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「子どもの情景」試写会開催
■日時 2009年3月6日(金) バーミヤンを舞台に、当時19歳のイラン人ハナ・マフマルバフ監督が、そこに住む子どもたちの「今」を描いた映画『子供の情景』が、4月18日(土)より岩波ホール(東京都千代田区)を皮切りに全国で順次公開されます。アフガニスタンの子どもたちの学校への思いや、未だに癒えていない心の傷を描き、2007年のローマ映画祭でユニセフ賞を受賞した本作を推薦する(財)日本ユニセフ協会(東京都港区)は、一般公開に先立ち、3月6日(金)、東京都港区のユニセフハウスで特別試写会を開催しました。 上映に先立ち、アフガニスタンの子どもたちの現状についてユニセフのアフガニスタンでの活動も統括するユニセフ南アジア地域事務所のダニエル・トゥール代表が報告しました。 ユニセフ南アジア地域事務所代表の報告 「みなさま、こんばんは。今日みなさまにお会いできたこと、また、こうしてこの映画をご紹介できることを大変嬉しく思います。 アフガニスタンでは、何十年にもわたる紛争が続いてきました。ソ連による侵攻、タリバンによる支配、そして今は米国その他の国の軍隊が駐留している状態です。 アフガニスタンは内陸国で港がないため、輸入はすべて陸路に頼っています。このことは、アフガニスタンの貿易を難しくしています。産業はほとんどがインフォーマルセクターで、農業をしているか、なんらかの商売をしている、あるいは店を持っているといった人々が多く、会社に雇われているとか政府のために働くといったような雇用状態ではありません。また、GDPの40%は麻薬の輸出によるものです。 しかし、アフガニスタンはすばらしい人々と多様な文化の国でもあります。お年寄りをとても大切にしていますし、外から訪れてくる人たちを大変温かく迎えてくれます。ですので、アフガニスタンは、ネガティブな部分もあれば、すばらしい魅力もある国なのです。 アフガニスタンの人口は約2,700万人。平均余命は非常に短く、日本人の平均余命が70歳以上であるのに対して、アフガニスタンではわずか44歳です。また、乳児死亡率も非常に高く、多くの子どもたちが1歳未満で亡くなったり、あるいは5歳の誕生日を迎える前に命を落としています。また、妊娠・出産に関連する原因で亡くなる女性の数が世界で2番目に多い国でもあります。 非識字率も大変高く、女性の86%は読み書きができません。このことは開発にとって、非常に大きな障害となっています。 アフガニスタンは、世界で5つしか残っていないポリオ流行国のひとつです。進展はあり、症例数は減ってはきていますが、まだ根絶には至っていません。30の症例が出る年もあり、30件という数字は多くないように見えるかもしれませんが、ポリオさえなかったら、この30人の子どもは手足が麻痺したり、亡くなったりする危険に晒されないで済んだのです。 日本では予防接種は定期的に行われていますが、アフガニスタンでは子どもたちが全員ちゃんとポリオのワクチンを受けられるように、大変な努力が必要です。 この写真は、南部のカンダハールの地域の様子です。この地域は非常に治安が悪く、子どもたちにワクチンを届けるために、新しい方法を使わなければなりません。たとえば、治安が悪くてアフガニスタンの中を陸路で行けないので、パキスタン側から国境を越えて、そこの地域の子どもに届けるようなこともしています。 ポリオの予防接種は注射ではなく、ワクチンを口から服用させればよいので、医師がいなくてもできます。そういう点では、すべての子どもたちに接種するのが比較的容易なワクチンなのです。 ここで、アフガニスタンの治安状況について述べたいと思います。治安の状況は年々悪くなっています。 2006年は月平均襲撃数が426件だったのに対し、2008年は741件と、3倍になっています。 治安の状況はすべての人に影響を与えています。映画にも出てきますが、文化的な暴力にもつながっています。襲撃で民間人を対象にしたものは約23%だけでしたが、実際には犠牲者の76%が民間人だったことがわかっています。 どの村でもどこでも人々はこのような襲撃を恐れています。人々は、常に恐怖から逃れられないといった暴力の文化の中に住んでいるのです。 このことはまた、時として交渉の必要性があることを意味しています。襲撃をしかけてくる武装グループと話をして、予防接種や保健のサービスが戦争よりも重要なのだということを説得しなければなりません。保健、教育、水、栄養といったごく基本的なニーズがアフガニスタンの主要ニーズなのです。 日本の支援 アフガニスタンにおけるユニセフの予算の約90%は日本からの支援で、日本はユニセフがアフガニスタンの子どもたちへの支援活動をするうえで、非常に寛大なドナーであるといえます。 アフガニスタンにおけるユニセフのプログラムへの
この表は、日本からの支援で私たちがどんなことを行っているかを示しているのですが、保健、教育、ジェンダー、栄養、水の供給、衛生、子どもの保護といった非常に基本的な支援活動に使われています。支援総額は、2006年から2009年までで、4,000万米ドル近くになります。 この場を借りて、アフガニスタンの女性や子どもたちを支援するために、3年間にわたって資金を提供してくれている日本政府、特に外務省に、改めて感謝の意を表したいと思います。
ユニセフの支援活動について、もう少しお話させてください。 暴力から逃げてきた子どもたちは避難民キャンプに住んでいます。ユニセフは安全な水を供給し、子どもたちが水を飲んだり、食事をとったり、体を洗ったりすることができるように支援をしています。 この写真は、映画にも出てくるバーミヤンの写真です。子どもたちは衛生的なトイレの設備を必要としています。日本では衛生的なトイレがあるというのは当たり前のことですが、アフガニスタンの多くの地域では基本的なトイレの設備もないのです。 教育の重要性
教育は、ユニセフがアフガニスタンで行っているプログラムの中でも、最も重要で長期的な効果をもたらすもののひとつです。これも日本政府からの支援を受けています。
ユニセフは男の子や女の子にさまざまなトレーニングを行っており、電子技師養成のコースや大工仕事に関するトレーニングもあります。仕事が見つかれば、家族を助けることができるようになるのです。 アフガニスタンは、世界でも妊産婦死亡率が最も高い国のひとつです。妊婦の4人にひとりが出産時に命を落としています。 予防接種を受けることは、生まれてくる子どもが新生児破傷風になるのを防ぐのに重要です。 アフガニスタンでは栄養不良が非常に深刻で、新生児死亡率が高いことも大きな問題になっています。子どもたちを取り巻く問題は、出生のときから始まります。 この写真はストリートチルドレンです。カブールだけでも、約37,000人のストリートチルドレンがいます。親を亡くした子どもたち、家があまりにも貧しいためにストリートチルドレンになる子どもたちもいます。こうした子どもたちを支援するセンターがあります。 アフガニスタンの子どもたちは、とても悲しい顔をしていることもありますが、ゲームに興じたり、楽しそうにしていることもあります。アフガニスタンの子どもたちも、ほかのすべてのこどもたちと同じ権利を持っているのです。
最後にもう一度強調したいのは、水、衛生、教育といった非常に簡単なことで子どもたちの命を救うことができるということです。 次に、ハナ・マフマルバフ監督が壇上に上がり、この映画やアフガニスタンに対する思いについて次のように語りました。 『子供の情景』監督・ハナ・マフマルバフ氏挨拶 「みなさん、こんにちは。 爆弾の代わりに本を…
これからみなさまがご覧になる映画の中でも説明しているのですが、アフガニスタンを救うためと言ってアフガニスタンに侵攻して、アフガニスタンを壊してしまった人たちがたくさんいます。 アフガニスタンを救うために侵攻してきた人たちは、破壊をした後、再建をしないでアフガニスタンから出ていってしまいました。要するに、アフガニスタンを忘れてしまったのです。そして、世界はまたアフガニスタンのことを忘れてしまっています。みんなの注目は別の破壊される土地に向かってしまいました。 私は今20歳ですが、11歳の時からアフガニスタンに何度も行って、住んだこともあるので、アフガニスタンのことをよく知っています。父はアフガニスタンの中でたくさん学校を作り、アフガニスタンの教育のため、様々な活躍をしました。私も父とともにいろいろな町を回り、自分の目で見て、子どもたちの教育について考えたことがたくさんあります。 ユニセフの存在
アフガニスタンの様々な地域で学校を見て回ったとき、またイランの中にあるアフガン学校を見て回ったとき、ユニセフの存在を強く感じました。今、この場を借りて、心からユニセフに感謝したいです。アフガニスタンの子どもたちを忘れなかったのはユニセフだけでした。 |