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TICAD IV横浜開催応援企画
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© 日本ユニセフ協会 |
横浜開港50周年を記念し、1917年(大正6年)市民の寄付金で建設された横浜開港記念館で、報告会が開催されました。 |
マスコミの報道などで、「暗黒大陸」としてのイメージを与えられがちのアフリカの「今」と、この大陸の子どもたちの未来を支える大きな力となっている日本のみなさまに、その成果を伝えるため、23日(火)、来年5月にTICAD IV(第4回アフリカ開発会議)の開催を控えた横浜市で、ユニセフ東部・南部アフリカ地域事務所のペール・エンゲバック所長による現地報告会が開催されました。
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エンゲバック所長が担当するアフリカ東部・南部地域は、世界に「暗黒の大地」としてのイメージを植えつけてしまう情報が多く発信される地域です。例えば「紛争」。実際、ソマリアやコンゴ民主共和国に代表されるように、未だに紛争が、国土の広範囲で「日常」の一部となっている国があり、アンゴラやウガンダ北部のように、ごく最近まで続いた紛争の負の遺産に苦しめられている国も少なくありません。
しかし、こと子どもたちの「現状」に目を向けると、アフリカの外にいる私たちが持っているイメージが必ずしも正しくないことに気づくはずです。
エイズ問題が深刻なサハラ以南のアフリカでは、多くの子どもたちの命がエイズで奪われている・・・エイズが子どもたちの最大の死亡原因だ。そんな風に言う人たちがいます。でも事実は異なります。アフリカの子どもたちの最大の死亡原因は、適切な新生児ケアが受けられないことによるもの。これが、5歳未満の子どもの死亡の実に26%を占めています。そればかりか、その26%のほとんどが、生後28日以内の死亡です。次に来るのが肺炎。21%を占め、マラリアが17%と続きます。
また、この4-5年の間に、こうした状況が大きく改善されたことも事実です。 4年前、アフリカの子どもの死亡の最大の原因はマラリアでした。しかし、殺虫剤で処理された蚊帳の普及などの活動が大きな成果を生んでいます。また、死亡原因の第2位は「はしか(麻疹)」でしたが、この4年間で、この病気による死亡率は75%改善されました。ケニアの3つの村で実施した試験的なプロジェクトでは、こうした蚊帳の配布によって、子どもの死亡率が50%近く改善されたと報告されています。
こうした改善の背景にあるもの。それは、コミュニティーの中で、基本的ながらも包括的な保健サービスを提供できるような仕組みを作ることでした。アフリカにも医師や看護師など、特別な訓練を受けた人々がいないわけではありません。しかし、そのような人々の数を増やすことには時間もお金も掛かります。また、現在のアフリカの経済状況から、多くの医師や看護師は、国外での仕事を求めてしまいます。このような現実を鑑みた時、コミュニティーの中に、保健スタッフ(ボランティア)を養成し、予防や早期発見などの手を打つことが、アフリカの子どもたちの命を守る鍵だったのです。
ユニセフは、マラウイでコミュニティーで働く保健スタッフ1万人を養成。その結果、当初、2025年に達成することを目標としていた5歳未満の子どもの死亡率の低減目標値を、2015年までに達成できる見込みとなりました。同じようなことが、マダガスカルでも起きています。
マラウイもマダガスカルも、決して特別な国ではありません。他のサハラ以南のアフリカの国々と同様、とても貧しい国です。その2つの国ができたということは、他の国にも出来るということを、私たちに示してくれていると思います。
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アフリカのエイズ問題は深刻です。その事実に誤りはありません。しかし、トンネルの出口に光が見え始めているのも事実です。
サハラ以南の国々を総体的に見た時、後に述べる5つの国を除いて、HIV陽性者数のピークは2000年でした。同年から昨年(一昨年)にかけ、ケニアでは19%から6%に、ウガンダでは17%から7%に、タンザニアでは14%から8%にそれぞれ感染率が大きく下がっています。
一方、こうした傾向にあてはまらないのが、スワジランド、レソト、南アフリカ、モザンビーク、ボツワナの5カ国。例えばスワジランドでは、15歳から49歳までの妊娠可能な年齢にある女性の57%がHIV陽性と推定されています。また、世界のHIV陽性の妊婦の94%が、この5カ国に集中しています。母子感染の確率が非常に高いことは言うまでもありません。事実、乳幼児死亡の50-60%がHIV/エイズに関連するという報告もあります。
しかし、この現状を改善する手段は、既に私たちの手中にあるのです。
一つは、母子感染予防サービス(PMTCT)の普及。全ての妊婦に対するエイズ検査が実施されれば、母子感染をコンマ数%に近い確率まで防ぐことができます。ボツワナのPMTCT普及率は93%に達しました。他の4カ国でも12-50%位まで普及が進んでいます。
また、これまで大人用しか存在しなかった子ども向けの抗レトロウイルス治療薬が開発され、普及が始まったことも、非常に大きな前進です。
さらに、こうしたサービスの普及により、アフリカでは、今アジアなどでも大きな問題になっている「偏見」や「差別」といった問題も、克服しつつあります。より多くの人々が、HIV/エイズ問題をオープンに語り、それによって、感染の可能性が高い世代の子どもたち・若者たちが、エイズのリスクや自分やパートナーを守る術を身につけ易くなってきています。
「アフリカの角」と呼ばれる地域にある、ソマリア、エチオピア、ケニアの3国に、多くの遊牧民がいること。頻繁に土地を移動する彼らの子どもたちは、保健や教育などの社会サービスを享受しにくい立場(もっとも弱い立場)にあることは、これまであまり注目されず、各国の社会政策・開発計画の中でも、「見落とされた」存在でした。
ユニセフは、最近、遊牧民の子どもたちの現状を調査。レポートとしてまとめ、教育や保健などの具体的なサービスや支援活動をスタートしています。
一見、「暗黒」に見える状況に「出口」を作る活動も、国や国際社会の政策などで見落とされてしまった最も弱い立場に置かれた子どもたちを守る活動も、横浜をはじめ、全国各地で、日ごろからユニセフをご支援くださっているみなさまお一人お一人に支えられています。
この場をお借りしまして、ユニセフを代表いたしまして、みなさまに、お礼申し上げるとともに、更なるご支援をお願い申し上げる次第です。
(まとめ: 日本ユニセフ協会 広報室)
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