年の11月1日に施行された児童ポルノ等禁止法を掲載して周知を図り、また同じ頃に“JATAニュースレター”に同法とその概要を掲載して会員全員に周知徹底を図りました。またJATA内に設置されている委員会のうち、この問題に関係すると思われる委員会において法律の趣旨等について詳細を報告しました。また全国に8つの支部を持っていますが、その8支部で開催されたセミナーにおいて法律の趣旨説明・啓蒙を行いました。最近では平成13年5月18日の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議に先立つ意見交換会(スウェーデン大使館)に参加し、私どもの取り組みについて発表を行いました。平成13年12月17日〜20日に開催された横浜会議にもJATAの海外旅行委員会メンバーや私どもの職員自身が参加しました。また会員企業の従業員に対しても、旅行代理店に必ずいる旅行業務取扱主任者に対して定期的に研修を行っていますが、その中で同法に関する指導を行っています。また、海外旅行先の現地手配をするツアー・オペレーターの業界団体に対しても法律の趣旨・内容について周知、協力の要請をいたしました。
2つ目の旅行参加者、個々の一般の消費者の啓蒙については、私どもが作成している海外旅行パンフレット「安全な海外旅行のヒント」で5分の1弱のスペースを割き、『日本の子供も、世界の子供も、その人権を守るのは大人の責任です。』という表題で、児童ポルノ等禁止法の遵守について触れ、会員及び全国の消費者センターに配布しました。
最後に今後の取り組みについてですが、私どもとしましても、倫理規定について業界の中でのさらなる浸透・徹底を図り、2005年3月までに倫理規定にサインをすることができるよう業界内の会員企業を督励し、業界団体としてもこのコード・オブ・コンダクトにサインをするという前提で一つ一つの作業をこなしていきたいと考えています。
最後に、このような時代に私ども業界が児童買春等に直接関与することはないと断言できますが、私どもも含め、この問題に対して鈍感であるということ自体が罪深いことであると考えています。攻勢防御、積極防御という姿勢でこの問題に取り組みたいと思います。
|先頭に戻る|
従来、旅行業界と子ども買春の問題は必ずしもスムーズに進んできたわけではありませんでしたが、今回のシンポジウムでは新しい共闘の時代が始まったことが感じられました。
コード・オブ・コンダクトにあるとおり、日本の旅行業界に期待されるのはマーケットにおける大きなシェアであり、現地のオペレーターに対する影響力が大きなカギとなります。
この倫理規定が十二分に実行され、そして特に現地のオペレーターに対してそれが強制力を持つように、実効力のあるものとなるよう、2005年3月のCodeプロジェクト日本発足に向けて努力してまいりたいと存じます。今後も皆様のご支援とご協力をよろしくお願いいたします。