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国際衛生年記念 連続シンポジウム・セミナー
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© UNICEF Japan/2008 |
シンポジウム・パネルディスカッションの様子(左から)。WHOのヤコブ・クマルサン氏、ユニセフのプログラム部門副部長バネッサ・トービン氏、アジア太平洋水フォーラムのラビ・ナラヤナン氏。 |
国連児童基金(ユニセフ)、日本水フォーラム、国連開発計画、世界銀行が共同で開催した本シンポジウム。高村正彦外務大臣の基調講演に続き、アジア・太平洋水フォーラムのラビ・ナラヤン副議長が、気候変動との関わりなど世界的視野から見た「水と衛生」問題を、ユニセフ本部事業部バネッサ・トービン副部長が、開発途上国の人々の生活に具体的に現れている「水と衛生」の課題を報告。続くパネルディスカッションでは、橋本和司氏(国際協力銀行専任審議役)や吉沢直大氏(ダノンウォーターズオブジャパン株式会社1Lfor10Lプログラムプロジェクトリーダー)、デニス・ノエル・オドゥヤ・アウォリ(駐日ケニア大使)らが加わり、水と衛生問題の解決に向けた官民の役割など、活発な議論が交わされました。
© 日本ユニセフ協会/2008 |
「水と衛生問題」に関する日本政府の新たな取り組みを説明する高村正彦外務大臣。 |
高村正彦外務大臣は、第4回アフリカ開発会議(TICADⅣ)とG8北海道洞爺湖サミットを開催する日本が、水と衛生の問題についてどのように考えているのか報告しました。
「日本人が普段何気なく使用している水は、実は非常に希少な資源。地球上の97%は人類にとって利用し難い海水で、淡水はわずか3%。容易に利用できる淡水である河川は、地球上の水資源全体の僅か0.0004%にすぎません。このように貴重な資源である水の問題に対する取り組みは、国連のミレニアム開発目標や2003年のエビアン・サミットなどで掲げられ、取り組んでいます。しかし、「水と衛生」についての課題は依然として山積みしているのが現状です。」
© 日本ユニセフ協会/2008 |
会場は300名以上の席が埋まり、ほぼ満席。外務大臣をはじめとする講演を熱心に聴講していました。 |
「このような状況で、日本は何ができるでしょうか。江戸時代から生活用水の循環利用が行われてきた日本。この循環利用の技術をもう一度見直し、この利用法を世界へ向けて発信していくことが考えられます。「水と衛生」の分野において、日本は世界のトップドナーでもあります。日本の誇る水に関する知識や技術を結集し、具体的な行動を整理し、強い政治的意思を示すこと、そして市民社会と協力しながら、国際社会に提供していくことが重要です。2008年は、日本でTICADⅣ、G8洞爺湖サミットが開催されます。「水と衛生」の議論をさらに活発にしていきたいと考えています。」
ユニセフ本部事業部バネッサ・トービン副部長は、アフリカにおける「水と衛生」の現状と課題について報告しました。
「最も「水と衛生」の問題が深刻なのは、アフリアに住む人々。特にサハラ以南の人々です。その中でも、病気や感染に弱い子どもたちがもっとも影響を受けているのは言うまでもありません。国連ミレニアム開発目標では、8つの目標を掲げていますが、この開発目標7では、安全な飲み水と基本的な衛生設備を持続可能な形で利用できない人々の割合を1990年から2015年までに半減させることが掲げられています。 1990年の時点で、安全な飲み水を利用できない人の割合は、22%(約12億人)。基本的な衛生施設を利用できない人の割合は、51%(約27億人)でした。2015年までに、この割合を半減にするためには、安全な飲み水を利用できない人の割合を12%(約758万人)に、基本的な衛生施設を利用できない人の割合を25%(19億人)に、それぞれ引き下げなければなりません。」
「2004年の時点で、安全な飲み水を利用できる割合は、世界全体で83%。基本的な衛生施設を利用できる人の割合は、世界全体で59%です。水の分野の目標達成については、順調に推移していますが、衛生施設改善の目標を達成するためには、多大な努力が必要です。」
「特にアフリカでは、この目標達成が非常に厳しい状況です。衛生施設を利用できない地域は、アフリカやアジアなど広範囲に及んでいますが、世界全体で83%の人々が安全な水を利用している中で、安全な水が利用できない地域の大半がアフリカであることも、アフリカの状態の深刻さを表しています。」
「アフリカは、都市部と農村部の差が著しく激しいことも特徴。毎日4000人もの5歳未満の子どもたちが下痢性疾患により命を落としていますが、この5割がアフリカの子どもたちです。安全な飲料水確保の重要性は、先進工業国の人々にも理解しやすいものでしょう。しかし、特に衛生施設(トイレ)の改善は立ち遅れており、大変重要な課題です。」
なぜ衛生施設(トイレ)の普及・改善が大切なのでしょうか?少なくとも3つの理由が挙げられます。
・人間の尊厳にかかわる!
基本的な衛生施設は、私たちの生活になくてはならないもの。人間の尊厳にかかわる問題です。
・社会発展が見込まれる!
衛生施設が整えば、環境整備や社会的利益が見込まれ、社会発展も期待できます。
・子どもたちを守る!
子どもたちの感染症や疾患が減少し、栄養不良も改善されます。健康になれば、学校へ通う子どもたちも増加。衛生施設(トイレ)がないために、学校へいくのをためらっていた女の子も安心して学校へ通うことができます。
・農村部の人々への衛生施設(トイレ)支援が費用は高すぎる?
年間95億ドルの資金が確保できれば、2015年までにミレニアム開発目標7(基本的な衛生施設を利用できる人の割合を半減する)を達成することができます。
・貧困化の生活を強いられている人々は、飲料水を買うためのお金がない?
彼らは、トイレや水のサービスを得るために、すでに費用を払っています。
・衛生施設を整えることは、大変な労力が必要?
適切な方法で実施すれば、そんなことはありません。空き地での排泄をやめることを訴え、技術者の助けをかりながら、貧しい人々にも無理のない金額で、衛生施設(トイレ)を整えることが重要です。
WHO(世界保健機構)は、衛生施設(トイレ)の改善に1ドルでも、1ルピーでも投資すれば、そうした設備を必要としている貧困地域の子どもや家庭の健康改善が進み、平均で投資額の9倍の経済効果が見込まれるとしています。社会環境が改善され、子どもたちの病気や栄養不良が改善され、学校へ通う子どもたちが増加。さらに、仕事の質の向上が期待できます。女性や子どもたちのプライバシーや尊厳も守られます。基本的な衛生施設(トイレ)を整えることは、様々な利益を生み出します。ミレニアム目標7は、達成可能なものであることを私たちは認識しなければなりません。
(まとめ:日本ユニセフ協会広報室)
連続シンポジウム&セミナー 第2弾(3月6日)・第3弾(3月19日)開催;
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トイレ・衛生改善は、下痢症等の予防、乳幼児死亡率低下、健康増進、水汲み労働 からの解放につながるにも関わらず、これまでないがしろにされてきました。そこ で、本ワークショップでは、トイレ改善の緊急性を改めて確認し、関連団体と連携・協力しながらトイレ支援活動を推進する必要性をアピールしたいと考えており ます。また、トイレ改善は、設備的な支援だけでなく、トイレを適切に維持管理す るための人材育成やトイレを正しく使える人づくりも大切です。今回は、地域保健 の起点になりうる学校を中心に、トイレ支援のあり方や行動指針について討議します。
■内容
小林光氏(環境省官房長)から環境と衛生の改善に向けた国際貢献について応援 メッセージを頂きます。バネッサ・トビン氏(国連児童基金プログラム担当副部 長)による「トイレ支援が子どもの命を守る!」というビデオメッセージが放映さ れます。講演は、神馬征峰氏(東京大学大学院国際地域保健学教授)より、「包括的な学校保健活動でのトイレ導入シナリオ」について、また山本敬子氏(国際協力 機構専門員)からは、「給水支援で見えてくるトイレ改善の必要性」を予定しております。講演のあとには、日本トイレ協会から「ベトナムでのトイレ・衛生事業の 実施報告」を行い、最後のパネル・ディスカッションでは、「学校トイレ・衛生改善のあり方を考える」〜トイレから、『水・教育・保健』をつなぐ効果的支援プロ グラムの作成を目指す〜と題して、関連団体と討議を予定しています。
※プログラムの詳細は本ホームページなどで改めてお知らせする予定です。
※本セミナーは、日本トイレ協会主催「第3回国際トイレワークショップ」として位置づけられています。
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昨年、ユニセフと1L for 10Lプログラムを成功させたダノンウォーターズオブジャパン株式会社と、日本トイレ協会とともに「トイレ出前教室」で、日本の子どもたちへの衛生教育を支援する王子ネピア株式会社の代表を迎え、水と衛生分野における、公益団体と企業の実践的パートナーシップを紹介し、日本の企業の皆様に、今後の取り組みに向けた検討材料を提供します。
※プログラムの詳細は本ホームページなどで改めてお知らせいたします。
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一人でも多くの子どもたちに適切な衛生施設(トイレ)を提供し、適切な衛生知識を普及するためには、皆様からの息の長い支援が必要です。暖かいご支援とご協力をお願い申し上げます。