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国際衛生年記念連続企画 国際トイレワークショップ2008開催
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© 日本ユニセフ協会/2008 |
小林光氏 |
環境省大臣官房長 小林光氏は、ワークショップ冒頭の「応援メッセージ」の中で、環境の観点から、水と衛生についての問題を報告しました。
「気候変動が世界中で問題になっていますが、温暖化の影響で、降水量は著しく変化しています。高緯度地域では、降水量が増加する可能性が非常に高く、一方で多くの亜熱帯の陸域では、減少する可能性が高い。降水量が多い地域でも、干ばつに苦しめられている地域もあり、問題は深刻です。しかし、この問題はただの水問題に留まりません。水循環変化の予測結果によると、東アジア、南アジア、東南アジアにおいて、洪水・干ばつに関連した下痢症による局所的な死亡率および疾病率が増加すると予測されています。」
「さらに、衛生施設(トイレ)と、その処理の方法も非常に大切。廃棄物及び排水の管理改善は難しい問題なのです。その中でも、し尿と雑排水を併せて処理する浄化槽は、日本発の技術です。処理水質も下水道並みに良好。低コストかつ短期間で整備でき、処理された水はその場で還元されることから、地域の衛生問題を解決するための有効な手段となっています。」
「これらの問題解決において、日本は重要な役割を担うはずです。衛生施設(トイレ)の工夫は、ひとつの大きな焦点となるでしょう。」
©日本ユニセフ協会/2008 |
神馬征峰氏 |
東京大学大学院医学系研究科・国際地域保健学教室 神馬征峰氏は、自らの体験を踏まえたトイレ普及活動の様子を紹介しました。
「保健医療は現地における最大の問題だと思います。保健医療の改善のために何か簡単にできることはないかという時に、『まずはトイレからでしょう』と思いがちです。ところが、多くの村人にとっては、トイレがないのが当たり前。そして、トイレよりも大事なものがいくつもあります。まずは食べることと飲むこと。食べるためには、火をおこし料理しなくてはなりません。火をおこすには、蒔きが必要です。雨が降っても、蒔きを乾いた状態にしておくために、屋根があり、壁のあるトイレは格好の建築物となります。また、たくさんの人が鶏を飼っていますが、これは、都会で鶏を売って現金を得るため。鶏は大切な現金収入源です。夜中に豹や熊に襲われるのを防ぐため、トイレはまたしても、よき防護建物となります。」
「このような人々の暮らしぶりをよく理解しなければなりません。トイレを建てるだけでなく、いかに利用され、使われるかが大切です。その解決策のひとつとして、コミュニティ開発型の支援があります。コミュニティ開発とは、コミュニティに暮らす人々自身が主体となって活動すること。住民が参加し、意思決定を行います。」
「しかし、何からはじめたらいいでしょうか。途上国の学校保健支援は、問題だらけ。ポリシーがなく、地域の連携がなく、サービスがなく・・・挙げればきりがありません。ここで、包括的学校保健活動が効果的です。トイレに関係するものだけでなく、教室をきれいにする。ゴミ箱を作る。地域と連携する。などの活動が含まれる活動です。具体的に行った事例としては、77項目のチェックリストにチェックをしてもらいました。チェック項目を大概すると、個人の技術、環境に関するもの、保健・栄養サービス、病気予防、地域連携などの項目があります。どんな学校でも、ひとつぐらいは良い点があるものです。」
「お金がかからずにすぐにできること、お金はかからないけれど、時間を要するもの、お金が必要なもの(支援が必要)に分け、具体的に活動を促し、一定の基準に達した学校には、金レベル、銀レベル、銅レベルと認定しました。」
「包括的に保健活動を経験していると、トイレの運営は、持続可能なより優れたものになりやすくなります。トイレをただ建てるだけでなく、このような包括的な活動が今後検討されていくべきでしょう。」
© 日本ユニセフ協会/2008 |
トイレ教室の様子 |
日本トイレ協会の加藤篤氏は、ベトナムでのトイレ授業の様子を報告しました。
「授業の始めは、まず、うんちを知ることから。うんちって何?何で手を洗うの?何でトイレに行くの?こんな質問に、子どもたちは興味津々。『そんな形ではない』『ベトナムではトイレのことをNhà vê sinhというんだ』等、子どもたちから次々に意見が飛び出します。この子どもたちの楽しそうな様子は、日本でもベトナムでも同じでした。楽しく行うことで、トイレに対する悪いイメージを払拭し、活発に意見を出させ、正しい知識を広めるように努めました。」
「トイレが怖いイメージを持っているようなところでは、トイレにみんなが書いた絵を貼ることを提案。学校の施設状態や生活習慣に合わせた、すぐにできる内容を紹介しました。トイレは、怖いところではなく、下痢や病気から守る「かっこいい!」ところなのです。」
2015年までに達成を目指しているミレニアム開発目標の中で、まだまだ遅れている水と衛生の問題。目標達成が見込まれている地域でも、まだ支援が届いていない子どもたちが大勢いることを忘れてはなりません。全ての子どもたちが安全な水と衛生施設を利用できるまで、支援活動を続けていく必要があるのです。
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昨年、ユニセフと1L for 10Lプログラムを成功させたダノンウォーターズオブジャパン株式会社と、日本トイレ協会とともに「トイレ出前教室」で、日本の子どもたちへの衛生教育を支援する王子ネピア株式会社の代表を迎え、水と衛生分野における、公益団体と企業の実践的パートナーシップを紹介し、日本の企業の皆様に、今後の取り組みに向けた検討材料を提供します。
※プログラムの詳細は本ホームページなどで改めてお知らせいたします。
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一人でも多くの子どもたちに適切な衛生施設(トイレ)を提供し、適切な衛生知識を普及するためには、皆様からの息の長い支援が必要です。暖かいご支援とご協力をお願い申し上げます。